砂漠の街

谷山悦治

砂漠の街

 僕がここに来たのは十年ほど前かな。いや、もう少し前だったかもしれない。どちらにしてもそこは重要じゃないから、曖昧なままでいいね。

 ここは砂漠でね。建物も何もなかったんだ。

 人はいたよ。もちろん。それも何人も。

 そんな人の中にはね、とてもみすぼらしい格好をしている人もいたし、凄く豪勢な宝石やら装飾品やらをつけてる人もいたね。ああ、ちょうど僕が今つけてるようなものだったよ。

 ん?どうやってここに来たかだって?

 それはね、気づいたらいたんだよ。君もそうだと思うけど。

 なんとなく、ここに来るきっかけみたいなものとして、いくつか思い当たる節はあるんだ。

 ただ、確定的な何かはわからないままだよ。でもね、そこは重要じゃないんだ。そう気づいたんだよ。

 そういえば、ここに来たとき、豪勢な装飾品をつけた人に話しかけたことがあったっけ。

 その人も言っていたようながするな。ここに来たきっかけは大事じゃないって。

 あ、思い出してきたよ。その人変だったんだ。

 周り見渡しても砂漠しかないのにね、それがまるで昔のことのように話すんだ。ほら、今でこそこんなに栄えたよ?でも僕が来たときはまだ周りは砂漠だったんだ。

 そこで僕は思いきって聞いてみたんだよ。ここは砂漠じゃないんですか?って。

 そしたら、えっ?まだ砂漠?って言って驚いた顔してね、その後少し考えたような間があったあと、そういうことなのかって言ったんだ。僕はなんだか怖くなって逃げちゃったよ。

 ん?まだ砂漠?

 そういうことなのか。

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砂漠の街 谷山悦治 @policemen

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