『リリスちゃんだってアダムくんが好きだもん!』

皆木 亮

『リリスちゃんだってアダムくんが好きだもん!』

 ある日、神様は、

 まず土からアダムくんを作ったんだって。



 でも、ひとりだけだと、かわいそうだから、

 わたし、リリスちゃんも、作ってくれて、

 アダムくんの妻にしてくれたんだ!





 神様が何を思って、

 リリスちゃんたちを作ったかは分からないけど、



 アダムくんは、とっても優しくて!



 リリスちゃん、とっても! とぉ~っても! 幸せだったんだ!





 でもね、神様は、

 リリスちゃんたちが、ふたりだけでは、かわいそうだからって、



 リリスちゃんと、アダムくんに、

 こどもを作る事ができる様にしてくれたんだ!





 もうね! リリスちゃん! はりきって!

 い~っぱい! い~っぱい!

 こどもたちを生んだんだ!





 でも、リリスちゃんが、アダムくんと生んだ、こどもたちは、

 リリスちゃんたちみたいな人間じゃなくて、

 ”せいれい”さん、っていう子たちばっかりで、





 みんな、生まれたら、

 神様のお願いで、



 地さんや、水さんや、風さんや、火さんを助ける仕事をするために、

 リリスちゃんたちの下から離れて、旅にでちゃったんだよね。



 リリスちゃん、あの時は、ホント、さみしかったなぁ…。







 でね、神様が、また変な事を言い出したんだ!



 リリスちゃんと、アダムくんから生まれるのは、

 ”せいれい”の子ばっかしだったから、



 リリスちゃんとアダムくんと同じで、

 にんげんとして、こどもが生まれて来るようにするために、



 アダムくんの肋骨のひとつから、

 にんげんのこどもを生める、イブちゃんっていう、

 新しい、アダムくんの奥さんを作るんだって言い出したんだ!






 でもね、リリスちゃん、その時、とっても喜んだの!



 アダムくんに、リリスちゃんの他に、奥さんができて、

 にんげんのこどもを、どんどん生んでもらえるなんて、



 リリスちゃんたち、もっと、も~っと、賑やかになれるね!

 って、ホント、嬉しかったんだぁ~!






 でも、いざ、イブちゃんが生まれて、

 アダムくんの新しい奥さんになったら、



 神様、ホント、良く分からなくて、

 リリスちゃんを地上に残して、



 アダムくんとイブちゃんだけを、

 エデンってとこに、連れて行ったんだ!






 ホント! 何でよ!? って、

 リリスちゃん、神様に怒ったんだ!





 そしたらね、神様が、


 アダムくんとイブちゃんから生まれるにんげんの子たちに、

 神様の自分と同じモノになれる”かのうせい”っていうのを、

 特別にプレゼントしたいから、



 あえて、アダムくんと、イブちゃんに、

 エデンっていう特別な場所に住ませて、



 そこに、あえて、知恵の実っていう、

 食べたら、色んな事が、

 い~っぱい、い~っぱい、分かる実を置いて、



 これは食べたらダメだよって、

 アダムくんとイブちゃんには言って、



 リリスちゃんの姿を、蛇に変えて、

 イブちゃんに、食べてはダメなはずの、

 その知恵の実をアダムくんと一緒に食べる様に言って、



 ふたりに、あえて、約束を破るって事を、

 悪い事をした、っていう、”けいけん”というのをあげて、



 神様に近い”そんざい”になれる”かのうせい”のある子にして、

 そのふたりから生まれる、にんげんの子たちにも、

 ”かのうせい”を上げたいって言ったんだ!







 神様がしたい事は良く分からなかったけど、

 それが、アダムくんや、イブちゃんや、

 その子たちへのプレゼントになるなら!



 って思って、リリスちゃん、その時、

 ガンバっちゃったんだよね!







 でも、ふたりが知恵の実を食べたら、

 ふたりは、何故か、

 自分たちが裸なのが恥ずかしいとか言い出したんだよね。





 え?

 リリスちゃんたち、

 昔から、ずっと裸だったじゃん?

 って。





 いつも通りなのに、ふたりとも、どうしたんだろう?

 って思ったんだけど、



 ふたりは、顔を赤らめて、

 身体の下の方を、葉っぱで隠し始めたんだ。






 で、神様が、リリスちゃんを、蛇の姿から、

 人間の姿に戻してくれて、



 リリスちゃん、ふたりにプレゼントが上げれて、

 元にも戻れた事が嬉しくて、

 アダムくんと、イブちゃんに、おもいっきり抱き着いたんだ!





 そしたらね、アダムくんも、イブちゃんも、

 もっと顔を赤らめて、

 リリスちゃんにも、身体の下の方を、

 葉っぱで隠して欲しい、



 むやみに、

 抱き着かないで欲しいって言い出したんだ!





 リリスちゃん!

 あの時、ホント、ショックで!





 何で?

 いつも通りじゃん!





 また、さんにんで仲良く、

 アダムくんのこどもたちを、

 い~っぱい、い~っぱい、作ろうよ!



 って言ったら、

 ふたりは、もっと顔を赤らめて、

 こんな、”えっちっちな子”とは付き合えない!



 とか、神様に言い出したんだ!







 え? え…? え…ッ!?

