黎明を告げる鋼、風に舞う雫　前編

　この国は、人間による奴隷制度が禁じられていて、その結果として私たち自動人形《オートマータ》の技術は急速に発展した。
　自動人形《オートマータ》とは、人の替わりとなって、家事や仕事などをこなすいわば召使いのようなものである。



少女はひとり、歌う。
それが自らの存在意義だと信じて……。

丘の上にある大岩に男が腰掛け、耳を澄ましていた。
風のさざめきの中、誰かの声を聴いた気がした。
男はゆっくりと立ち上がり歩き出す。
その視線の先には小さな森の入り口があった。

少女の声は、いつか渇れ果てるのだろう。
それでも在りし日のマスターの面影を偲び、歌い続ける。

やがて、ふたりは邂逅する……。