外吮山頂上決戦 中盤 その五
一九一九年七月 長野県重井沢 外吮山頂上
◆
「いやーーーーーーーーっ!」
血と粘液の池に倒れた〈
頼子は綾の教育係でもある。
これまで何かと世話を焼いてくれた彼女の惨状に、〈
だが、いつまでも落ち込んでばかりはいられない。
今〈
望みを託す為にも、倒れた〈
中将もそれを察し距離を取る。
〈
⦅蔵主 社長まで負傷するなんて、向こうも大変みたいね。
あたしがここでアイツを足止めしなくちゃ!⦆
中将は外吮山頂上を囲んでいる
掌を仰向けにして小指側のみを触れ合わせる
『――ナウマクサンマンダ・ボダナン・ハラチビエイ・ソワカ――』と
中将が別の戦場に移動するのかと思い、阻止しようと攻撃音波で退路を制限する〈
しかし中将は別の戦場ではなく、彼女目掛け猛烈な速度で駆けて来る。
中将の行動に多少面食らったが、攻撃音波で迎撃を試みる〈
それを避けた中将は彼女のほぼ真下まで接近。
再び都五鈷杵剣を構えての跳躍。
一剣での斬り上げ攻撃。
美しささえ漂う中将の対空斬撃だったが、身体を
彼女は安全な位置まで退くと、跳躍して隙だらけの中将に攻撃音波を放つ。
攻撃音波は中将を捉え……切れなかった。
「うそ⁈
空中でもう一回跳んだの⁉」
中将は宙空を蹴り、その反動で更に上方へと跳躍。
高度で〈
今度は彼女を狙い水平に跳び出した。
空中に足場を造る秘術が、この地天・造床法である。
造床法は障壁術を発展させたもので、防御壁としてではなく足場としての機能に特化させたものだ。
中将がこの時生成した造床は、着地時の衝撃を吸収して溜め込む性質を持つ。
そして直後の跳躍時に反発力として開放する、まさに
然も敵側に利用されないよう、着地から跳躍に移った時点で造床は消失させている。
突進してくる中将の剣を間一髪の所で躱すも、〈
中将は造床を空中に複数設置。
それらを跳び移り乍ら移動と攻撃を繰り返す。
〈
⦅あーもう、うざったいなー。
動きが速すぎて見切れないじゃん。
これが中将って奴の得意戦法か。
だけど、得意になっていられるのも……今のうちだよ!⦆
中将は〈
遂に〈
待ちに待ったその瞬間を狙い、中将は彼女の頭上から斬り付けた。
「ラ~~~~~♪」「ラ~~~~~♪」「ラ~~~~~♪」
「ラ~~~~~♪」「ラ~~~~~♪」「ラ~~~~~♪」
「ラ~~~~~♪」「ラ~~~~~♪」「ラ~~~~~♪」
突如として〈
〈
それは音波を遠方に届かせる為の技術でもあり、味方を傷付けない為の方法でもある。
今度はそれを逆転させ、有効射程は短いが自身の全周囲に音波を放射したのだ。
「ぐっ⁈」
〈
攻撃が効いたのか、落下地点で
別の戦場では、突如として眩い電光が
それを観て戦況の変化を感じ取る〈
⦅多野センセーが石化術式を使ったみたいね。
天芭を石化できるといいんだけど……⦆
他戦場の戦況が動く中、中将も体勢を立て直し再度〈
先程と同様の戦法で彼女を翻弄する。
対する〈
⦅ウフフ。
この戦法は上手くはまったわね。
肉弾戦型のアイツには崩せないでしょ。
でも、勝つ見込みがないのに何で攻めて来るんだろ。
あっ、もしかして時間稼ぎ?⦆
〈
⦅あー天芭の石化に失敗してんじゃん。
しかも多野センセーの背後から
あっ⁈
ふ~っ、益男さんとお兄様が助けてくれたみたい。
でも、ハラハラしすぎちゃってお腹の赤ちゃんに悪いわ……。
宮森さん達も、一つ目もどき(〈アルスカリ型〉)に苦戦してるみたい。
行ってあげたいけど、今は無理ね……⦆
仕方なく中将との戦闘を続ける〈
瑠璃家宮から不意に連絡が入った。
『綾、こちらの戦況が小康状態に入ったので益男を助っ人に寄越す。
余が頼子を回収した後は、宮森 達の所へ行ってやれ』
『分かった、頼子さんの事お願い。
お兄様も油断しないでね♥』
〈
〈
「よくも頼子を!
お前だけは許さん!
シュラシュラシュラシュラシュラシュラーーーーーーーッ!」
〈
中将は双剣で受け止めるも、その姿勢のまま一メートルも押し出された。
地面に残る
⦅うっわー怖い顔……。
普段は落ち着いてる益男さんだけど、怒るとこんなになるんだね。
あっ、宮森さんから連絡きた!⦆
〈
◇
外吮山頂上決戦 中盤 その五 了
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます