第24話 出発やら何やら

「どういうことですか!?なぜ勝手に決まってるんですか!?」


 貴族側から声が上がった。

 しかし、アリシアはその貴族に淡々と答えた。


「はい。私が決めさせていただきました。このことはガイル団長以外知らせていません。それでも問題ないでしょう?貴方たちのスケジュールは大方分かっています。魔王会議の日はこの三名以外当てはまる人がいませんでしたので、勝手ながら決めさせていただきました。異論は認めません。それとも何ですか?貴方は私が提示した以上の人選をしてくれるんですか?」


「い、いいえ。何もありません……」


 声を上げた貴族は何も反論できず、座った。


「今あげました3人は、この後私のところに来るように。我々がいない間は基本的に私の秘書であるリムレイと宰相のダニエルの指示に従うように。これで会議を終わります。それでは各自解散して下さい」


 アリシアからそう言われると、僕らは次々と会議室を出た。

 そして、アリシアと同行する3人が残ったのだった。



 ***



「なぜ、今回私が選ばれたのでしょうか?」


 会議室に残った3人のうちの一人、ギガス公爵はそう尋ねた。


「貴方は外交官でしょう?だからですよ」


「しかし、私以外にも外交官は何人かいますが……」


(そうだ!なぜ私なのだ!私以外にも適任はいるだろう!これでは……仕方がない。今回はラムレに任せるか。最悪、あいつに全てを押し付けられるしな……)


 ギガス公爵は密かにそんなことを考えていた。


「そうですね。確かに貴方以外にも外交官はいますが、今回は貴方が適任だと考えました。交渉力は貴方が今残っている外交官の中でも高いですから」


「そ、そうですか。それではこのクスト・ギガス、喜んでお受けいたしましょう」


「ありがとうございます。カナン団長も大丈夫ですか?」


「はい、私は問題ありません。しかし、兵団はどうするのでしょうか?ガイル殿と私は団長なので、団長不在の兵団は……」


「それは副団長に任せればよろしくはないのですか?」


「あ、そうでしたね……すみません。野暮な質問をしてしまって」


「大丈夫ですよ。それでは、詳しい打ち合わせを今からしましょうか」


 それから数時間かけて、魔王会議までの時間等を決めたのだった。



 ***



 それから出発当日。


「それでは魔王様、いってらっしゃいませ」


「ええ、お見送りありがとうございます」


 そう言って、彼女は馬を走らせるよう告げ、魔王会議の会場である魔人国家ルーマンズへと向かったのだった。



「それじゃあ、各自作業に戻って」


 モルルがそう言った後、僕らはそれぞれの持ち場に戻り、作業を開始した。


 僕はといえば、バララと一緒に書類作業を始めていた。


「量、多い。団長、疲れた」


「もう少しの辛抱だ。頑張れ」


 そして作業を続けて2時間後。

 僕らは休憩をしていた。


「団長〜、どうして魔王様はギガス公爵を連れて行ったの?」


 こいつは休憩中はよく喋るな。

 ギガス公爵家は興味なさすぎて、前戦ったガストロしか思い出せなかった。


「ああ、それは知らない。あの方は何を考えているかなんて、もしかしたら単純かもしれないぞ」


「そうかな……?僕はそうとは思えないんだけど」


「まあ、あの方の考えは僕らにはわかんないさ」


 僕も、何で今回ギガス公爵を連れて行ったのか分からなかったが、そんなことはどうでもいい。

 今は計画通り、魔王会議が開催されたことにホッとするべきだろう。


 彼女がいない間、第三兵団の強化として街中での隠密訓練なんてさせるのも悪くないのかもしれない。


「なあバララ、訓練内容できた?」


「あ、出来たけどあんまりよくないよ?」


「まあ実際それをするかは内容によるから。取り敢えず見せて」


「はい」


 彼から渡された資料を見て、思わず笑みをこぼしてしまった。


「どうしたの?団長。何か悪いところでもあった?」


「ん?いいや、今度訓練しようかなって思ってたやつが載ってたから凄いなって感心していたんだよ」


「そう?」


 その資料に書いてあったのはさっき考えていたのとほとんど同じ内容だったのだ。


「今度の訓練はこれをする方向でいこう。スケジュール組みよろしく」


「え〜……分かった」


 彼はそう言って渋々作業に戻るのだった。




 ***



(クソッ……これでは実行できないではないか)


 ラムレは焦っていた。

 上司のギガス公爵からせっかく頼まれたのだ。失敗は許されない。


(このままでは、責任は全て私に押し付けられてしまう……しかし、ガイル団長がいないのは好機だ。多少不備はあるが仕方あるまい……このまま実行しよう)


 今彼がいるのは王都から少し離れたギガス公爵の別荘地である。

 彼は密かにその地下で指示されていたものを準備していた。


 それはとても危険なものであり、調整中は彼自身、何回も死にかけていた。


(何でこんなもん必要なのかと最初に思ったが成程、今思えばこれ以上に最適な物はないな。死にかけまくったが)


 しかし、彼には心配なことがいくつかあった。


(完全体にするには後数日かかるが、そうなる頃にはもう魔王は帰ってきてしまう。ならば、不完全だが放つしかない。幸い、こんな状態でもしっかりと戦闘力はあるんだからな)


 彼は知らなかった。

 この国の最大戦力はガイルと魔王であるアリシア以外にもいるということを。

 彼はそれを育てるために何年もかけ、その間一度も外に出なかったのだから。

 彼はこの後後悔するだろう。

 そしてそれはめぐりに巡ってギガス公爵自身にも及ぶということを。


 ────────────────────


 次からの更新が滞るかもしれません。

 ちょっと色々と立て込んでいて……

 すみません。

 ストックが溜まり次第順次更新していきます。

 これからも宜しくお願いします。

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