ザ・グール・オブ・ザ・デッド Ⅱ Bルート その五
一九一九年七月 長野県重井沢 外吮山八合目
◇
宮森の策を皆が一考し、〈
『私は良いと思いますわ。
決定は多野 教授と殿下に委ねますが』
『幾分力業的な策だと云う事は否めんが、決まれば一手で戦況を
私は宮森 君の案に賛成票を投じますが、殿下はどうされますかな?』
『今はあれこれ考えている暇は無い。
その策で行こう』
『頼子さん、多野 教授、殿下、有り難う御座います。
ではっ!』
〈
そして宮森、〈
宮森の脳内では、ここぞとばかりに明日二郎が
『
『
『必殺技名ぐらい言わせろーーーーーーーーーーっ!』
必殺技名を口止めされた明日二郎がブーブー
駆け出した三人は早速〈
飛び出した地下茎触手が三人の左側面を狙うが、〈
続く蔓触手の一撃も、彼女が右手に携えたコルトM1911の一弾で
三人は首尾良く〈
散弾銃の弾痕にまで辿り着いた。
透かさずウィンチェスターM1912で
修復し切れていなかった弾痕が更に広がる。
その出来立てホヤホヤの弾痕に〈
続く宮森も弾切れになったウィンチェスターM1912を
遂に一行の電撃戦法に気付いた〈トロル〉。
地上の三人へと急降下蹴りを見舞おうと構えたが、コルトM1911で邪魔に入る瑠璃家宮。
〈トロル〉は〈
その後も一度三人にちょっかいを出したが、瑠璃家宮から
苛ついた〈トロル〉は一旦地上に降りて石を補給し、瑠璃家宮に投石を仕掛ける。
だが冷静さを欠いた〈トロル〉の投石は外れ、銃弾を消費させる事すら出来なかった。
瑠璃家宮が〈トロル〉の行動を抑えているうちに、作戦が完成へと近付く。
偽茎内は摂氏〇度以下まで冷やされ、〈
宮森の気流操作で絶えず偽茎内の空気が抜かれている為、周囲の水蒸気が
維管束の凍結が進んでいる事に
地下茎触手で三人を
多野が得意気に講釈を垂れる。
「ふん、忌々しい地下茎め。
良く観ると
どうやら、維管束内の水分が凍り防圧運動が
元気が抜けとるぞ。
はーっはっはっはっは……」
宮森と〈
偽茎上部にある〈
そして遂に凍結が完了すると思われたその時、一行にとって……いや、〈
『ゴアアアアアアアアアアァァァァァァァーーーーーーッン!』
外吮山全体が鳴動したかと思うと、戦場は巨大な揺れに襲われる。
多野と宮森は余りの揺れに立っていられず、
それと同時に、花粉除けの為に装着していた水の
一方の〈トロル〉も下手に動けず、〈
危険を察知した瑠璃家宮は、地面に伏せて成り行きを静観する。
辛うじて転倒を免れた〈
不本意乍ら、維管束凍結作戦は中断を余儀なくされてしまう。
敵味方問わず揺れの対応に追われる中で、この状況を有利に働かせる存在があった。
そう、〈
大地に深く根を下ろし地下茎をも這わせる〈
地上からは視えないが、土中に張り巡らされた〈
水分と栄養分を吸い取られた周辺植物は、見るも無残に
今度はその水分と栄養分を、次々に地下茎へと送り込む〈
その結果地下茎は急成長を遂げ、遂に地上へと六つの新芽を出すに至った。
丁度一行を囲む位置に出芽した〈
それを確認した宮森は、作戦の失敗を悟って
⦅くそっ!
もう少しだったのに揺れの所為で集中が途切れてしまった。
こちらが
先程の鳴動で宮森の慌てぶりを察したのか、多野が落ち着き払った言葉を掛けた。
「宮森 君見給え、周囲の植物はもう全て枯れ果てている。
これ以上成長できるとは思えん。
直ぐに次の作戦を立案するのだ」
だが、
見る見るうちに小振りな蕾まで結んでしまう。
然も、蕾の傍から二本の蔓触手まで伸びて来た。
絶妙な
意地でも〈
周囲の植物が枯れているにも拘らず成長を遂げる〈
「何故だ、何故こうも成長できるのだ!
周囲に余分な栄養分など無い筈」
追い詰められた多野が泣き言を
〈
『ミヤモリよ。
確かに周囲の植物は枯死してるけんども……土壌、特に地表付近は栄養分が豊富だ』
『何だってー!
済まない、少し取り乱してしまった。
で、その理由は何なんだ明日二郎』
『憶えてねーか?
花粉だよ。
〈トロル〉が〈地獄の植物〉からもぎ取って投げてた花粉飛礫だ。
あの花粉飛礫の成分な。
毒でも何でもない、只の栄養分だぞ』
『なんて事だ。
毒だと警戒していた花粉が……只の栄養分。
然も栄養分が必要になる事態を見越し、それを〈トロル〉に投げさせていたとはね。
水の兜(ヘルメット)も無駄だったし。
植物に知恵比べで負けたのか、自分らは……』
ここで、〈
この
又、利用するのは蜜蜂だけではなく、人類も栄養食として古くから常食して来た。
〈
〈トロル〉と共謀して地面に投げさせ、〈
◇
ザ・グール・オブ・ザ・デッド Ⅱ Bルート その五 了
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