2章:七人の魔王編

第18話 魔王

 勇者にダメージを与え、新しくイリスを仲間に加えてもうすぐ1ヶ月が経とうとしていた。


 この間に色んな事があった。

 まずガレリーバだが、彼は三次元世界へと調査に行った。

 その任務の為に、彼は第三兵団団長の職を辞める必要があったので、副長だった僕がそのまま団長に就任した。


 イリスは僕の専属メイドに就任した。

 団長には自分の部屋の管理等の為に、必ず一人は専属メイドがす居なければならないという決まりがあったので、アリシアが丁度良いと無理矢理就任させたのだ。


 イリスもその話が来た時に、


「是非やらせてください!!」


 と言っていたので、即決だった。

 1ヶ月も経てば他のメイドとも仲良くやっているようで、最近ではメイドが暇な時間の時に行っていると言う戦闘訓練に混ざっているらしい。

 しかも、そのメイドの中で上位の強さに入りたてでなったというのだから彼女の実力はかなり高いだろう。お陰で彼女はメイド達からかなり慕われていると言う。


 彼女の印象はこっちに来てから、と言うか、勇者と離れた瞬間から凄く明るくなった。

 余程勇者が嫌いだったのだろう。彼の前ではかなり大人しい感じだったので、変わり具合が激しいと思った。



 また、つい先日決まったことなのだが、魔王達が一堂に集まる、魔王会議というものをすると決まったらしい。

 勇者の対策と、今後の魔王同士の連携について話し合うんだとか。


 魔王について、前にアリシアから教えられた。


 隠匿の魔王、ライラン。

 閃光の魔王、ジバール。

 博識の魔王、ネモ。

 悪夢の魔王、ムギレイ。

 淫乱の魔王、ローレライ。

 死霊の魔王、グレイ。


 そして破壊の魔王、アリシアの7人なんだそうだ。

 何故7人かは、七大罪の魔神から来ているという。


 また、彼らの二つ名の由来はその魔王の種族、もしくは魔王に至った経緯等から来ているという。


 隠匿の魔王ライランは、三次元世界に住んでいるエルフ族の祖先の種族である、エルフィール族であるという。

 遥か昔に、四次元世界に住んでいたエルフィール族の中の半分が三次元世界に渡った。

 そして、向こうで住み始めてからしばらく経って体等が変化し、エルフとなったという。

 恐らく今のエルフはこの事を知らないだろう。何故なら、エルフ族は元のエルフィール族よりも寿命が短いので、このことを知っているエルフ族の始祖か、それに近しい者はもう既に亡くなっていると思われるからだ。



 閃光の魔王ジバールは魔人族のトップだと言う。閃光の由来は、彼の技の奥義がその名前だからだ。言わば、彼の代名詞である。

 閃光という技は簡単に言ってしまえば、超高速移動だ。

 閃光を発動中、彼の動く速さは光のように速く、そして、縦横無尽に戦場を駆け巡る。

 彼が通った後は屍で溢れていると言い伝えられている。

 そして驚くべきことに、閃光は魔術や剣術等ではない。閃光を発動する際、道具も使っていないらしく、一体どのようなものなのか知る者はいない。



 博識の魔王ネモは、文字通り博識である。

 噂では、この世界の始まりをも知っているという。

 彼の種族は甲亀族。普段は人間に似た姿だが、いざ戦闘が始まると亀そのものに変化する。

 そして、甲羅に籠もりながら遠距離攻撃を相手に食らわせると言う。

 また亀なので長命で、これも噂なのだが1万年以上生きているらしい。

 今、甲亀族は彼含めて数人しかいない。

 約500年前に数を大きく減らしたとか。原因は分かっていないらしい。



 悪夢の魔王ムギレイは、夢獏むばく族と言う。彼らは、夢を食べる事が出来たり、悪夢を見せることができる。だが、夢を食べるのは偶にであって、普段は僕等と同じ物を食べている。また、悪夢を見せるときは戦争等の時ぐらいしかないという。

 彼女が魔王になったのは、悪夢を見せる能力が他より圧倒的に高く、また戦闘においても独特な戦い方で敵を倒す。戦闘力は魔王の中でトップクラスだ。



 淫乱の魔王ローレライは、サキュバス族である。彼女らは異性を堕とす事に長けている種族だ。故に戦闘力が無いと思われがちだが、実は魔術の腕がかなり高い。特に魔王の彼女の魔術は、国を滅ぼす程の威力がある。しかし近接戦闘はかなり苦手なので、他国と戦争は殆どしない。軍の殆どが後衛なので、近くまで来られると直ぐに全滅してしまうので、それを避けるため彼女らの住んでいるところは秘匿されている。彼女らは平和なところに現れるのだ。



 死霊の魔王グレイは、死霊族。死霊族は一番多種多様な種族であるとされている。ゾンビにスケルトン、ゴースト等様々だ。その彼らを纏めるのがグレイである。

 彼はスケルトンでありながら頭が良く、魔術や剣術も出来るという、オールラウンダーだ。更に、彼のオリジナルの魔術の死霊魔術はその土地にある怨念等を掻き集め、その怨念を込めた攻撃をしたり、怨念を使って即席の兵士を作ったり出来る、とても強力な魔術だ。


 以上が魔王の説明である。

 彼らは他の魔王に対し、必要以上に情報を与えない。しかし、魔王同士で交流があったりすると、情報共有したりする。

 アリシアはネモやローレライと仲良かったりするらしい。まぁ、僕には関係ない話だが。



 ***



「これより、定例会議を始めます。まずは第八兵団団長、ゴーレイン。報告を」


「はっ」


 今日は各兵団団長と上位貴族、そして魔王であるアリシアが集まって、定期的に行う会議だ。

 主にこの会議では今後の軍事行動についてや、領土の運営などについて話し合う。


「その前に魔王様、ちょっといいですか」


「なんでしょう、ギガス公爵」   


「はい、私が言いたいのは他でもありません。彼のことです」


 そう言って彼は僕に向かって指をさした。


「彼はここに来てまだ10年も経っていません。なのに彼は第三兵団の団長に就任しています。これは普通、おかしいことじゃありませんか。本来なら、兵団に所属してから最低でも10年は必要だったはずです。このことについて、まだ説明がないのですが」


 そうだ。普通、このように批判が会っておかしくない。それほど僕の団長就任があまりにもおかしいのだから。


「分かりました。なら、簡潔に言いましょう。です」


「実力、ですか」


「そうです。彼の実力は今後我々の最大戦力になるでしょう。今の時点で既になりかけているのですから」


「そんなわけないでしょう?ここにいる団長たちは皆この国の実力者。それがその若造に勝てるとでも?」


「はい、勝てますとも。何ならやってみてもいいですよ。確かギガス公爵の弟は第一兵団に所属していましたね。彼と戦わせてみましょうか?」


「いいでしょう。ただし、もし彼が負けた場合、私の弟が第三兵団の団長に就任させますがよろしいですか?」


「はい、構いませんよ。それでは行きましょうか。闘技場へ」


 こうして僕は急遽、御前試合をする事となったのだ。

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