ザ・グール・オブ・ザ・デッド Ⅱ Bルート その八
一九一九年七月 長野県重井沢 外吮山八合目
◇
〈
「
それほど余の血を欲するのならば、もっとくれてやろうぞ……」
〈
修復し終わった中央偽茎に張り付く〈ヴーアミ族〉の顔八つと、後に生成した六本の偽茎に備わった顔も笑い出す。
肉穂花序からは花粉も飛散し始めた。
その上、新しい地下茎までも地上に這い出して来る。
繁栄の絶頂を極め、一行を圧倒する〈
打つ手なしの
中央偽茎と周辺偽茎全てである。
「ゲルゲルゥ」
「ブゲルッ」
「ゲェェェ……」
爆発後も、〈ヴーアミ族〉の顔を再生しようとする〈
だが眼球が増えたり減ったり、
蔓触手や地下茎も混乱をきたし、それらの操作も滅茶苦茶になる。
その被害を最も
今迄は〈
〈
〈トロル〉が蔓触手を利用しようにも、〈
〈トロル〉は仕方なく蔓触手に頼らずに立ち回るが、徐々に追い詰められて行った。
宮森がウィンチェスターM1912を発砲して〈トロル〉の移動範囲を制限。
多野も発砲して瑠璃家宮から遠ざける。
宮森の放つ二回目の散弾を真上に跳躍して躱そうとした〈トロル〉だったが、動きを読んでいた〈
左腕に弾丸を食らわせた。
「ギャワワワァアアアアァン⁉」
細胞融解素が作用して千切れる〈トロル〉の左腕。
落下の衝撃と融解した左腕の痛みで、戦闘中初めての苦痛に悶え苦しむ〈トロル〉。
苦しんでいるのは〈
蔓触手は勿論の事、地下茎、偽茎、偽茎に張り付いた〈ヴーアミ族〉の顔、肉穂花序、そして細胞そのものからも止めどなく白泡が流れ出て来る。
偽茎と蔓触手は茶色、地下茎は黒色に変色し、御立派だった肉穂花序も弾力を失ってフニャフニャ。
〈
瑠璃家宮の左上腕に食い込んでいる蔓触手だ。
実はこの蔓触手、瑠璃家宮から逃れようと必死なのである。
⦅瑠璃家宮は
そして自身の霊力で栄養分を生成。
血液を
その後は〈地獄の植物〉に気付かれないよう、徐々に栄養分を増加させて行く。
しかし瑠璃家宮が送り込み続ける栄養分は膨大。
遂にはそれを制御、消費し切れず、体組織の奇形化と崩壊を招いたのか……⦆
ここで宮森の見解を補足しよう。
瑠璃家宮が〈
それは、植物ホルモンの一種である〖オーキシン〗なのだ。
この物質には植物の細胞分裂や伸長を促す作用が有り、
このオーキシンを植物に過剰摂取させると、植物の生理作用や成長に混乱をきたし、奇形や枯死を誘発するのだ。
このオーキシンを人工的に合成した物が、除草剤や
今や多くの体組織が奇形化し、
濃厚な腐乱臭と青臭さが
瑠璃家宮の左腕に絡んでいた蔓触手が、力なく
それを確認した瑠璃家宮は、片膝をつき右手で地面に触れ霊力を注入する。
ここで、〈
形勢逆転を悟った〈トロル〉は撤退を決意。
中空に伸びた蔓まで跳躍する。
〈トロル〉は片腕を失っていたが両足で器用に蔓を掴み、それを伝って一目散に逃げ出した。
逃げ切れなかった。
〈トロル〉が両足で掴んだ蔓が急成長。
〈トロル〉の両足に巻き付く。
〈トロル〉は残った腕の鉤爪を伸ばして両足に巻き付く蔓を切断しようとするが、四方八方から
遂には、〈トロル〉の三肢を完全に捕縛してしまった。
「ギャキャオッ⁉」
『何でオレをふん
宙吊りにされ
「〈トロル〉よ、その蔓は其方の相棒ではないぞ。
其方の相棒がこれ見よがしに枯らした自生植物を、余の力で復活させたのだ。
其方との意志疎通は出来ぬし、元より余が自在に操れる。
では、観念するが良い……」
スプリングフィールドM1903を構える瑠璃家宮。
左腕は負傷している筈だが、そんな様子は微塵も感じさせない。
『バスーーーーン!』
〈トロル〉の頭部に、
撃ち抜いた後、瑠璃家宮は落ち着いて
続けざまに腹部にも撃ち込む。
〈トロル〉は着弾した
瑠璃家宮が、今は亡き両存在に言い含める。
「
ああそれから、余は最近園芸に
肥料のやり過ぎは宜しくないと判り大変有意義であった。
感謝する……」
◇
ザ・グール・オブ・ザ・デッド Ⅱ Bルート その八 了
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