ザ・グール・オブ・ザ・デッド Aシーン その二
一九一九年七月 帝居地下
◇
宮森と益男は初戦を最小限の消耗で突破。
この
起動させる為の鍵も付いていない為、益男が
上昇し始めて直ぐに飛び交う影。
当然の如く宮森は顔を
「そりゃまあ、
益男さん、防御頼みます」
「
〈
だがそんなものはどこ吹く風。
敵一体が勢い良く
襲い来る鉤爪と槍を斬り払う益男。
コルトM1911の
銃弾を食らった敵個体は吹っ飛び、そのまま地面に激突する。
そこで宮森がある事に気付いた。
「〈食屍鬼〉の足はたしか蹄状、でしたよね?
でも先程の個体、顔は犬に似てましたけど、全身に体毛が生えていて樹上で生活する猿のような足も持っていました。
それに、鉤爪だけでなく槍も使っています。
益男さん、どう思いますか?」
「報告を受けていないので判りません。
若しもあれが〈食屍鬼〉であるとするなら、新種の可能性が濃厚ですね。
又、〈食屍鬼〉とは別存在の可能性も大いに有ります」
「新種、又は別存在ですか。
別存在となると、新たに対策を組み立てる暇は……有りませんね!」
ふたりが会話している間に、三体の怪物が
先程と同じ猿型だ。
宮森が発砲しようと構えるが、攻撃の度に
また
敵は正面からだけでなく、上方、左右、床面からも攻撃を仕掛けて来る。
〈
宮森は中々射撃に踏み切れない。
正面、左右、床面を当てずっぽうに射撃する手も有るが、弾薬の無駄な消費を避ける為、宮森は発砲を
⦅くそっ、あちこちから攻撃を仕掛けては直ぐ逃げてしまう。
一撃離脱戦法と云うやつか。
籠の中は
それに自分が反撃を試みても、防御してくれている益男が邪魔になって撃ち込めない。
自分も障壁を展開して益男の負担を軽減したいのは山々だが、複数の術式展開を
いま自分達は籠内に閉じ込められた格好だ。
籠を構成する金属柵を破壊するなりして、益男の
いや、いま昇降機を壊すのは悪手かも知れない。
昇降機が上に到着するまで粘る手も有るが、到着地で待ち伏せされ囲まれるとそれはそれで厄介だな。
猿型達は恐らく、人間並みの知能を持っているらしい。
もし籠を吊っている
身動きが取れなくなる事態だけは何としてでも避けないと……⦆
何とか攻撃の機会を掴みたい宮森は、〈
「益男さん!
誠に申し訳ないのですが、次の猿型からの一撃、鉤爪か槍を掴めますか?」
「完全に私の再生能力を当てにしてますね宮森さん。
まあ、少し手傷を負う事になるでしょうが、やってみましょう!」
〈
猿型の攻撃を察知する為に自身の皮膚感覚を高める。
不意に床面からの槍攻撃。
その一撃は宮森を狙ったものだったが、察知した〈
〈
宮森が満を持して発砲。
身動きの取れない猿型の
猿型は融解する内臓を撒き散らし落ちて
ふたりは二体目と三体目の猿型も同様の戦法で処理。
予想通り〈
「益男さん、傷の方は大丈夫ですか?」
「御心配には及びません。
それよりも、シャツが破れてしまったのが残念です。
せっかく腕刃で斬らないよう注意していたのに……」
落ち込む〈
「自分にも責任の一端が有りますし、一緒に頼子さんに謝りましょうか?」
「その時は是非とも御願いしますね。
宮森さんが一緒だと心強い限りです」
「何だか、凄く頼りにされていそうなんですけど……」
『ファサッ……』
気の抜けた会話を交わしたのも
激突音はしないので、硬い物でない事は確かである。
明日二郎が
『大型の生体反応を検知!
ミヤモリ、ナンか居るから要注意だぞ!』
『ファサッ……』、『ファサッ……』
今度は
〈
彼が切っ先を引き寄せると、白い物体の一部が引き延ばされて来た。
宮森は念の為に明日二郎と相談する。
『明日二郎、これってまさか……』
『そのまさかよ。
スキャンするまでもなく、どう見ても蜘蛛の糸だなこりゃ。
それも尋常じゃないサイズの……』
『ファサッ……』、『ファサッ……』、『ファサッ……』、『ファサッ……』、『ファサッ……』、『ファサッ……』、『ファサッ……』
今の状況を
「益男さん、蜘蛛の糸を出す〈食屍鬼〉って……」
「知りません。
少なくとも、九頭竜会の資料には無い筈です。
ですが、どこぞの魔術結社か魔術師が関わっているのは濃厚となりましたね。
ああ、そんな事を言っている間にも籠が
「まずい……。
このまま上昇して昇降機の
益男さん、天井から脱出を試みましょう!」
宮森は
これで、
既に蜘蛛糸であらかた包まれてしまった
〈
下膊に展開している
再度別の隅からも跳躍して天井板を斬る。
これで
この
それでも〈
「宮森さん注意して下さい。
次からは天井板を斬り離します。
途中で天井板が落ちてしまわないよう、念動術で固定していて下さい」
三回目からの跳躍では、
宮森は安全を確保するべく、
〈
彼らはその作業をもう三度繰り返し、天井板だった金属板は四枚の三角形に形を変え、
〈
「宮森さん、天井板をもっと中央に寄せて下さい。
このままでは邪魔なので、もう一回斬ります」
「解りました。
では、天井板を浮遊させます」
宮森は四枚に重なった天井板を
「シュラッ!」
〈
八枚になった天井板は、綺麗な二等辺三角形に裁断されていた。
裁断された天井板の斬り口を検める宮森。
⦅いつ見てもとんでもない斬れ味だ。
鉄板が紙のように斬り裂かれている。
自分もいつかは、彼らと
斬り取られた天井を臨むふたりの
地上近くへと向かう
それだけを見れば幻想的な光景として通用するのだろうが、そうは問屋が
その問屋は、音も無く蜘蛛糸
ふたりを認めたのか、問屋は蜘蛛糸
一見
遥か上方にまで広がる蜘蛛糸
その所為で、周囲の電灯からの灯りが届いていない。
その様は、今や陽光を
ある~日♪ 森の中♪ 熊さんに♪ どころではない。
ひょっこりと
◇
ザ・グール・オブ・ザ・デッド Aシーン その二 了
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