破滅への託宣 その四
一九一九年六月一三日 宮森の下宿先
◇
『統一国家に統一言語……。
きな臭いな今日一郎。
次は、「――
『奥津城は、宮森さんの推察通りバベルの塔と見て間違いないだろう。
託宣を字義通りに解釈するならば、バベルの塔の機能により、邪神の眷属だけでなく邪神をも召喚できると読める。
恐らくは、肉体すら伴って……ね』
[註*世界統一言語=『令和をエスペラント語で翻訳』などの語句でインターネット検索してみよう!
邪神崇拝者達の計画が垣間見れる……かも]
『矢張りか。
来たるべき一致団結の為の世界大戦……。
草野 少佐が言っていたように、清国、ロシアとの戦争、ヨーロッパでの大戦までが
話は変わるが今日一郎、ミロクの印について聞きたい。
「――
これは、ヱドナイ教に起源を持つ〖カバラ数秘術〗で間違いないね?』
『ああ。
生贄儀式として邪神崇拝者達が引き起こす事件、事故、災害には、必ずその日付などにカバラ数秘術で刻印がしてある。
例を出すと、3・6・9・11・18・23・33・46が多い。
典型的な使用例は、9・11・33の組み合わせだ。
33は3+3=6になるし、6+6+6=18のように変形させて組み込む事も多い。
『なるほど。
わざわざ数字を刻印して犯行声明を出しているのか。
加えて、数字合わせが
『その通り。
それらを照らし合わせると、入門が語った「――百幾年の後、民草に埋め込むミロクの印は……
ここで毛色の違う託宣も取り上げる明日二郎。
『なあミヤモリ、「――虫と虫と虫とで蟲もミロクぞ」って見当付くか?』
『
でもそれだけで託宣の一つとして語るとは考えにくい。
絶対に何か有る筈だ。
今日一郎、意見は有るかい?』
『憶測に過ぎないけど、昆虫食に関係あるんじゃないかな。
昆虫に含まれる成分か、昆虫を消化吸収した際に人体で生成される成分に秘密が有ると思う。
人体への影響と云う面では寄生虫も視野に入れておいた方がいいけど、今の所は情報が少な過ぎるね。
今後の調査で暴くしかないだろう』
今日一郎が思索を断念したので、明日二郎が
『なあオニイチャン。
六六六がミロクと読むんなら、
明日二郎の問い掛けに、宮森と今日一郎が呼称を案じ始める。
『ごー、ろく、しちー、でゴロシチ!
どうだ、明日二郎!』
『だーめ。
ミヤモリ、お前さんネーミングセンスが壊滅的だな。
同情するぞ……』
『明日二郎ェェ……』
『明日二郎、宮森さん、こう云うのはどうだろう。
五と六と七でこ・ろ・な、
『……!』
『⁈』
『――』
今日一郎が発したコロナと云う音は、彼らの
宮森が恐る恐る尋ねる。
『何だ今の違和感は?
一瞬脳裏が激しく明滅したような……』
『ハらひレほロひれ~~』
『言葉を思い浮かべただけでも邪念と言霊が反応した……。
どうやら当たりを引いてしまったらしい。
これで確定した。
約百年後に完成し、
偽りの疫病を発端にヴァクスィン又はヴェクスィーンの名称で人々に刻み込まれ、
強制的に邪霊の依代となすミロクの印、
その名は、
――コロナ――』
◇
ミロクの印に込められた真意も解り、宮森と比星
『今日一郎、「――
比星
彼の名を聞いた明日二郎が鼻息荒く割り込んで来た。
『あんニャロー!
思い出すだけで腹が立ってくるぜ!
「――
まさか、入門とつるんでんのか?』
『明日二郎の言う事も
今日一郎、心当たりは有るかい?』
『入門と鳴戸寺の関係は知る
『確信した事?』
今日一郎の思念が見る見るうちに
『僕は今まで宮森さんと会話する際に、意図的に使わなかった言葉が在る。
地球と云う言葉だ』
『あ~そうだな……。
確かに、今日一郎の口からは聞いた事が無い。
地上なら有るけど。
何故なんだ?』
『良く聴いてくれ宮森さん。
僕は前々から思ってたんだけど、
この世界は球体ではなく、平面かそれに近い形状だ。
それに地上平面説が正しいとすれば、太陽と月も大気圏内に存在するだろうね』
『なんだってー!
済まん、つい取り乱してしまった……。
確かに入門と鳴戸寺の文言はそう解釈できるけど、何の為にそんな大それた嘘をつくんだ?』
『正確な事は僕にも解らない。
只、ミロクの世を迎える為には是非とも必要なのだろう。
天文学の数字に、カバラ数秘術がふんだんに組み込まれているのがその証左だ。
例を挙げると、地球の地軸は公転軸に対して約23・4度傾いているとされている。
これは、公転面に対する角度が約66・6度だと云う事。
詰まりは
『大地が球体なのか平面なのか。
君の力で確かめられないのか今日一郎?』
『前に試した事なら有る。
地上上空の高高度には正体不明の障壁が存在していて、その障壁より上にはどうやっても幽体を飛ばせなかった。
ちょうど空に
それに太陽と月にも障壁が存在しているらしく、幽体を近付けさせる事すら出来なかったよ。
余程まずかったのか、その後九頭竜会からの監視が強まり施設に軟禁される
『そうだったのか……。
今日一郎、その障壁とやらは魔術結社が張ったものなのか?』
『僕は違うと思うよ。
そんな事が可能なら、世界はとっくに邪神崇拝者のものになっている。
そんな事が可能なのは……
存在するとしたらだけど』
『だとすると、先の大戦で使用された飛行機の目覚ましい発展は、地上遥か上空に張られた封印である、
で、太陽と月も恐らく大気圏内に在る。
本当に自分ら一般人は深々洗脳されているんだと、しみじみ感じるよ……』
深刻な話が続いているが、陽気さを取り戻した明日二郎が割り込んで来た。
『お前さんはもう一般人じゃないけどな、ミヤモリ。
どうりで、お月さんの
今度さ、あの
『そうなったら善は急げだ!』
金華猫たる白猫が屋根に上っていないか確認しようと、部屋を飛び出す宮森(と比星
今日一郎の
だが宮森 達が語った邪神崇拝者達の目論見の一部は、第二次世界大戦後に実現してしまう。
その証として、国際連合の紋章や旗にははっきりと、
◇
破滅への託宣 その四 了
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます