慰労の宴 その四
一九一九年六月一三日 帝居地下 御殿
◇
宮森と宗像は、入門が松果体を食す
宗像と宮森の警戒もどこ吹く風。
入門は左手で小鉢を持ち、右手を扇いで風を起こす。
香りを楽しんでから、朱黒い掛け汁をひと口含む。
口内で舌を回し、掛け汁の風味の変化を観る。
風味の変化が落ち着いた後、箸を伸ばし松果体を放り込む。
少し舌先で転がし、その感触に酔う。
いよいよ松果体を奥歯へと送り、ひと思いに噛み潰す。
胃の腑に染み渡った松果体の精が
そして、
小鉢の味に大変満足したのか、入門の
その崩れた相好から滑り出た賛辞は、まさに狂気そのものである。
「……先ず掛かっておるタレが良いぞよ。
血と糞尿を混ぜ、三年以上寝かせたモノを酒で
ほんに
そして主役の松ぼっくり。
そうであるな……。
年の頃は七つか八つ。
意識を失う寸前まで責め苦を与え続け、狂う寸前まで犯し
先ほど収穫されたばかりのプリプリとした食感が
味わいの方もこれまた絶品。
ほほほ
殿下、良いモノを御用意下さってほんに有り難う御座る~♥」
[註*
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最下層が魔空界と繋がっている。
[註*
場の雰囲気に
すると彼の瞳孔が開き、瞳の内部には異様な光が
宗像の脳内では今、異常な量の快楽物質が溢れ出しているのだ。
いま
服越しでも容易に判るほど、股間が怒張している宗像。
彼は突然に
宗像は今、自身の霊性に見合った邪霊と
隣りで宗像の様相を観ていた宮森。
気は進まないが、ここで口にしない訳にもいかない。
既に表から裏への人格切り替えを終えていた宮森は、仕方なく松果体を頬張った。
先ずは糞尿血酒の激烈な臭気が口内に広がり、嗅覚が
鼻が利かない為か松果体の味は
吐き気を
胃の腑が暴れるのを必死で抑える。
まるで、身体の細胞一つ一つを
意識が、遠のく――。
◆
……、……、……。
白い
瑠璃家宮だ。
表情が柔らかい。
安心しているのか。
もうひとり居る。
肩を並べていた。
抱き合っていた。
瑠璃家宮と。
顔を見たくなかったので視線を
下に逸らした。
繋がっていた。
ふたりの下半身は、幾本もの
ふたりは口づけを交わしていた。
瑠璃家宮が
――〈ス※※※〉――。
◆
⦅……、……、……!⦆
松果体を食し放心状態に
暫くは身体の感覚が曖昧で寝起きに近い気分だったが、感覚が戻って来るに従い、糞尿血酒の残り香で嗅覚が突き裂かれているのを認識し出す。
宮森が再び吐き気を
次いで侍従達も入室。
客達を男女に分け、それぞれの手洗い場へと案内する。
宮森も手洗い場へと向かい、用を足すなり口を
宗像は大便用の個室に入っている。
きっと後始末をしているのだろう。
手洗い場から出ると、宮森 達は地下の小祭事場へと案内された。
◇
一九一九年六月一三日 帝居地下 小祭事場
◇
小祭事場は五十畳ほどの板張りで、奥には鏡や
祭壇の形式は一般的なもので、
[註*
[註*
野菜、果物、穀物などの山の幸。
魚介類や昆布などの海の幸を供える場合が多い]
祭壇手前の空間には朱色の
客席の最前列中心には、
権田 夫妻が着席しているので、空いているのは残り二席。
宮森は祭壇に向かって左端の席に、宗像はその右隣りに座ったので席が埋まった。
入門の席は無い。
席に着いた宮森は、宗像と顔を見合わせ一息つく。
未だ入門の姿は見えない。
祭壇の右側には筆記台と
場の様子から見て真道儀式を行なうのだろうが、書記係らしき職員が気になっている宮森。
⦅発言や
宮森が疑問を抱いた所で、宗像が話し掛けてきた。
「祭壇の左側のヤツ、宮森はんはなんやと思う?」
そこには大振りな木製の高台が設えてあり、四本の
箱からは太い
宮森は
「あれは恐らく、電子画像撮影機ではないでしょうか」
「デンシガゾウ……なんやて?
映画とはちゃうんか?」
「テレビジョンと呼ばれる技術です。
あの撮影機で撮影した映像が、時を置かずに別の場所でも視られるのです」
「なんちゅうドエライもん作るねん。
ワイの頭でも追っつかんわ……」
宮森は、テレビジョンに関してでき
ひと通り宗像が驚いた所で、脇の廊下から足音が聞こえて来た。
待機していた侍従が
デップリと肥えた腹を包み込む
推し量るに、巫女の体型に合わせた完全な
しかし羽織る
元々は用意されていなかったが、巫女が着たいと
頭上には
[註*
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いわゆる和風ティアラ]
[註*
巫女さんがシャンシャンやるアレ]
破天荒で鳴らす宗像も、余りの
一方で宮森は、宗教儀式に対する
⦅装束から推測するに、あれは神楽舞だな。
神楽舞での歌や楽器を担当する
格好は言わずもがな。
性の逆転を表す異性装。
邪神崇拝に間違いない……⦆
巫女装束を纏った入門が観客に一礼して、ひとり舞い始めた。
撮影機が回る。
そして語り始めた。
書記が素早く写し取る。
醜悪な巫女が舞い語ったモノは、この世界が破滅へと至る、
◇
慰労の宴 その四 了
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