第四節 ザ・グール・オブ・ザ・デッド Aシーン
ザ・グール・オブ・ザ・デッド Aシーン その一
一九一九年七月 帝居地下
◇
帝居地下を歩くふたりの
うちひとりが両腕を前方に伸ばす。
『シャキッ……』
益男の両手首を軸にして、
宮森も以前見た事の有る彼の得意技だ。
〈
加えて、刃を構成する組織の微細な
最大出力で水を噴き出せば、
「今日はちょうど半袖だったから、シャツの
衣服を大事にしろと頼子が
『腕から刃物が出て来る人なんてそうそういませんよ……』と心中で
緊急事態であるこの場には
「洋服はまだまだ高級品ですし、駄目にしないに越した事はありません。
あ、和服でも駄目ですよね。
とにかく、頼子さんはいい奥さんだと思いますよ、ホント……」
「ふふっ、頼子に伝えておきますね。
では、対〈食屍鬼〉の基本戦法を詰めたいと思います。
私は散弾銃であるウィンチェスターM1912を持っていますが、弾薬の数が
〈食屍鬼〉共の数も判りませんから無駄弾は打てません。
ですので、攻撃は宮森さんに行なって頂きます。
もちろん基本的に、ですけど。
宮森さんが銃撃している間に私が動き回っては邪魔でしょうから、私は宮森さんの護衛に徹します。
宜しいですか?」
「解りました、それで行きましょう。
なるべく益男さんの御手を
「宮森さんは上手いこと仰る。
切れた
〈
「益男さん、〈食屍鬼〉達の居る場所に当ては有るのですか?」
「〈食屍鬼〉共は移動しているようで、正確な位置は判りません。
数も判りませんから、最悪の場合どこに行っても〈食屍鬼〉だらけ……と云う状況も有り得ます。
目撃情報は頼子の方で収集して貰っていますので、我々は
ここからですと、一旦地上に出る経路になります」
「と云う事は、建築資材運搬用の大型昇降機ですね」
第一の目標が決まり、ふたりは
◇
宮森と〈
電灯は点いているが、柱が立ち並んでいる所為でどこかしらに影が出来る。
『ガタン……』
前方の空間から物音がした。
『建材などが倒れた音だろうか』と、思考した宮森の脳内に
宮森は思考と感覚の
『用心しろミヤモリ。
〈食屍鬼〉共がいる』
『明日二郎、数は判るか?』
『おうよ。
二体だ二体。
それとお前さん、その銃ぶっ放す時は……』
『解ってるって。
練習してた例のやつを試す。
宮森がコルトM1911を構えると同時に〈
「益男さん!」
宮森の要請に反応する迄もなく、宮森の顔面を狙った鉤爪を
宮森は目前に迫った鉤爪の先を見据える
犬に似て突き出ている
その下には不快な匂いを吐き出す犬歯の群れ。
〈
この至近距離で狙いを付ける迄もない。
宮森は片手で
コルトM1911は四十五口径。
宮森が普段使っているサベージM1907は三十二口径なので、発砲時の反動はコルトM1911の方が大きくなるのが道理。
日本人男性平均よりもやや小柄な体格の宮森が片手で扱うには、コルトM1911は大き過ぎる。
小柄な者や手の小さい者は、発砲時しっかりと両手で銃を保持するのが
宮森はこの定石を
宮森は発砲の瞬間、
それだけでなく
その効能により、
宮森の発砲した銃弾が〈
それを確認した宮森はすかさず成長促進の術式を展開。
弾頭に仕込んである細胞融解素を増殖させた。
それと同時に明日二郎からの
一瞬の後、宮森は背後から迫る〈
細胞融解素に
宮森は二丁のコルトM1911に
「ふ~っ、何とかやっつけましたね。
矢張り〈食屍鬼〉と云えど、脳天を撃ち抜かれれば即死か。
あ、益男さんは大丈夫ですか?」
「ええ大丈夫です。
擦り傷一つ負いませんでした」
「それにしても益男さん、〈食屍鬼〉とは高度な知能を備えた存在のようですね。
二体目なんか、明らかに銃撃の反動を計算して襲って来ましたよ。
益男さんが居たから良かったものの、自分ひとりでは
「多野 教授はその為に私共を組み合わせたんでしょうね。
それよりも宮森さん、〈食屍鬼〉の死体を見て下さい」
〈
弾丸の命中箇所からグズグズに融け出している。
「これが細胞融解弾の効果か。
放って置いたら、骨質以外は融け切ってしまいそうですね。
それにしても、うぅぇっ!
酷い匂いだ……。
益男さんは平気なんですか?」
「まあ、これくらいは。
それにしても宮森さん、先程は鮮やかな手並みでしたね。
発砲の反動が殆ど見られませんでした」
「お褒め頂いて光栄です。
練習した
◇
ザ・グール・オブ・ザ・デッド Aシーン その一 了
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