外吮山頂上決戦 序盤 その二
一九一九年七月 長野県重井沢 外吮山頂上
◇
戦闘態勢に入った瑠璃家宮は早速神力を解放する。
強大な
それに加え、塩を始めとした
それは最早、海水と呼んで差し支えのない物だった。
瑠璃家宮はその人口海水を外吮山頂上に降らせる。
しかし、重井沢に潜り込んでいる外国の魔術師や霊感の強い者には視えていたらしく、後に霊感の強い地元民が語った所によると、『水龍が外吮山頂上におり立ったと思った……』と評していたと云う。
その人工海水を受けて綾は〈
権田 夫妻と能力を共有している蔵主 社長も半魚人型に変身。
その四肢から
瑠璃家宮 陣営の半数が異形化したが、未だ〈ショゴス〉との融合を果たしていないのか、多野 教授と瑠璃家宮にその兆候は無い。
大量の水が降り注ぎ、『このまま溺れるのではないか……』と心配していた宮森と宗像。
だがその水は多野と瑠璃家宮 周囲に浮遊し、異形化した四人をそれぞれ包み込む。
結果、異形化した四人が吸収した分以外の水は宙に浮いていた。
溺れずに済んでホッとしているふたりを尻目に、〈
〈
その光景を眺めていた外法衆三人も、
中将は左手の親指を他の四指で握り拳の形にして、その握り拳を右手全体で下から包み込んだ。
これは摩利支天印である。
そして『――オン・アニチ・マリシエイ・ソワカ――』と
術の効果で中将の姿が消える。
すると、錫杖を地面に衝き立てた武悪も
両手の指を掌内で交差させる
そして親指と人差し指共に伸ばし、外側に開いた。
これは准胝観音印である。
『――オン・シャレイ・シュレイ・ジュンテイ・ソワカ――』と
顔をニヤ付かせて秘術の権能を匂わせる武悪。
「こっちは三人ぽっちだから少し頭数を足そうと思ってよ。
精々楽しんでくれや」
天芭 大尉も部下に
右手の指を上にして両手の指先を軽く交差させる
次に両中指の指腹を付け、千手観音印を結ぶ。
『――オン・バザラ・タラマ・キリク・ソワカ――』と
秘術成立後、天芭の頭上左右と両膝左右の辺りに、霊力で生成された合計
続けざまに三密加持を執り行なう天芭。
両手の指先を揃え、掌中に膨らみを持たせた
両親指は揃えて伸ばし、両人差し指は第二関節から曲げて指先を水平に付け、両中指は第二関節から僅かに曲げ山なりにした。
これは如意輪観音印である。
『――オン・ハンドマ・シンダマニ・ジンバラ・ウン――』と
この秘術は霊力で
天芭 頭上横の
虚心合掌の形から両人差し指を第二関節から深く曲げ揃えると、両親指の先を付け不空羂索観音印を結ぶ。
同時に天芭 自身の両手が動作。
右手の親指を第一関節で曲げ、残りの四指は揃えて伸ばし、左手は親指と人差し指で輪を作って、残りの三指は拳を握る形状の阿閦如来印を結ぶ。
これ又同時に天芭 両膝横の
右手の親指を上にして両手を組む
続けて『――オン・アボキャ・ビジャヤ・ウン・ハッタ――、――オン・アキシュ・ビヤ・ウン――、――オン・マユラ・キランデイ・ソワカ――』と三連続で
それにより、
『ブーーーーーーーーゥン……』と云う振動音と共に天芭の足が地面から離れ宙に浮き、不可視の
頭部横の
天芭は自身の両手で更に
内縛印の形から両中指を立て合わせてる形。
水天印である。
『――ナウマク・サンマンダ・ボダナン・バルナヤ・ソワカ――』と
天芭は水天・自在法を使い瑠璃家宮が運んで来た水を彼らから引き剥がそうとするが、瑠璃家宮の
⦅ほう、私の水天・自在法に抵抗できるとは流石は瑠璃家宮。
なるほど、自陣営の強化に徹するか。
いつまでその余裕が続くか、見ものだな⦆
水天・自在法による水分掌握に見切りを付けた天芭は、両膝横の
先ほど
内容はこうである。
『隊長、俺の獲物はどいつで?』
『〘
宗像と宮森には後で私が直々に拷問したいので、くれぐれも殺さないように』
『ちっ、物足りねえな。
俺としちゃあ、瑠璃家宮や〈
『勿論、余裕が有ったら瑠璃家宮を守っている多野や蔵主と遊んで貰って構いませんよ』
『へっへっへ、そう来なくっちゃな……』
『と云う事で、中将さんは〈
〈
母体を守ろうとするでしょうから、それにも注意を払って下さいね』
『矢張り、あの美しき獲物達を仕留めるのは私でなくては……』
『言っておきますが中将さん。
〈
なるだけ殺さないようにして下さいよ』
『無論、承知しております』
『私は瑠璃家宮とその取り巻きに仕掛けますが、〈
各自後れを取らぬよう、用心して下さい』
部下達に命令を下した後、天芭は胸中で一考する。
⦅瑠璃家宮は持って来た水で味方の強化か。
然も各種無機物を混ぜて海水に仕立てるなど、あちらの強化度合いも著しい。
何とかしたいのは山々だが、水天・自在法でも動かせないとなると非常に厄介だ。
何か別の攻略法を
外法衆側の作戦要綱と天芭 独自の秘策も決定し、本格的な魔術戦闘が開始された。
◇
外吮山頂上決戦 序盤 その二 了
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