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涼しかった参道から通学路に戻ると、照り返すアスファルトの熱が遠くの景色を歪ませている。その上を運動部が朝練のランニングで駆け抜けたり、白装束の旅人たちが顔色一つ変えずに杖をついて歩いていたりして、この街ならではの風景になっていた。
「今日も朝からお参りしてたの?」
「そうだよ。欠かしたら神様が悲しんじゃうもの」
隣で一緒に歩くコハルに今朝の様子を訊ねると、にこやかな表情でいつも通りあの神社にいたことを教えてくれる。それは私からすると、もはやお馴染みの返答になっていた。
家が近いこともあって幼い頃から神様や心霊の類に接してきているらしく、その存在にほとんど疑いを持っていない。その経験もあって、毎日あの神社に通っては願掛けをするほどに信仰心深い一面を持っていた。
「熱心だねぇ。ヨリヒコ様だっけ?」
「ヨリシロ様、ね。もう三年も言ってるんだから、いい加減覚えてよ」
「……はいはい」
適当に返す言葉に、彼女は膨れっ面で抗議の声を上げている。
それがちょっと可愛らしいとは思うけれど、彼女の信じる存在のことを私はあまり認める気にはなれずにいた。
以前聞いた彼女の話によれば、あの神社には子供にまつわる神様が祀られているらしく、近くに学校があるのも「ヨリシロ様」に私たちの成長を見守ってもらうためとのことらしい。
何処までが本当かは分からないが、両親含め周りに神職者が多いことも相まってその話に何の疑いも抱いてはいない。その根拠として小学生までは身体が弱かったのだが、毎日のお参りで少しずつ良くなって今では何の不自由もなく生活が送れているとのことらしい。
そんな素晴らしい存在なら是非とも一枚撮らせてもらいたいのだが、残念なことに今までそういった写真は一度も撮れたことはなく、色んな媒体で紹介される霊も大半はただの映り込みや自然現象の一部と知ってからは尚更認められるはずもなかった。
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