第3話 8歳の鑑別式と色使い
8歳になった。
僕には今日、鑑別式という、楽しみだが面倒臭い、そんな人生の中で一番の行事が行われる。
正直僕はアビリティなんて何でもいい。
せめて、魔術の補助をしてくれるようなやつにして欲しい、くらいにしか思わんのだ。
今日も毎日行っている魔力値をあげる訓練をし、体力を上げるための運動をした。
今の魔力値はものすごいことになっている。
僕の想像以上に魔力値の伸びが早すぎるのだ。
これもエルフの血が混ざっているからだろうか。
何がともあれ嬉しいことだ。
そして僕は母さんと一緒に街の東側にある神殿へと足を運んだ。
神殿の周りにはたくさんの子供とその親。
今日の鑑別式の為に集まった子供たちだ。
「それじゃあ、アル。母さんは外で待ってるから、あとは1人で中に入るのよ」
「うん、わかった。それじゃあ後でね」
それから僕は神殿の中へと入っていった。
***
僕の前の人が水晶の上に手を乗せ、淡く光った後、神官が鑑定結果を告げると、ちょっとがっかりした様子を浮かべていた。
恐らく、Cランクだったんだな。
「次。来なさい」
「はい」
待つこと20分くらい。
ようやく僕の番が回ってきた。
僕は神官の側に向かう。
「それでは、この水晶に手を乗せよ」
「分かりました」
僕は言われた通り水晶の上に手を乗せた。
すると、前の人と同じ様に淡く水晶が光った。
神官が水晶を確認する。
「……お前のアビリティは【色使い】。EXランクだ。それでは戻りなさい」
「……分かりました」
・・・何これ。
***
僕はあの後、母さんと合流し、家に帰った。
そして、そのまま自分の部屋に入り、ステータスを確認した。
名前:アル・ローダス
種族:ハーフエルフ
年齢:8歳
状態:健康
生存値:1000/1000
魔力値:10000/10000
アビリティ:色使い Lv.1
スキル:・加羅?デ*$ Lv.1
・%&ー!鬆 Lv.1
・嘉<ー麼?菟 ()邉…懿
突っ込みたいところが多過ぎる。
まずはアビリティにレベル表示がされているということだ。
普通、アビリティの成長具合は感覚で分かる。レベル表示なんて普通はされないのだ。
そしてスキルの欄。
スキルは今後アビリティを使っていけば勝手に増えていく、というのが一般常識だ。でも、このアビリティは最初からおかしい。可笑しすぎて笑ってしまう。
だからスキルが増える、なんてことが本当にあるのか不安なのだ。
しかも、スキルの文字がバグってるし。最後のやつに至ってはレベルすらわからない。
本当に訳が分からない。これがEXランクのアビリティということか。
取り敢えず、明日から少しずつ検証を始めよう。
***
鑑別式の次の日からこのアビリティ、色使いについて色々検証を始めた。
まずは、魔術と関係があるかどうか。
今わかっているアビリティの約半数以上は魔術と関係がある物だ。だから、関係があるかどうかで僕がしっかりとそれを活用出来るか変わってくる。
僕は基本、魔術を中心とした戦術で常に戦っている。近接戦闘はある武器を除いて殆ど駄目だ。センスの欠片も無い。少しでも可能性があれば話は変わってきたが、そんなものは微塵も感じられなかった。でもこれは前世での話。
と言う訳で、魔術と関係があるかどうか、これは僕にとって死活問題でもある。
今のところは。
「さて、アビリティを……ってどうやって使うんだろう?」
不味い。使い方が分からない。
声に出して使うのかな?でも読み方が分からない。バグってるし。
どこに意識すればいいのだろうか?
