第六節 ザ・グール・オブ・ザ・デッド Cシーン
ザ・グール・オブ・ザ・デッド Cシーン その一
一九一九年七月 帝居
◆
「益男さん、この辺にも地下道が?」
「はい。
〘
今そこには調査団が派遣されている模様ですので、一旦合流して情報を共有しましょう。
宮森さんの御意見は?」
「異論ありません。
そこに行けば何か判るかも知れませんし、もし重井沢方面から〈食屍鬼〉が押し寄せて来ている場合、自分達が撃退しなければなりませんからね」
「きゃーっ!
か、怪物がっ⁈」
不意に沸き起こった悲鳴に、顔を見合わせる両
「益男さん、先程の悲鳴は」
「
直ぐに向かいましょう!」
ふたりが林道を引き返し御所へと急ぐその道すがら、二体の〈
明日二郎に助力を
『明日二郎、暗視を頼む!』
『アイアイサー。
これでチャチャッとやっつけろ』
明日二郎が宮森に
夜目が利く〈
『タッ!』『タッ!』
宮森は正確な射撃で脳天を撃ち抜き、〈
その後〈
「ひっ⁉
何よこいつら!
うっ、酷い匂いがっ……」
「やらせはせん。
やらせはせんぞー!」
『パン!』
「おおう、おおぅうお……」
悲鳴と銃声と呻き声が聞こえる。
大盟殿内に居た誰かが応戦しているものと見て間違いない。
呻き声の方は、〈
「誰か来てくれ。
怪物に殺されそうだ!」
「何なのこのバケモノ⁉
あたしを犯そうとして来るっ⁈
くっ、臭いっ……。
いやーーーっ‼」
大盟殿からは、様々な服装の男女が必死の形相で逃げ出していた。
避難者の顔ぶれはと云うと、下働きの者達は勿論、政財界の大物や軍人、
〈
薄物一枚羽織っただけの女性が、運悪く〈
どうやら、九頭竜会の上級会員や御雇い外国人を接待している間に、運悪く〈
「皆さん、化け物は私共が退治します。
ですから、早くこの場から逃げて下さい!
銃を使いますので、私共からもなるべく離れて!」
益男の働き掛けにより、
大盟殿前の〈
大半の〈
宮森は〈
そして益男が
残り四体の〈
宮森は落ち着いて残りの〈
難なく切り抜けたふたりだったが、コルトM1911用の
銃弾を使い果たし不安な心持ちだろう宮森に、ゆっくりと近付いて来る者が居た。
「ううぅ……〈父なるダゴン〉と宮森 様、ですね。
差し入れを持って参りましたので、おおおぉ納め下さい……」
〈
その〈
青色
水筒の中身は、益男の方は邪念水で宮森の方は血入り冷製紅茶だった。
ふたりは中の液体を一気に飲み干す。
水筒が空になったのを見届けた〈
「では、私はこれででででで……」
任務を果たした〈
無理矢理〈
去り行く彼女の後ろ姿を眺める宮森の脳中で、明日二郎が場違いな声を上げる。
『マスオは体力と霊力を回復した♪
ミヤモリは霊力を大幅に回復した♪』
『さっきの女性はもう直ぐ死んでしまうんだぞ。
全く、緊張感の無い奴だな』
『とかなんとか言っちゃって、御霊分けの術法使ってるから良心の
それに、ゲームっぽい雰囲気が出ていいだろ』
『げーむっぽい、とは何だ?』
明日二郎との掛け合いで気分転換できたのか、幾分スッキリとした顔の宮森。
弾薬補充も叶い、ふたりは大盟殿内部へと足を踏み入れる。
大盟殿とは、当時の太帝御所だった江戸城西の丸が一八七三年(
建物の主な構造としては、
当然、奥宮殿には瑠璃家宮が居る筈だ。
ふたりは
そこには、負傷した帝宮警察官が数人集合していた。
益男が彼らに状況説明を求める。
「皆さん、奥宮殿の方は〈食屍鬼〉に襲われていますか?」
「は、はい。
〈食屍鬼〉は奥宮殿の方にも向かったようです。
ただ奥宮殿に向かった
「では、表宮殿と中宮殿はどうなっていますか?」
「はっ、〈食屍鬼〉が十数体侵入しております。
魔術師の方々が対処されている筈ですが……」
「が、何です?」
「実は、侵入して来た〈食屍鬼〉の一体が殊のほか
「状況は解りました。
ここからは私共が受け持ちますので、
益男が帝宮警察官達に指示を与え、宮森と共に表宮殿へと駆け出した。
その最中、ふたりは守衛達からの情報を整理する。
「ハッ、ハッ、益男さん。
奥宮殿の見えない壁とは、ハッ、ハッ、多野 教授の仕業とみて、ハッ、ハッ、間違いないですね」
「ええ、そうだと思います。
問題は、魔術師達が手を焼いていると云う強靭な個体……」
「今度は、ハッ、巨大蜘蛛では、ハッ、ないようですね。
ハッ、猿型の奴、ハッ、でしょうか?」
「それは判りませんが……宮森さん」
「ハッ、ハッ、はい?」
「走り乍ら喋らずに、精神感応で会話すれば良いのでは?」
「ハッ、ハッ、また忘れてた……」
◇
ザ・グール・オブ・ザ・デッド Cシーン その一 了
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