第2話
サボりがバレたらどうなるんだろう。生徒指導室へ連れてかれて、こっぴどく叱られたり、親に連絡されたりするのかな。先生は別にいいとして親はめんどくさいことになるなぁ…。理由を聞かれて「授業を受けるのがバカバカしくなりました」って答えたりしたら先生も親も目丸くするだろうな〜、想像するだけで面白い。
制服のポケットに手を伸ばすとお札が入っている。千円札。これが私の所持金。ポケットの中では野口英世が私の悪事をニヤニヤしながら見ているのだ。
学校から5分ほど歩いたところには、ショッピングモールがある。雑貨屋もスーパーもゲーセンもある子供の小さな夢の場所。誰だって1回は、授業をサボってゲーセンでお金を溶かすだけの無意味で有意義な時間を夢見るだろう。
ショッピングモールの入り口のすぐ前はスーパーになっている。今日はポイント10倍とかなんとかで沢山の主婦で賑わっていた。
さて。
どこで小一時間時間を潰そう。いや、特にこれをしようと思って学校を抜けたわけではないので。ゲーセンで金を溶かすのもいいけれど、なんとなく気が向かない。
スーパーから専門店へと抜けた。ここのショッピングモールは女性向けのアパレルショップが多くあり、今日も店員が甲高い声で接客をしていた。
ふと目の前の珈琲店と目が合った。冬の新作。ふゆのしんさく。人はつくづく新作という言葉に弱い。特に私は。
暖かいエスプレッソの上にミルクプリンとたっぷりの生クリーム、そしてドライフリーズの細かいイチゴが散りばめられているオシャレな看板に釘付けになる。価格はトールサイズ560円。
私は心の中でポケットの中の野口英世に聞いてみた。なぁ野口。あの新作飲んでいいかな。ポケットの中の野口英世やゴーサインを出した。
ああでも、この制服であそこ入るの抵抗あるな、みんな大体大人だし(ここの珈琲屋でパソコンをカタカタしてる大人は人生勝ち組ってママが小さい頃言ってたっけ)周りの大人の冷ややかな目に耐えられる気がしない。ん〜だけど新作飲みたいしなぁ!
珈琲屋の看板の前で唸りながら悩んでいた、その時だった。
「吉田さん、こんなとこで何してるんですか」
冬の幻想 膿 @IamMya_san
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