第37話 宣戦布告、そして戦争

「失礼します。クラウディア皇国が悪魔の復活を宣言すると共に、我が国に宣戦布告、いえ、殲滅すると発表をしました」


「そうですか。分かりました」


 早朝、ゴーレインがアリシアの部屋に入り、そう報告した。

 報告を受けた彼女───アリシアはどこか落ち着いた様子だった。


「それでは準備を始めるよう、各団長に伝えてください」


「はっ」


「それと他に魔王にこう伝えてください。『今回は我々だけで十分だ』と」


「……よろしいのですか?」


「今回は我が国に対するものです。他の国を巻き込むほどではないでしょう。それに、問題はありません。彼の国は“殲滅”と言うのなら、こちらも殲滅し返すまで」


 そして彼女は不敵に笑い、ゴーレインにこう告げた。


「なんたってがこちらに着いた時点でこの戦争は勝ちも同然です。この戦争で彼には本気を出して貰いましょう」


 それは確かな自信で持って放たれた言葉だった。



 ***



 僕は今、最近知り合いになった鍛治師のガンゼムさんのところに来ていた。前々から頼んでいた武器が完成しそうだと連絡を受けたからだ。


「ガンゼムさーん、来ましたよー」


「おお、来たか。お前さんから頼まれていたやつはもうすでに完成している。ほれ」


 そう言って渡されたもの、それは刀だ。

 僕は前からあった弱点である近距離戦闘の対策として作ってもらったものだ。悲しいことに僕は魔術の腕は良いのだが魔術しか使わない為、近くまで寄って来られると途端に手数が少なくなってしまうのだ。

 それを払拭しようと前から近接戦闘の訓練をしていて、刀との相性がいいと最近分かったので、こうして自分専用の武器を頼んでいた。


「ありがとうございます。それじゃあ早速仕上げを始めますね」


「おう。この作業だけは儂には出来んからな」


 僕は魔術を展開し、手にしている刀に込める。

 すると、銀色だった刀身が黒くなり、そしてそれを塗りつぶすように緑になり、最後に赤色に染まって、元の銀色の刀身に戻ったのを確認し、込めるのをやめた。


「本当にありがとうございます」


「良いってもんよ!また面白い仕事の依頼、待ってるぜ!」


 ガンゼムさんはドワーフ族だ。この国には悪魔狩りが始まる前から交流がある他種族の国の人たちも住んでいる。人族から迫害を受けているもの同士、協力し合っているのだ。



 ***



 ガンゼムさんの店を出て、訓練場にいった僕は早速刀を軽く素振り等をし始めた。


「凄いな」


 思わず声が出てしまったが、それほどまでにこの刀は凄い。完全にオーダーメイドだが、それでも刀を振る際のこのフィット感は凄すぎる。さすがは鍛治においては右に出るものはいないとされるドワーフだ。


 ある程度の確認を終え、次に込めた魔術がちゃんと起動するのか検証してみた。

 僕が込めた魔術は三つあり、段階を踏んで発動するものになっている。そして、発動するには詠唱をして、真名を解放させる必要がある。あまりにも強力過ぎるからだ。


「さてと、始めようか」


 僕は刀に魔力を込めながら、一段階目の真名の解放を始めた。


「『刃を燃やせ、刃を燃やせ。赤く、紅く、赫く、刃を燃やして赫く染め上げろ。真名解放──妖刀、赫月かくづき』」


 その瞬間、銀色だった刀身が赫く染まった。そしてその周りが熱を帯び始めた。


「──成功だ」


 一つ振り下ろせば大惨事。しかし戦場において、最初の威嚇の一撃にするのなら丁度いい。この力はまだに比べたらマシだろう。



 ***



 そしてそれから1週間後。

 ついにクラウディア皇国による我が国の侵略が始まろうとしていた。

 どうやら彼らはこちらの次元世界と彼方の次元世界を繋げ、兵を送るようだ。僕はその繋げる座標を軽く弄り、この国から離れた平原に設定した。


「敵国の兵士を確認。どうぞ」


『彼らの準備が済み次第、始めてください』


「はっ」


 この戦場には我ら第三兵団しか居ない。他の兵団が彼の国に攻める為だ。この時点でもう過剰戦力だと思う。


「団長、もう全員来たみたいだよ」


「分かった。んじゃ、始めようか」


 バララが言ったように、もう向こうは全員来たみたいだ。でも勇者はいないみたいだ。向こうの守りに置いたのか?


「シンくん、あいつ、いないね」


「そうだね、イリス。多分守りに回されたんだろう」


 向こうの兵士がこちらの人数を見て困惑している。そして状況を理解したのか、バカにするように笑っている。まあ、当然だわな。


「勝つって分かっていてもムカつくね、あれ」


「しょうがないだろう?まあ、舐めてくれた方がやりやすいんだけどね」


 こっから一瞬で不利になった瞬間、混乱が起きるだろう。僕らはそこをつけばいい。簡単だ。


「さて、それじゃあ皆んな。僕の一撃の後に突っ込むように。でも、余波に巻き込まれないように、焦らずに、自分の役割をしっかりと自覚してね。また、この戦いで多くの戦果を挙げたものには、臨時ボーナスが出るって魔王様が言ってたから、頑張ってね」


「「「「「はっ!!!!」」」」」


 僕の最後の言葉に皆んな一気にやる気になったようだ。

 そんじゃ、始めますかね。



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 更新遅くなって済みません。

 まだ安定して更新できそうに無いので、できる範囲で順次更新していきますのでよろしくお願いします。





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