第32話 訓練
僕たちはゴーレインに訓練場を借りると伝えてから、そこに向かった。
移動中の会話は無かった。まあ、初対面だったから無理も無いが。
「さて、まずはアビリティの感覚を認識しろ」
ついてから彼女がまず指示したのは自分のアビリティを意識するというものだった。
アビリティを持ち始めてまず最初にすることは、自分のそれを認識すること。僕の場合アビリティがEXランクという判定が出たが、それでもやることは変わらない。
アビリティを認識するには自分の魔力を感知するように、目を閉じ、自分の中にある何かを掴む。魔力の場合はそれを掴んだら勝手に体全体に広がる感じがするのだが、アビリティの場合は感覚を掴んでも何かが起こるわけではない。むしろ魔力の時とは違い、掴めたかどうかさえかなり曖昧なのだ。
このようなことは子供の時に誰もがやることだ。それを今やるとは。
「すみません、それは既にやっています」
「いいや、まだ掴めていない。お主が掴んでいるそれはアビリティ本体ではない。今つかんでいるそれはほんの一部に過ぎない」
「え?」
「スキルの欄はしっかりと読めるか?」
「……いいえ」
「つまりはそういうことだ。アビリティ本体を掴めていない故に、スキルがしっかりと読めない」
そういうことだったのか。
確かに僕のステータスのスキルのところには書いてはあるんだけど、読めていなかった。
僕は納得と共に、アラシャさんに問いかけた。
「それだと、どうして僕はあの時スキルが使えたのでしょうか?」
「それは、覚醒したから、だ」
「覚醒?」
「そうだ。使い者シリーズのアビリティは全て、覚醒して初めてその効果を発揮する。但し、それにはアビリティ本体をしっかりと把握しておく必要があるのだが、お主はそれを飛ばしてしまった。故にそれを取り戻すためにアビリティの本体、その核となる部分を掴んで欲しい」
「わかりました」
最初僕はそれを掴む程度簡単だと思っていた。
でも、それが間違いだと気付いたのはすぐだった。
***
始めて10分が経った。
未だにアビリティの感覚が掴めない。
アラシャさん曰く、このくらいで掴めるなら苦労しないらしい。
確かに掴もうとしても、靄を掴んでいる感じで何かパッとしない。
これは時間がかかりそうだと、少し後悔した。
***
始めて20分経った。
さっきと何も変わらない。
アラシャさん、暇になったのかどこからか魔物を狩ってきてそのまま生で食い始めた。もうやばい。彼女は自分のことを神だと言ってるけど、絶対違うと思う。
***
始めて30分経った。
さっきと何も変わらない。
この時間までやってると、集中力が切れてきたりするので休みながらやっている。
そして案の定、アラシャさん、また何か食ってる。しかも、虚空に手を伸ばしたと思ったら何かやばい魔物が出てきてそれを食べ始めた。
僕は彼女にこう言いたい。
料理しろよ。
***
始めて1時間経った。
全然掴めない。
掴もうとしても空振りばっかり。輪郭さえ掴めない。
アラシャさんは飽きたのか、50分経ったあたりから寝始めた。
自由かよ。少しはアドバイスとか欲しいけど。絶対くれないし。
疲れた。
***
始めて2時間……経った。
ようやくアビリティの縁?みたいなものを掴む感覚があった。
後はそこから全体を掴むだけだが、それが物凄く難しい。さっきよりも。
もう闘技場にいるの僕だけだし。アラシャさん帰ったし。
一人は、ものすごく寂しい。慣れてるけど。
こんなのに慣れたく無かった……
***
始めて…………3時間…………
寝る。
***
始めて6時間経った。
途中3時間くらい寝てしまった。
やっていると、闘技場の周りの廊下を通る人たちが何か変な人を見るような目で僕を見てくる。
悲しくなってきた。でもやるしかない。
メンタルもしっかりと鍛えなけえれば。
***
始めて8時間。
途中飯も食べながらひたすら目を瞑り、瞑想みたいなもので自分の内側にあるアビリティをひたすら掴もうとした。
そしてようやくその全体を掴めた。
掴めた瞬間、体全体が熱を帯びたように暑くなるような感じになり、力がみなぎってきた。これがアビリティを認識するということなんだと、転生してすっかり忘れていた感覚を思い出した。
「そうだ、ステータス見てみよう」
そうしてステータスを開いてみると、
名前:シン・ユグドラシアル
シュレイン・クロム・ローザリス
アル・ローダス
種族:悪魔
年齢:16歳
状態:不老不死
生存値:20000/20000
魔力値:1250万7589/1300万
アビリティ:色使い Lv.3
所持色:赤×1000 青×1000 黄×900 緑×600 茶×700 紫×400 白×800 黒×1200
スキル:
なんと、全てのスキルが見れるようになり、所持色の値も大幅に上がった。
アビリティを掌握するだけでこんなに変わるとは思わなかった。
すると、いつの間にかアラシャさんが来ていた。
「おめでとう。これで第一関門は突破した」
「アラシャさん。ありがとうございます」
「それでは、第二関門だ。慣れるには実践あるのみ。私と模擬戦をして慣れてもらおう」
「え゛」
次もなかなかにハードだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます