ザ・グール・オブ・ザ・デッド Ⅱ Aルート その二
一九一九年七月 長野県重井沢 外吮山内部
◇
「益男はん、綾 様、蔵主 社長、何とかやっつけられましたな」
「ええ、しかし
どうしましょうか、蔵主 社長」
〈
「このままにしておきましょう。
松明があるのでどのみち敵さんからは丸見えですぅ」
蔵主が言い終わった直後、松明の明かりに変化が生じた。
地表を這い進むウネウネとした影。
その影が地面に置かれた松明を包み込む。
ジュウゥ……と云う音と共に松明の火が消え、一行の視界は闇に包まれた。
突然の事に宗像が声を
「なんや、何が起こっとんねん⁉」
「宗像さぁん、落ち着いて下さいぃ。
暗視はあくまでも光に対する眼球の感度を上げるものですぅ。
光源が無い場所では効果を発揮できませぇん。
益男くぅん、出来れば背嚢から
「わ、分かりました」
〈
懐中電灯は箱型なので直ぐに取り出せた。
懐中電灯を受け取った蔵主が点灯させ、暗闇を僅かだが追い払う。
〈
その様子を見届けた蔵主は懐中電灯の電源を落とし、一行は元の状態へと戻る。
そして、〈
「宗像さん、蔵主 社長、御怪我は有りませんね。
綾 様は……」
「はいは~い。
綾もお怪我はないで~す」
「綾 様後にっ!」
「えっ⁈」
松明の灯りに照らされた綾の背後で
「綾 様!」
「何や⁈」
「綾さまぁ!」
三人は驚き銃を構えるが、綾を誤射してしまう可能性が有るため発砲出来ない。
「この子が障壁を張ってくれたから大丈夫よ。
みんな撃って!」
綾の
綾の安全を確認した三人は、それぞれの銃を構えて発砲した。
「こ、これはぁ⁉」
「な、何やこのバケモン⁈」
「綾 様、御無事ですか!」
綾に覆い被さった幾重もの影は、長大で灰色の
加えてヌラヌラとした光を帯びている。
詰まり多頭龍の
その多頭龍ならぬ多頭芋虫は次々と鎌首を
この状態で凡そ一丈(約三・〇三〇三メートル)程の頭高を有し、それらが【
銃弾は全て多頭芋虫に命中した筈だが、一向に効いている
多頭芋虫は中心の一頭が綾を包み込む形で
「こいつ、アタシを食べようとしてるみたい!
それに、ヌルヌルしたのいっぱい出してる!」
どうやら多頭芋虫が多量の粘液を
丸呑みにされ掛けている綾を救出せんが為、松明を地面に置き
〈
表皮まで後数ミリと云う所で刃が止まってしまう。
多頭芋虫の表皮に近付くごとに、分泌されている粘液の粘りが強くなっているのだ。
〈
その隙を見逃さない多頭芋虫の一頭が〈
左手首から展開する
しかし〈
「益男はん、何ちゅう事を!
それに、このままやと綾 様が丸呑みにされてまう……。
くそっ、どないしたらええねん!」
「あぁ!
アレですよ宗像さぁん。
益男 君が離れたらアレを使いましょうぅ」
「⁈
ああ、コレやな。
今まで忘れとったで。
蔵主 社長、懐中電灯で手元照らして下さらんか」
蔵主は懐中電灯を点灯させ、宗像は背負っていた冷凍
蔵主が宗像の手元を照らし準備完了。
後は〈
左手首を失った〈
『綾 様聞こえとりますか~。
これから冷凍
後、酸欠にならんよう気流制御もよろしく』
『わかったよ、宗像さーん。
この子にも言っとくー』
攻撃体勢の整った一行は多頭芋虫へと近付き、蔵主が懐中電灯で標的を照らした。
したらば、多頭芋虫が突然の暴走。
なんと、共有していた尾部が
多頭芋虫は五頭に分裂、綾を丸呑みにしている一頭を残してその場から素早く這い去った。
「何やあいつら、分離しよったで。
けど仕方ない、一頭だけでもやったるわ!」
宗像が分離した多頭芋虫の一頭に
冷凍
「キュガアアアアアアアアアアァァッ⁈」
〈イブン・ガジの粉〉が霊媒物質となり、液化窒素の効果を高める。
巨大芋虫は余りの冷気に身を
宗像が噴射を停止すると、今度は〈
〈
その際、凍結した巨大芋虫に右
「フン!」
〈
内部からは、丸呑みにされ掛けていた綾が顔を出す。
「あ~、丸呑みにされるなんてなかなか体験できないから面白かった~。
それにこの巨大芋虫の粘液、日焼け止めにいいかも♪」
「綾 様、益男はんは手まで斬り飛ばしたんやで。
そりゃないわ~」
未だ
当の〈
綾が
「蔵主 社長、懐中電灯で辺りを照らし続けて下さい。
あの芋虫達は、強い光や人工光を苦手としている可能性が有ります」
「なるほどぉ、だから懐中電灯で照らされた際分離したのかも知れませんねぇ」
「はい。
冷凍
ここで宗像も会話に加わって来た。
「得意の
益男はん、どうする?」
「こんな時に宮森さんがいてくれたら、とは思いますがね。
泣き言を言っても始まりません。
あの巨大芋虫の粘液層は、私の腕刀を止めるほど粘りが強い。
腕刀では相性が悪いので槍を使います」
「槍やて?
そんなもんどこに……。
あっ!
さっき襲って来た〈ヴーアミ族〉の持ってたヤツか」
蔵主が懐中電灯で辺りを警戒し乍ら、一行は〈ヴーアミ族〉の遺品である槍を拾い集める。
四本集まった所で、〈
「蔵主 社長、散弾銃用の散弾を二つ下さい」
「はいはいぃ、そういう事ですねぇ」
蔵主から散弾を手渡された〈
そして自身のコルトM1911からも弾丸を二個排出し、同様に加工する。
「爆裂弾と細胞融解弾、どちらが効果的なのか判明していないので両方作ってみました。
槍で突き刺した際に霊力で発火させると、弾薬の効果が出る仕組みです。
私が二本持ちますので、あと二本は蔵主 社長と綾 様でそれぞれ御持ち下さい」
「なんや、ワイにはないんか」
「宗像さんは冷凍
では皆さん、地面に置かれている松明を囲んで下さい。
今の状態から懐中電灯の灯りを消しますと、巨大芋虫が襲って来る可能性が高いです。
では蔵主 社長、
◇
ザ・グール・オブ・ザ・デッド Ⅱ Aルート その二 了
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます