第四節 ザ・グール・オブ・ザ・デッド Ⅱ Aルート
ザ・グール・オブ・ザ・デッド Ⅱ Aルート その一
一九一九年七月 長野県重井沢 外吮山中腹
◇
比星 家墓地跡に開いた亀裂に飛び込んだ四人(うち一名は飲み込まれた)。
一行は早速探検の準備に掛かる。
蔵主 社長には
ふたりの様子を観ていた綾が質問した。
「ねえ益男さん、何で懐中電灯使わないの?」
「ああ、それはですね。
「ふーん。
じゃ、これアタシが持つねー♪」
探検が待ち遠しいのだろう、麦藁帽を
益男から松明を譲り受け、蔵主が洞窟の入口に先行する。
蔵主は霊力を用いて、洞窟内の空気を
「今の所ぉ、有毒性
大丈夫のようですぅ」
遂に一行が洞窟内に分け入ると、今が夏だとは思えない程のひんやりとした空気が
これには宗像も
「ああ~、涼しいの~。
山登りで汗だくやったから丁度ええわ~」
意外と快適な洞窟内部に、一行の足も軽い。
運動靴の御蔭なのか、妊婦の綾でさえスタスタと歩みを進めている。
その余りに順調な滑り出しに疑念を抱く者が居た。
「やっぱりおかしいですねぇ。
普通ぅ、洞窟内はもっと石がゴロゴロしていて歩きにくい筈ですぅ。
なのにこれほど足元が整備されているなんてぇ、おかしいですねぇ……」
その答えは直ぐに出た。
入口から暫く進むと、今迄ゴツゴツしていた洞窟の壁面がいきなり平らになったのである。
正確を期すと、壁面は完全な平面ではなく、縦線や横線が一定間隔で刻まれていた。
その事を確認した綾と宗像が驚声を上げる。
「わっ、壁がゴツゴツしなくなった」
「なんやこれ、壁に
ここに蔵主と益男も加わる。
「これは明らかに人工的なものですねぇ。
恐らくは石材を切り出した跡だと思いますぅ」
「でも蔵主 社長、比星 家の屋敷を解体した時にはここは見付からなかったんですよね」
「はいぃ。
報告は受けておりませぇん。
後催眠暗示か比星 一族の固有術式かぁ、播衛門 殿に一杯食わされましたねぇ」
「その時は見付けられたくなかったと云う事でしょうが、何故いまになって我々を招き入れたのか……」
「さてぇ、何らかの準備が出来たのかどうなのかぁ、今の所ハッキリしませんねぇ」
何はともあれ、外吮山内部に極秘の
一行が奥に分け入ると段々と壁面が遠くなり、終いには空間を照らし切れなくなってしまう。
「もう
綾がぼやくのも無理はない。
この空間は洞窟とは思えない程に広大だ。
「致し方ないですねぇ。
わたくしの固有術式で暗視を共有しますぅ」
蔵主が精神を集中したかと思うと、一行の眼球には
眼球の捉える光が強烈なものだから、宗像がつい叫んでしまう。
「っかあ~、急に
ワイの眼ぇはどないなってしもたんか?」
「これは失礼ぃ、いま感度を調整しますのでぇ……」
蔵主が術式調整を施すと、一行は洞窟の空間を昼間のように見渡せた。
蔵主が感覚拡張術式である
「これで充分に周囲を認識できると思いますよぉ。
では皆さぁん、張り切って参りましょうぅ」
視覚が拡張された御蔭で、
御次は嗅覚が拡張されたのかと思える程の強烈な悪臭が漂って来た。
益男が素早く両
「皆さん銃を構えて下さい!」
〈
その警戒は無駄にならなかった。
空間の奥から何かが飛来する。
〈
「槍です!
槍が飛んで来ました!
私が出来る限り防ぎますが、万が一の為に思考と感覚の高速化を行って下さい!」
〈
「思考と感覚の高速化……あれか。
ワイ、覚えたてで慣れてへんから、なんか頭がグラグラするねん」
青森から帰った後、思考と感覚を
使用後の後遺症を気にしているが、今はそんな事を言っている場合ではない。
槍が次々と一行に投げ付けられる。
その多くは〈
奥から
その内の一種は、酷く前屈みの姿勢で
そして犬に似た顔。
〈
もう一種は、毛むくじゃらの
〈
顔は〈
帝居襲撃の際に宮森と益男が遭遇したと云う、〈ヴーアミ族〉だ。
いま一行目掛け跳び寄って来ているのは、どうやら〈
数は今の所〈
一体一体はそこまで大した戦闘力を持つ存在ではないが、数が多い上に探検組の顔ぶれには身重の綾がいる。
宗像と蔵主も
一行はこの場面をどう切り抜けるのか。
「皆さぁん、一旦私の後ろに下がって下さいぃ」
蔵主が地面に松明を置きウィンチェスターM1912を構える。
皆が蔵主の言葉の意味を
対象群とは二〇メートル以上離れているが、見事〈
散弾に配合されている〈イブン・ガジの粉〉と蔵主の霊力が反応、敵の肉体を
攻撃を受けた〈
蔵主もこれ以上散弾銃での射撃は無理だと判断したのか、サベージM1907に持ち替える。
一行は綾を中心に、正面を〈
早速左側から
宗像はコルトM1911を発砲するも、銃撃に慣れていなかったのか反動を受け流せずに照準がぶれ、当然銃弾は外れた。
体勢を崩した宗像の目前に〈
その何かは〈
「あっぶな⁈
綾 様~、もうチョット弾道が左にずれとったら、ワイ死んでましたで~」
宗像が外す事を見越していたのか、綾が宗像の背後から射撃したのだ。
「宗像さんゴメ~ン♪」
命を救って貰った手前、綾の
気持ちを切り替えて次の獲物を狙う。
正面の〈
彼は自慢の
右側の蔵主には、〈
蔵主は〈
二体は綾を目指すと思いきや、〈
今度は宗像も、〈ヴーアミ族〉の繰り出す鉤爪を躱し銃弾を叩き込む。
〈
だが〈ヴーアミ族〉は倒れ際に槍を投げ放ち、綾の持っていた
「きゃっ⁈」
「綾 様、
少し離れて下さい」
〈
〈
◇
ザ・グール・オブ・ザ・デッド Ⅱ Aルート その一 了
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます