精神病患者男が乙女ゲー世界に転生しました

@kuronekoinu

第1話

「おっ!仲良くなってきたぁ!」


ゲームの画面には好感度が上がった事の通知と恥ずかしそうに目を逸らす攻略対象の男性キャラが映っている

乙女ゲーの攻略をするのはこの春はれて高校生となったコミ障陰キャ野郎だ。もちろん男である。

入学式の前夜飼っていたどじょうの「チョビっぴぃー」が死んだことによる精神的苦痛による発作で入学式を休み、完全に友達を作る機会を逃してしまったのである。

俺は、メンタルが異常に弱いのだ。

とまぁ、陰キャにプラスで精神弱者の俺は退院後の1週間で学園生活を諦めた。

友達ってどう作るんだっけ・・・?


頼みの綱として妹に助けを求めた結果ゲームで精神病を治すという方法があるとか無いとか

最初はギャルゲーで精神病を治そうとしていたのだが...

序盤のゲームボイスにやられ病院送りになってしまったのだ。訳がわからないと思われるかも知れない、だが、2次元とはいえ美少女からの告白は心臓発作を起こしかねない。

この「兄エロゲ心臓発作事件」により

"女の前に男と仲良くなろう!"いう作戦に移行したのである。

つまり乙女ゲーだ。

もっと友情モノのとか無いの?っと妹に聞いたのだが「後で私もやるから〜」とのこと

まぁ、治療目的で親からゲームを買う金出ているから、どうせなら自分のやりたいゲームが入手できるようにしたかったのだろう。

こんな剣と魔法の世界の男と喋ったって現実で役にたつのか・・・?と思っていた

だんだん攻略対象の男との会話に慣れてきてストーリーの面白さがかなり伝わってきた。

「役にたつとかそんなもん気にしなくていい!俺はお前と仲良くなりたいぜ!」

感情が高まってくる。

ヒロインを守るこの男に感動したのだ。

これが愛!これが友情!

「友よ!お前の力を見せつけてやれ!」

敵に大ダメージを与えた。

「よっし!」

このゲームはスキルなどを駆使して戦うRPGゲームで、今ラストバトルが終わった。

そしてついに、ハッピーエンドになる。

「ゲームとしては、アウトだけどね」

背後から妹が呟く

「え?なんで?」

「だって乙女ゲーなのに誰ともくっ付いてないもん」

「だって男と付き合いたくないじゃん...恥ずかしいしさ...」

「妹の前でエロゲやってたやつが何言ってんのよ?」

「うッ・・・」

ごめんって、でも選んだのお前でお前もそのゲームやったらしいじゃねぇか...

「まぁ、とにかく終わったのならそのゲーム頂戴。あと新しいのも買いに行こ」

「あぁ、そうだな」

よっこらせっ、と外に出る準備をするために背伸びしながら立ち上がる。

それにしても、一緒に乙女ゲーを買いに行くなんて何とも変な関係になったものだな...

「お兄ちゃん早く!」

「ご、ごめんって...」

妹は、少し気が強いが優しい子だ

「・・・優しいな」

「そりゃあそうよ!」

何がそうなのかよく分からないが

「そうか」と返事をする

「えぇ、そうよ」

子供のようにあどけなく妹が笑う

頼りになりすぎて自分が兄である事を忘れそうになるがその笑顔を見ると、いつか頼れる兄になりたいと思う

「早く行こ!お兄ちゃん!」

その笑顔が妹の最後の笑顔だった。


買い物からの帰り道

周囲は血だらけ──

妹の髪が血に染っている

動いていない──

トラックに轢かれる刹那──

フロントガラス越しに見えたのは誰もいない運転席だった

­­──妹を庇いきれなかった

だが妹の心配をする時間は俺になかった

垂れてくる赤血の血で視界が赤く染る

コンクリートと擦れ合った顎を手で押える。

ぐちゃぐちゃになった自身の肉の感触が伝わる。

その手の間から赤血の血が垂れてくる

もうダメだ...

スッと意識を手放した。












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