第一話
入学式から2日目。その自販機には、長蛇の列ができていた。
その先頭、僕の前にいる女子は、カプセルに入った紙を見て小さくガッツポーズをした。
「まだかよ、早くしてくれよ。」
後ろの方から、苛立ちの声も聞こえてくる。
「はい、次のひと、コイン入れて、自分のクラスの書かれた3色の色から選んでボタンを押してください。」
上級生に促され、
1年F組と書かれた青、黄、赤の3つのボタンから、黄色を選んだ。
「ゴトン」
取り出し口には、赤色の長細い筒状のアルミ缶。
取り出すと、意外とずっしりとしている。
隣の自販機を伺うと、ちょうどカタッとカプセルに入った紙が出てきたところだった。
「ああ、大当たりだね。君、名前は?」
「え、あの、…」
「んっ?」
隣の上級生、どうやら2年生の女子らしい先輩は、可愛らしい笑顔で、僕の左手首を握り締めながら首をかしげた。
「どうしたの、ちょっと心拍数高いよ?」
「いや、それは…」
「あ、ジャマだね、君はこっち。次のひと、コイン入れて、自分のクラスの書かれたと3色の色から選んでボタンを押してください。」
「これ飲む?ただの水だけど。」
「ええと、いいんですか?」
「いいよいいよ、可愛い後輩なんだし。それ飲んだらちょっと手伝って。はい腕章。」
そういうと、先輩はいつの間にか僕の持っていたアルミ缶の中から腕章を取り出して左腕にささっとつけた。
ー 風紀委員会
「風紀、委員会…」
「そうか、説明してなかったね。ようこそ風紀委員会へ。歓迎するよ。私は2年E組の笹井理子。君は?」
「水野望です。」
「そう、望くん、これからよろしく。」
こうして僕は、何をする場所なのか知らないまま、風紀委員会初の仕事、自販機前の列整理に駆り出された。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます