嘘から出た幸せ

嘘から出た幸せ

　二年前の四月一日。

「エープリルフールの嘘を本気にすると、幸せになれるって知っている？」と、奴はのたまわった。

「ふーん」と、気なしに返事をすると。

「ね、だから、俺に騙されて、付き合おうっか」と、言われた。

　私は、嘘の告白を真にうけることにして、付き合うことにした。

　事あるごとに甘やかす奴に、「そんなに甘やかさないでよ」というと、「嘘だからいいんだよ」と微笑まれ。

　一年前の四月一日。

「ね、騙されて、結婚しない？」と言われた。

「うん」

　私は、プロポーズを真に受けることにして、彼と結婚した。

　幸せすぎる結婚生活だけど。

「ずっと、騙されてればいいの」と、彼は笑う。

　今年の四月一日。

　今日は、私が彼に言うの。

「私たち、親になるみたい」

　そんな、嘘から生まれた、幸せなお話。