第31話 色使いの真実
「ほう、その名が出るとは……なるほどこれは……」
神も唸らせてしまうのか……僕の名は……なんてどうでも良くて。
何で僕の前世の名前を知ってるのだろう。
「知っているのですか?」
「ああ。結構昔に聞いたことがあってな。まぁ、その事はいいだろう。さて、シンよ」
途端に彼女の雰囲気が、がらりと変わった。
そして、今まで抑えていたプレッシャーを解き放った。それでも、この部屋の中に留めるように調整しているのだが。
「色使い、お主が持っているそのアビリティ。どのようなものなのか、分かっておるのか?」
「いいえ」
「成程」
そして彼女は目を閉じ、何かを考える仕草を見せた。その間にも彼女から発せられるプレッシャーは凄まじい。
「その前に……」
「何ですか?」
「飯を食わせろ」
「……は?」
***
ネモの昔話に場は沈黙に染まった。
遥か昔に教会からある程度知っていたアリシアでもっても、詳しくは知らなかった。
「てことは、今回の議題はこれで解決なのでは?」
ライランがこの場にいる者達にそう言った。
すると、その言葉で多少緊張が緩和されたのか、ジーバルが意見した。
「そういうわけにもいかねえだろ。それじゃあそいつに全て任せることになるだろうが。まだそいつが強いと確証できたわけでもねえんだからよ」
「しかし、ネモ様の話ではその『色使い』とやらは持っているだけで強いのでしょう?なら、その方がどんな方であれ問題ないのではないでしょうか?」
「問題大有りだよ。例えそいつが強かったとしても、本当に協力してもらえるのか?」
「頼めばできるんじゃないですか?魔王から直々に頼まれたとなれば、普通は光栄に思われるでしょう?」
「んなことできるわけないだろ。馬鹿か」
そしてまた場は沈黙で満たされた。
「話を最初に戻しますけど、ネモ様、後は貴方だけです。同盟に参加しますか?」
微妙な空気を戻すために、最初にアリシアから提案された同盟についてアリシアがネモに問いかけた。
「そうじゃのう、儂は構わんよ。でもあまり協力はできんぞ?」
「構いません。ありがとうございます」
これでライラン以外の魔王が同盟に賛同した。
アリシアはこの結果に満足していた。
(これで計画のうちの一つが完了しました。後はクラウディア皇国に攻める時期ですかね……シン様のアビリティが覚醒したということは恐らく何かしらの事が起きたということかも知れません。帰ったら計画の一部を変える必要がありますね)
「それでは後ほどクラウディア皇国に対しての戦争の時期等を話し合いたいと思いますのでこの後も残ってもらえると幸いです」
その言葉にライラン以外が賛成の意を示すと、アリシアはどこかほっとした表情を心の中で浮かべた。決して顔に出ないようにした。
この後アリシア達は遅くまで戦争の時期などについて話し合うのだった。
***
「おかわりだ」
「は、はい〜〜〜!!」
僕の隣に座ってかれこれ1時間以上休む事なく食べ続けている彼女に慄いたのか、注文を受けた店員が急いで厨房に戻った。
ここは城下町にあるとある飲食店だ。
値段が安く、それでいて多いが売りの店だ。但し、味は保証しないが。
僕の隣にいる彼女は味なんか関係ないと言わんばかりのスピードでどんどん平らげていく。
そして食べ続けること2時間が経った時、僕は肝心なことを聞いていなかった。
「そういえば、貴方の名前は?」
「言っていなかったか?まあいい。私の名はアラシャだ。覚えておけ」
今も食べ続けている彼女──アラシャは自分のことを神だと言った。我らが信仰しているのは七大罪の神である。その話を信じるならば、彼女は七大罪のうちのどれかということとなる。でも、今の様子ですぐにわかってしまった。恐らくは『暴食』の神なのだろう。
「おい、シン」
「何でしょうか」
「これからお前は、どうする?」
食べている途中で急にこんな質問だ飛んできた。
そんな彼女に僕は一言。
「まずは食べ切ってから言ってください」
その後彼女が満足するまで2時間かかった。
「それで、どうするのだ?」
彼女が帰り道、さっきと同じ質問をしてきた。
僕は視線を少し地面に向けながら今思っていることを話した。
「はい、とりあえず団長として頑張りますよ」
「色使いは使うのか?」
「わかりません。僕もまだ発動の仕方がわからなくて……しかも、同じような効果を持つ魔術はありますから」
「そうか。ならば特訓だ。明日から私直々に特訓をしよう」
決まってしまった。これで計画の修正は何度目だ?なぜかイレギュラーが起きすぎている。
「わかりました……それで。いつ頃までやるのでしょうか」
「とりあえず1ヶ月後くらいまで、とは思うが……」
「はあ。わかりましたよ」
こうして僕と彼女の一対一での訓練が始まった。
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