外吮山頂上決戦 中盤 その四
一九一九年七月 長野県重井沢 外吮山頂上
◇
〈
瑠璃家宮は天芭 大尉に向け牽制射撃をこなす
瀕死ではあるものの彼女に息は有る。
中将に斬られる直前、危機を察した〈
粘液のヌメりで中将の刃が僅かに鈍り、九死に一生を得たのだ。
瑠璃家宮は直ぐに水中へと〈
先ずは胸郭に開いた傷を
幸い目立った傷はこれだけなので、ここと内蔵さえ修復できれば直ぐにでも戦闘は可能である。
⦅しかし、今のままでは外法衆に歯が立たぬ……⦆
そう判断した瑠璃家宮は
〈
瑠璃家宮からスプリングフィールドM1903を借り受け、断続的に射撃する蔵主 社長。
隣りの戦場では〈
手の空いた〈
天芭は
のらりくらりし過ぎているようにも思えるが、これは蔵主の弾切れを狙っているのだ。
弾丸を撃ち尽くし
それを待っていた天芭は蔵主に急接近。
⦅たわいない。
〈
天芭が全ての
蔵主なりの
「文字通り、八つ裂きにして差し上げますよ!」
天芭が
すると、その口腔から
「これは、〈
『ブッ、ボババァァーーーーーーーーーーーーーーッッ』
蔵主の口腔から迫り出した筒は、舌を変化させた
その
蔵主の真正面にいた天芭は
⦅くそっ、水刃だけでなく水銃も再現できるとは……。
それにだいぶ距離を離されてしまったな。
早く接近しないと、瑠璃家宮が何をして来るか判らん!⦆
その場から急上昇して何とか蔵主に接近し直そうとする天芭。
だが、蔵主は水銃から水弾を連射しそれを許さない。
⦅今度は水流ではなく水弾か。
粗方水の節約の為だろうが、弾幕を張るにはもってこいの方法。
中々どうして、奴らも考える。
ん?
水の節約……水の節約だと!⦆
天芭が何かに気付いた時、瑠璃家宮の戦略は完成間近だった。
上空の
瑠璃家宮の
瑠璃家宮はその水を自身の周囲に移動させ、元々あった水に加える。
彼はそれを蔵主に分け与え、傷の治療と水銃の弾薬補充を同時にこなした。
蔵主は豊富な水源を活用し水弾を連射。
天芭が接近する暇を与えない。
天芭は水弾幕から逃げ回りつつ戦場全体を
⦅武悪の方はまだ粘っているな。
まあ、あの雑仏が完成すれば形勢は一気に逆転可能。
中将は……
〈
いや、二本取られたな。
部下の不始末は隊長の責任でもある。
尻拭いするしかあるまい……⦆
中将の不利を悟った天芭は、多野に掛けていた誘導法を解除。
装填しておいた
そして状況打開の策を練る。
⦅それにしても、瑠璃家宮 達にまた
蔵主は調子に乗って水弾を連射。
治療中の〈
多野は味方の障壁維持と石化解除を続けている。
暫くは電撃や石化攻撃はないだろう。
問題は瑠璃家宮だ。
〈
この状況を覆す一手は……在る!⦆
天芭が三密加持に入った。
左手で軍服の腹前を掴み、右手は手の平を前に向け下げる形の
『――オン・アラタンナウ・サンバンバ・タラク――』と
いわゆる
意のままに願いを叶えるとされる如意宝珠。
果たしてその能力はいかなるものか。
天芭は四つの宝珠を瑠璃家宮へと送り込み、再び日天・焦光法を繰り出す。
するとそれぞれの宝珠から電磁波が放射され、瑠璃家宮 周辺の水が熱せられた。
使用者の術を遠隔展開するのが、宝生如来・宝珠法の権能である。
天芭は四つの宝珠を生成しているので、自身を含め最大五箇所の術式展開が可能となった。
⦅このまま水を被り続けていると、頭部が
そう判断した瑠璃家宮は、水の
〈
「天芭の奴ぅ、近付けないもんだから自分の代わりに宝珠を寄越すとはぁ!」
宝珠の正体に気付いた蔵主は、狙いを天芭から宝珠へと変更。
宝珠に向け水弾を連射する。
だが宝珠は水弾をヒラリヒラリと躱し、遂には多野の後ろへと回り込んだ。
他の宝珠を狙ってはみるものの、どれか一つを追い払えば他の宝珠が近付き
「こ、これは如意宝珠か⁉
それも四つ。
殿下、早く水から御離れ下さい!」
多野が
額に汗を滲ませ、〈
水が湯気を放ち始めた。
沸騰まで間が無い。
『……終わった。
頼子、目覚めよ』
瑠璃家宮の呼び掛けに応えるべく、〈
◆
外吮山頂上決戦 中盤 その四 了
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