ザ・グール・オブ・ザ・デッド Aシーン その三
一九一九年七月 帝居地下
◇
剛毛の生えた長い
全体的に藍色がかっており、無数の
「巨大蜘蛛ですね益男さん」
「巨大蜘蛛ですね宮森さん」
宮森はコルトM1911の
「宮森さん来ます!」
宮森は〈
対人有効射程は一〇メートルが
距離を取られているこの状況では効果が発揮できず、蜘蛛糸がどう作用するかも判らない。
宮森は、ウィンチェスターM1912を後の御楽しみとして取って置く事にした。
巨大蜘蛛が距離を詰める瞬間を待ち受けていた宮森。
真上を向いた体勢での二丁拳銃は無理と判断したのか、一丁のみで開けた天井に向け立て続けに発砲した。
対する巨大蜘蛛はふたりに向かって薄紫色の腹を向け、腹部後端の
今度は糸玉状ではなく掛け流しだ。
弾丸自体は届かなかったが細胞融解素の効果は有るらしく、蜘蛛糸足場の一部を融解させて行った。
[註*
クモ類が持つ二
多くは腹部後端にあるが、
『カチッ……』
宮森は
詰まり弾薬が尽きたのだ。
すると、巨大蜘蛛が後ろ歩きで急激に間合いを詰めて来る。
⦅くそっ!
なぜ奴はこっちの弾切れが判るんだ……⦆
対応を迫られた宮森は、左腰の
それに感付いたからなのか、巨大蜘蛛は来た道を素早く引き返した。
巨大蜘蛛は間合いを取ったまま、蜘蛛糸
宮森へと、源泉掛け流し
「シュゥゥラッ!
シュラシュラシュラシュラシュラシュラシュラッ……」
〈
彼は、刃を構成する組織の微細な透き目から超高圧で水を噴出させていた。
周囲に
これは単に
蜘蛛糸の粘りを警戒し、刃部分を直接蜘蛛糸に触れさせないようにする為の措置でもあったのだ。
斬り払われた蜘蛛糸に細かな水滴が付着して
只、
バラバラに飛び散る数珠こそ、彼らの意思表示である。
今もって巨大蜘蛛から噴出され続ける蜘蛛糸。
〈
水分が減少するのに比例し、彼の皮膚は急激に乾燥し始めていた。
「宮森さん、先ずは装填を!」
一旦射撃を諦めた宮森は、〈
蜘蛛糸の噴射が止み、宮森は再度真上方向を見上げる。
だが肝心の巨大蜘蛛が蜘蛛糸
一方で〈
水の噴出量が足りず
宮森は明日二郎に助力を求める。
『くそっ、益男の両腕が封じられてしまった。
この状態で巨大蜘蛛に襲って来られたら防御できない。
だが、奴にとっては絶好の機会となる筈なのに襲って来ないのは何故だ……。
明日二郎、巨大蜘蛛の体内を精査してくれ!』
『ガッテンでい!
おでこのメガネで、デコデコッでこり~ん。
お~中はこうなってんのか、なるほどー。
あんなミヤモリ、あの蜘蛛ちゃんも「
『
だとすると……奴は糸を無尽蔵には噴射できない』
『なあミヤモリ、オイラ思うんだけんども。
あのでっかいクモさんさあ、こっちの弾切れ狙ってんじゃねーの?』
『蜘蛛にそこまでの知能が有るとは
用心深いのはその為かも』
『そうそう。
こっちが弾切れになったら一気に近付き、糸でグルグル巻きにしてから
そんで身動きが取れなくなった所に消化液を注入。
獲物が柔らかくなったら準備オッケー♪
ゆっ~くりたっ~ぷり御食事を楽しんじゃうぜ~、って考えてるかも』
『
……でも待てよ。
さっき弾薬が尽きた時、奴は急に近付いて来た。
それも後ろ歩きで。
蜘蛛の眼がどれぐらい良いのかは知らないが、こちらには複数の銃器が有るし、弾薬も幾つ持っているのか奴には判らない筈。
それなのに奴は近付いて来た。
待とうと思えば幾らでも待てる筈なのに。
用心深いのか不用心なのか。
待てよ……』
『ミヤモリよ、ナンか
『ああ。
明日二郎、もう一度奴の体内を精査してくれ。
今度は頭胸部と神経組織だ』
『おうよ!
あ~はいはい、なるほどなるほど……』
明日二郎の
『明日二郎、次で仕掛ける。
感覚拡張の暗視を頼むぞ』
『まあ、そんだけ暗くすんだったら普通は射撃できないもんね。
ダークビジョン発動っと……』
[註*
口の直前に配置される
しばしば『
宮森は、両腕が自由にならないままの〈
『……と云う作戦で行こうと思うのですが、いいですか益男さん?』
『私の思った通りでしたね。
宮森さんはこれを物欲しそうに見ていらしたから……』
作戦伝達が終了した宮森は、左腰の
巨大蜘蛛も
後ろ歩きでジリジリと近付いて来る。
『タッ!』
宮森は有効射程に入るなり射撃開始。
巨大蜘蛛の方は、生成したばかりの蜘蛛糸を今度は糸玉状にして発射して来た。
宮森は心中で呟く。
⦅今度は糸塊か。
矢張り、自分の予想は的中していたな!⦆
宮森の弾丸は撃った
後続の弾丸も同様で、巨大蜘蛛が発射した糸塊は撃ち落としているものの、本体には届いていない。
弾頭に仕込まれた細胞融解素で、周囲に構築されている蜘蛛糸足場を崩すばかりだ。
外側を蜘蛛糸で覆われた所為で、元より薄暗かった
それにも拘らず、巨大蜘蛛に動じる素振りは見られない……。
宮森には今、感覚拡張術式の一つである〘
その御蔭で、暗闇でも問題なく射撃が可能。
『カチッ……』、『カチッ……』
宮森の構えたコルトM1911から漏れる
弾切れである。
彼は弾切れのコルトM1911を左
宮森の銃撃で、
弾丸に込められた細胞融解素の効果だ。
細胞融解素は蜘蛛糸を媒体にして一定範囲に広がりはするが、巨大蜘蛛までは届かない。
『カチッ……』
細胞融解素はおろか、弾丸も巨大蜘蛛には届かず弾切れとなる。
――――。
宮森が弾切れになった筈なのに巨大蜘蛛は動かない。
宮森は確信する。
⦅良し、これで確定した……⦆
『カチッ……』、『カチッ……』、『カチッ……』、『カチッ……』、『カチッ……』
宮森は何故か
その後は霊力を集中し、
宮森と〈
◇
漸く宮森の弾切れを確信したのか、巨大蜘蛛が
遂に侵入を果たす。
そして今度は糸玉状ではなく、
巨大蜘蛛は反撃されないのを良い事に、構う事なく素麺を浴びせ続ける。
巨大蜘蛛はふたりの周囲を巡り乍ら、幾重にも糸を巻き付けて行った――。
◇
ザ・グール・オブ・ザ・デッド Aシーン その三 了
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