ザ・グール・オブ・ザ・デッド Bシーン その三
一九一九年七月 帝居地下 小祭事場
◇
〈
その存在は
眼球の無い〈
それを受け、綾は覚悟を決めた。
床に突っ伏し、水槽から溢れ出た邪念水を
綾の行動の意味が理解できない〈
声帯と、見た目からは判らないが
彼女は邪念水を啜り、肉体の一部分だけを異形化させたのである。
綾が歌い始めた。
〈
〈
「ラ~~~~~~~~~~~~~~~~~♪」
「ラ~~~~~~~~~~~~~~~~~♪」
「ラ~~~~~~~~~~~~~~~~~♪」
四四〇ヘルツのラの音は、人に苦痛を与える音。
ラの音はAの音。
「A~~~~~~~~~~~~~~~~~♪」
「A~~~~~~~~~~~~~~~~~♪」
「A~~~~~~~~~~~~~~~~~♪」
四四〇ヘルツのラの音は、人を狂乱に導く音。
ラの音は、ドの音から数えて六番目。
「6~~~~~~~~~~~~~~~~~♪」
「6~~~~~~~~~~~~~~~~~♪」
「6~~~~~~~~~~~~~~~~~♪」
四四〇ヘルツのラの音は、人を苛立たせる赤ん坊の泣き声。
綾の三重声帯から放射された振動が交わる。
「ラa六らA6ラa六らA6ラa六らA6♪」
「A6ラa六らA6ラa六らA6ラa六ら♪」
「6らa六ラA6らa六ラA6らa六ラA♪」
邪神の調律を足掛かりにして、禁断の存在を揺り起こす。
目覚めた赤ん坊の泣き声は
綾の三重声帯が
綾は邪念水を吸収、再びその身を異形へと変容させる。
同じく邪念水を吸収した〈
「この子が、やってくれた!」
「きっと、綾 様の身を案じられたのですね……」
〈
完全に力を取り戻したふたりは、邪念水を纏い空中を自在に泳ぎ回る。
まるで邪念水自体に意志が宿ったかの如く、ウネウネとした
ふたりが空中を舞う度、彼女らに追随する
水槽が破壊された今、〈
それを行使しているのは〈
戦闘準備を整えたふたりが〈
〈
ふたりの絶妙な
何とか動きを止めようと三つ叉銛を投げ付けるが、機動範囲の広いふたりの動きを捉えられない。
とうとう意を決したのか、空中遊泳するふたりを包み込む
それを確認した〈
『頼子さん、アイツが網に掛かったよ。
すぐに水から出て。
この子にはアタシから言っておくから』
『承知しました』
〈
満点の着地を決めた〈
通常、
しかし〈
加えてもうひとりが
「ギャアアアアアアアアアアアアアァァァスッ⁈」
勇んで
大音圧で音波を浴びせられ続け完全に脱力した所で、
元より視覚が無く、主に聴覚と嗅覚に頼って標的を捕捉していた〈
その大事な聴覚を破壊されたのだ、もう〈
手負いになってしまった〈
だが〈
再び邪念水の
柄部以外が高速回転。
先端部からも水が噴き出し、
最終的に、
床に
〈
「コイツ、アタシと頼子さんふたりを相手にして勝てると思ってたわけ?
思い上がりもはなはだしいんだけど。
あ、ふたりじゃなくて三人だった……」
「綾 様から『
「あ、頼子さんアタシのこと馬鹿にしてるでしょ!
アタシだって、お兄様のはんりょとして
「そうですね、『伴侶』なんて言葉も出て来ましたから。
それにしてもこの〈水棲食屍鬼〉……。
多分〈食屍鬼〉なのでしょうけど、水中に適応できる姿とは何とも奇怪な話です」
「アタシムズカシイ事わかんなーい。
多野センセーでも知らないのかな?」
「恐らく、多野 教授も御知りではないでしょうね。
ただ、我々に敵対する魔術師か魔術結社の仕業である可能性が
「ふーん。
まあ、どっちでもいいよ。
それより早くお兄様の所に戻りたいな。
この子がやった事も聞かせてあげたいし」
「綾 様、いま戻ると殿下を危険に
夫と宮森さんが戻って来るまでここに待機していましょう」
「え~~~っ!
コイツ倒しちゃったしやる事ないじゃ~ん」
瑠璃家宮の許へ戻りたいと
彼女はある事に気付き、〈
「〈食屍鬼〉の身であり乍らここまで私共を追い詰めるとは称賛に値します。
もし私と綾 様のふたりだけだったなら、勝てたかも知れませんのにね。
では、コレを御返ししますわ」
〈
その行為を見て〈
「頼子さん、ソイツもうとっくに耳つぶれてるんですけど♪」
◆
ザ・グール・オブ・ザ・デッド Bシーン その三 了
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