ザ・グール・オブ・ザ・デッド Cシーン その三
一九一九年七月 帝居 表宮殿
◇
「益男さん、離れて下さい!」
宮森からの警告を受け取り大幅に身を引く〈
宮森が構えているウィンチェスターM1912は、銃身と銃床を切り詰めているソードオフ
発砲直後に弾丸がバラけ始めるので近距離での攻撃範囲は絶大だが、そのぶん射程が短くなってしまう欠点も。
この〈
〈
『ダン!』
〈
宮森の操作は
宮森の三連射で、ほぼ全ての散弾が〈
〈
御約束の如く、〈
どうやら、強力な攻撃が命中する度に床面の破壊が起きているらしい。
魔術師謹製爆裂弾をものともせずに突き進む〈
その姿は、矢の雨の中でも止まる事を知らない【
〈
〈
鎧の重量により本来の敏捷さが削がれているとはいえ、体力的に劣っている宮森は逃げ回る事で精一杯。
〈
⦅このまま逃げ回っていたらこちらの体力が持たない。
霊力を最大限に込めた爆裂弾で一発逆転を狙ってみるか。
……いや、駄目だ。
たとえ奴を倒せたとしても、あと何体の〈食屍鬼〉が残っているか判らない。
先が見通せない今、霊力を使い果たす訳にはいかないからな。
明日二郎の霊力を拝借する手も有るが、未だに黒幕の正体が判明してないし、奥宮殿には多野 教授や瑠璃家宮が居る。
それに、明日二郎が霊力を開放したら各魔術結社が調達した邪念の総量が減ってしまうから、その事で今日一郎が疑われるのは明白だ。
色々試してみたいけど、明日二郎の手を借りるのは最小限にするしかない……⦆
思案し始めた宮森は、明日二郎に
『明日二郎、お前は〈鎧食屍鬼〉の限度指定障壁と本体を調べてくれ。
何か判ったら連絡を』
『ロジャー!』
明日二郎の次は〈
『益男さん、近くの〈深き者共〉と精神感応して指示を出せますか?』
『いま帝居に居る者達でしたら、全ての〈深き者共〉と感応できます。
ただ綾 様を御守りする分も残しておかなければなりませんので、〈深き者共〉全てに指示を出す事は出来ません。
近くに居る者のみでしたら、いま直ぐにでも可能でしょう』
『では、近くの〈深き者共〉に消火の準備を命じて下さい』
『消火ですね。
分かりました』
そこまで伝えた所で、〈
その場で屈み首狙いのバルディッシュを回避した宮森だったが、当ての無い逃避行へと戻るよりない。
⦅思考と感覚の高速化のお蔭で、奴の攻撃は見切る事が出来る。
只、奴の攻撃と奴に張られている障壁が床を壊しまくる所為で、走り回れる範囲が少しづつ
一六〇畳の大広間もいつかは無くなる。
その時までに何とかしないと。
いや、いっその事一六〇畳を壊す勢いでやってみるか……⦆
バルディッシュから逃げ回る宮森に、明日二郎から〈
『あの〈鎧食屍鬼〉な。
中身はふつうのマッチョ〈食屍鬼〉だぞ』
『普通のマッチョ……。
ふつうの、は要らないだろ。
で、他に何が判った?』
『それがメンドくさい事に、ヤツが纏ってるリミテイションバリアは武器や鎧じゃなく、中身の〈食屍鬼〉本体に掛かってる。
つまりなんかの事情でヤツが鎧を脱いだとしても、バリアはそのままっちゅうコトだ』
『なるほど。
では、障壁は奴の体表をピッタリと覆っている訳ではないんだな?』
『そうだ。
武器のバリアはヤツが触れてる時だけ表面に発現するみてーで、鎧のバリアはヤツの体表から平均で五、六センチメートルほど離れた所に展開されてる。
ちょうど鎧の表面を覆う位置だから、こちらが強力な攻撃をするたんびに、床と接してるヤツの足元が壊れちまうんだ。
恐らく〈鎧食屍鬼〉を包むように霊力で覆って、衝撃の強さを自動判定してるんだろう。
だもんで、鎧を破壊できる強力な攻撃はバリアで防ぎ、鎧を破壊できない攻撃はそのまま鎧で受ける、って事が可能になってるんだと思うぞ』
『ありがとう明日二郎。
で、お前にやって貰いたい事はだな……』
明日二郎に指示を出した傍から、〈
〈
『益男さん、近くの〈深き者共〉とは感応できましたか?』
『はい。
五名ほどですが、言われた通り消火用具を準備させています』
『ありがとう御座います。
では、これから〈鎧食屍鬼〉に仕掛けます。
益男さんには……』
〈
いったい何をする積もりなのだろうか。
宮森は霊力を集中させ
〈
『何事か!』と、浮遊する木片を切り払う〈
宮森の行動に
そして、〈
しかしその
〈
その時は随分と、〘
今度は〈
〈
〈
空気中の微量な水分はおろか、木片に含まれる水分さえも領域外へと押しやっているのだ。
そして領域外に押しやられた水分は〈
僅かだが体力回復に当てていた。
〈
小片になろうが
〈
だが浮遊した木片が
〈
しかし、彼の立つ場所はウィンチェスターM1912の有効射程外だ。
撃ったとしても大半の散弾は散らばり、
それにも拘らず彼は霊力を込め、構わず
ウィンチェスターM1912から放たれた散弾は大きく散らばり、僅かな数を除いて〈
命中射線上の散弾も〈
散弾一つ一つを構成する火薬と〈イブン・ガジの粉〉が、宮森の霊力によって小規模の爆発を起こす。
それが切っ掛けとなり、〈
一瞬にして炎に包まれた〈
ここまで
その為、〈
〈
宮森は、〈
⦅床面に破壊は……起きていない。
よし、いける!⦆
〈
盟治憲法
新たな
満を持して詰めに入る――。
◇
ザ・グール・オブ・ザ・デッド Cシーン その三 了
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