「お?何かが身体の中で動いた感じがするぞ?」
体満遍なく、何か手がかりを掴もうと意識していたら、違和感を見つけた。
その違和感に焦点を当てて、意識してみる。
すると、何か心臓辺りから掌に何かが動いた感じがする。取り敢えず、魔術を使ってみよう。
魔術を使い慣れている僕にとっては掌の上に火球を出すことなんて、造作も無い。
「よっと。さてと、どうなるのかな〜と」
しっかりと火球を出すと、直ぐに変化が現れた。
「……え?」
驚くことに、火球から徐々に色が掌、詳しく言うと人差し指にどんどん吸われていって、遂には火球は唯の魔力の塊となってしまった。
そして火球だったものは自分の中に戻った。すると、魔力が回復した。
そして、ステータスを確認すると、アビリティの表示が少し変わっていた。
アビリティ:色使い Lv.1
所持色:赤×10 青×0 黃×0 緑×0 茶×0 紫×0 白×0 黒×0
スキル:・加羅?デ*$ Lv.1
・%&ー!鬆 Lv.1
・嘉<ー麼?菟 ()邉…懿
火球の色を吸収したからか、ステータスの表示に所持色というものが追加された。
そして、その『赤』の所の数字を見ると、僕が火球に込めた魔力の量と同じ数字が乗っていた。
でも、毎回魔術を使う時に吸収されるとなると、かなり困る。
魔術と一緒に使えないことは僕にとってかなり痛い。でも使い方がわからないからまだ良くは言えないけど。使い分けるとなるとそこに意識を向けなきゃならないので、暇な時に軽く練習しておこう。取り敢えず週一程度で。
***
さて話が変わるが、僕が平日何をしているか話そうと思う。
僕の身分は所謂平民。ザ・普通だ。
そして、この国の平民の殆どが学校に通っている。
まあそれでも6歳から12歳までの学校で、一般教養や、簡単な算数程度くらいしか習わない。13歳以降からはいくつかの進路があるんだけど。
そして僕も例に漏れずしっかりと通っている。
まあそれでも前々世同様、隠キャやってるんだけど。
そんな僕にもよく話す子はいた。
所謂幼馴染。しかも女の子。
彼女の名前はイリス。この学校に入ってから知り合った。知り合ってからはよく遊んでいる。
彼女も同じく平民。だけど、代々魔術師を出して来た家の出身らしく、平民の中でも上の身分だ。
「ねえねえ、今日は何して遊ぶ?」
今日はイリスと一緒に公園に来ている。
でも、公園で2人で遊ぶとなると限界がある。
「何しよっか?塗り絵でもする?」
「塗り絵?いいよ!」
と言う訳で、早速塗り絵を2人で公園の椅子に座ってし始めた。
それから5分。
「僕はできたよ。イリスは?」
「私、まだ出来てない…。もうちょっとで終わるから」
「そう?ちょっと見せてよ」
「え?ちょ、ちょっと待って!」
「なんでさ。別に見てもいいじゃん?」
「だ、駄目って言ったら駄目なの!」
「ふーん。まあいっか。終わったら言ってね。ちょっと集中してるから」
「また魔力値を上げる?トレーニングするの?アルのアビリティEXランクじゃなかったっけ?魔力値上げる意味ある?」
「まあこれは僕が好きでやってることだから。それに、一応に備えておくのも大事だよ」
「たとえばどんな事に備えるの?」
「魔術を使う時だよ。確かに僕のアビリティでは強力な魔術は打てないのかもしれないけど、でも全く打てないよりかはマシでしょ」
「ふーん。そうなんだ。まあ私のアビリティは賢者だったから、そんなに魔力値上げなくても強力な魔術は打てるからいいけど。でも、それ飽きない?」
「飽きないよ。さっきも言ったけど、たくさん持っておいて損はないからね」
さっきの会話の通り、イリスのアビリティはなんとAランクの『賢者』だったのだ。
この都市の今年の鑑別式ではBランク以上が例年の3倍出たらしい。
しかも、その中にはSランクの『勇者』も出たという。
しかも噂では、もう王都にある国立クラウディア学院への入学の話まで来ている、とか何とか。
横に座っているイリスにもそれが来たらしい。
「イリスは今後どうするんだ?」
「私は、王都に行くよ。学院に入って出世して、父さんと母さんに楽させるんだ」
「へえ、すごいね」
「アルはどうするの?もしよかったら、一緒に王都の学院に入らない?」
「いや、やめておくよ。単純に実力不足だし。こっちの生活の方が性に合ってる」
「アルならいけるよ!私よりも頭がいいし、魔術の腕だって先生から褒められていたじゃん!」
「それは先生にとってはすごいのかも知れないけど、王都に行ったらこのくらいの実力を持っている人はたくさんいるし、僕より頭がいい人もたくさんいるよ。それに……」
「それに?」
「……いや、なんでもない」
一瞬、王都の学院に行く想像をした瞬間、悪寒が走った。
そういえば、前世で僕はエリやガイル、そしてアリシアと何をしていたんだっけ?
……まあいっか。
「まあ、イリスにとってはかなり刺激を受けるんじゃないかな。学院に行くなら」
「なんでそんなことがわかるの?」
「勘だよ勘。なんとなく、そんな気がするんだ」
「ふぅん。…ねえ、私と離れると寂しい?」
「そりゃあ寂しいさ。遊ぶ友達がいなくなるんだもん」
「……そっか。えへへ、良かった」
「何が?」
「……なんでもない。それよりも見てよ!やっと塗り絵が終わったんだよ!上手でしょ!」
「……うん。すごく個性的だね、いいと思うよ」
その塗り絵は、元気一杯に明るい色で塗り潰されていた。
それは彼女自身の性格を表しているようで、僕はなぜかつい微笑んでしまった。
「あぁ!笑わないで!これでも頑張ったんだから!」
「いいや、笑ってないよ。すごく個性的だから驚いただけだよ」
「絶対嘘だ!」
前言撤回。すごく面白かった。
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コメントやら何やら色々下さい。
何でもいいです。
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