 って、リリスちゃん、ワケわかんなかったんだけど、



 アダムくんと、イブちゃんは、

 ホントに恥ずかしそうで、





 その上で、神様は、



 アダムくんたちが、

 知恵の実を食べた事で、

 恥というモノを知った、とかで、



 この、恥を知るくらい、

 頭が良くなった、にんげんは、



 神様がエデンに置いたっていう、

 命の実っていう、



 食べたら、永遠の命をもらえる実も、



 自分たちが、

 歳を取って行く事に恥じる様になって、

 いずれ食べるから、



 命の実を食べると、

 その子は、いつか、

 神様と同じ”そんざい”になるからと、



 それはとっても悪い事だから、

 と良く分からない事を言って、



 アダムくんと、イブちゃんを、

 せっかく連れて来たエデンから追放しちゃったんだ!








 え? え…? え…ッ!?



 って、

 また、リリスちゃんがワケわかんなくなってたら、





 神様が、リリスちゃんに、





 ホントはね、

 知恵の実と、命の実を食べただけでは、

 神様と同じにはなれないんだよ、と、



 でも、”罪を犯す”とか、

 ”罪を犯す危険がある”、



 っていう”けいけん”をさせて、



 もっと、神様と同じになれる”かのうせい”を、

 アダムくんと、イブちゃんに上げたかった、と、



 そして、ふたりの、こどもたちにも、

 その”かのうせい”をプレゼントしたかった、と、






 リリスちゃんは、

 イブちゃんより、おねえさんだから、



 アダムくんの事は、

 イブちゃんに任せてあげて、



 もう、ふたりには会わず、



 これからは、アダムくんとイブちゃんが、

 地上で、頑張るのを、応援してあげてね。



 って言い出したんだ!






 リリスちゃんね!

 ホント、怒ったんだ!





 詐欺だ~ッ!


 横暴だ~ッ!



 リリスちゃん、

 アダムくんとイブちゃんの為に頑張ったのに!






 もう、神様なんて、嫌いだ!



 こんな酷い事をするんだったら、

 リリスちゃん、神様の嫌いな、悪い子になるもん!



 それで、アダムくんと、また一緒に居たいもん!







 って言ったんだけど、



 そう、リリスちゃんが、怒ったら、





 リリスちゃんも、

 急に、地上に、また送られて、






 神様が、奇跡の力で、



 リリスちゃんが、

 またアダムくんに会う事ができない様にして、

 これからリリスちゃんがこどもを生むときは、

 ”せいれい”さんじゃなく、

 にんげんの子が生まれるようにするっていう、

 ”しゅくふく”をリリスちゃんに与えちゃったんだ‼






 なにこれ!?



 こんなのいらないよぉ~!






 だから、

 神様が、アダムくんと、

 また会わせてくれないなら、



 リリスちゃん!

 せめて、アダムくんとイブちゃんのこどもと会って、

 その子たちにアダムくんの代わりになってもらって、

 また、こども、作るもん!



 って言ったんだ!







 そしたら、神様、

 何にも言わず、天国に帰っちゃったんだ!






 もう、リリスちゃん、

 もっと怒っちゃって、



 いいもん!

 勝手にするもん!

 神様のイジワル!


 

 って、

 アダムくんとイブちゃんのこどもたちを探して、

 地上を巡ったんだ!










 それから、アダムくんと、イブちゃんが生んだ子たちと、

 いろいろと、”こづくり”をしたんだけど、



 ちがうんだ~!





 ”こづくり”して、こどもたちが生まれるのは、

 賑やかで良いんだけど、



 リリスちゃん!

 また、アダムくんと、”こづくり”がしたいんだ‼





 でも、

 イブちゃんの事は、うらんでないよ?





 イブちゃんは、アダムくんと同じで、

 神様に言われた通りにしただけだから!






 でも、

 ホンット、リリスちゃん!

 アダムくんとイブちゃんの子たちと、

 い~っぱい、い~っぱい、

 かぞくを作ったけど、



 また、アダムくんとイブちゃんとも、

 かぞくに戻りたいよぉ~!





 イブちゃんだけが、アダムくんの奥さんなんて、

 神様、ひどいよぉ~!





 リリスちゃんも、

 アダムくんの奥さんに戻りたいんごぉぉぉ~…‼




 って、めちゃ泣いたんだ!







 でもね、

 そうリリスちゃんが泣いてたら、



 リリスちゃんの、こどもたちが、

 リリスちゃんに言ったんだ!






 リリスお母さんが、

 アダムさんや、イブさんが居なくても、

 い~っぱい、い~っぱい、楽しくなる様に、

 い~っぱい、い~っぱい、賑やかになる様に、



 わたしたちも、

 い~っぱい、い~っぱい、

 こどもを作るね!って‼






 リリスちゃん、ホント! ホンット‼

 うれしくて、うれしくて!




 だからね!

 こどもたちに言ったんだ!




 そうだね!

 アダムくんや、イブちゃんが、

 うらやましがるくらい、



 い~っぱい、い~っぱい、

 こどもを作って、



 かぞくを作って、



 い~っぱい、い~っぱい、

 楽しくて賑やかになろうね!って‼






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 神様は、ひとり、つぶやいた。



 今年で、人間は100億人に達したね。






 アダムやリリスやイブには悪い事をしたけど。



 これだけの"かのうせい"が生まれた。






 だから、いつか、あの子たちも、

 『もっと優しい”そんざい”』になれる”かのうせい”が、

 これから、もっと生まれて行く。





 ごめんね。みんな。



 神様は、寂しがり屋でね。





 『もっと優しい”そんざい”』に、

 君たちがなれる”かのうせい”を、

 もっと増やしたいんだ。





 いつか…、

 『もっと優しい”そんざい”』が、

 世界に、いっぱいになってくれると、

 神様は嬉しいんだ…。

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『リリスちゃんだってアダムくんが好きだもん!』 皆木 亮 @minakiryou

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