第二話

3時間目と4時間目を丸々潰した自販機での列整理を終え、教室に戻ると、お昼の時間だった。

「はあ」

「お疲れさま、望ちゃん。聞いたよ、風紀委員会を引き当てたんだって?」

「残念ながら。」

「加恋は?」

「聞いて驚くなよ、私は文化祭委員!」

「あー、大変そうなの引いたね。」

「大当たりだよ大当たり。この学校の文化祭大掛かりじゃん、一度運営で参加したかったんだよね。」

幼馴染の加恋は望みの委員会を引き当てたらしい。

他の人はどうだったのだろうか?

どうやらもう一通りこの話は終わったらしく、見回しても誰もこの話をしていない。

「素直に聞けばいいのに。ハズレを引いたのは2人かな。運動が苦手なのに体育祭委員になった子と、朝が苦手なのに挨拶運動委員になった子とか。

まあでも、どこでもそんなにキツくないし。風紀委員会以外はね。」

「それいうなら、文化祭委員もそんなに大したことしないし、メインは文化祭実行委員じゃん。」

「チッチッチ。望くんはわかっておられないようですな。文化祭委員と文化祭運営委員を兼任している人は珍しいのですよ。だから運営をより深く楽しめる。いいでしょ?」


この学校では、初めの委員会活動を自販機で抽選で決める。

よく、自由と聞いていたのに話が違う、という文句が出るが、ちゃんと理由がある。

入学したばかりだと、恥ずかしさと同調圧力で、立候補できない、嫌な役をやらされる、ということがよく起こるからだ。

選択の自由を殊更に大事にする我が校では、選ぶならみんなで、という原則がある。誰かは選べて誰かは選べないぐらいなら、みんな抽選で、ということで、初めは自販機抽選なのである。

それに、どの委員会も最低限の簡単な活動しかしない。メインは、いろんな人の意見を公平に取り入れることと、普段会わない人との交流だからだ。


文化祭なら、文化祭委員が最低限の事務仕事をして、実際の運営は有志の立候補で集まった文化祭運営委員が行う。文化祭が好きな人の集団が運営して、公平に選ばれた文化祭委員がそれを監視する。そんな感じだ。


例外は、風紀委員会。

風紀委員会は、自販機抽選で選ばれた人でもわりと忙しい。

自販機の運営やルールの策定、学校側との交渉をやっている関係で、公平に選ばれた人が監視する作業が殊更多いのだ。

その代わり、辞退を届け出れば1ヶ月で辞められる。


「まあ、私のことはいいとして、望ちゃんは、どうするの?風紀委員、辞退するの?」

「うーん、考え中。まだ決めるには早いかな?」


今日は不意に手伝わされたけど、説明会は明日。

決めるならその後で十分だ。

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風紀委員(自動販売機担当) 大幸望 @Non-Oosachi

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