4月1日の告白~私は何も壊したくなくて~
浅見朝志
告白
「キミのことが……好きですっ!」
春休み。
部活終わりに、彼を中庭に呼び出して告白をした。
ギュッと目をつむって、返事を待つ。
「あのな……」
彼が口を開いた。
「ゴメン、その――」
「な、なぁ~んてねっ! ウソだよ、ウソっ‼」
私は割り込むようにして、彼の口から出そうになった言葉をかき消した。
「もー……気づいてよ、今日を何月の何日だと思ってるのさ?」
「えっ……あっ‼」
彼はそこでようやく合点がいったように反応して、顔を赤らめた。
「そ、そっか……そうだよな、うん」
「そうだよぉ。もう、ホント純情だね。キミはさ」
今日は4月1日、つまりエイプリルフール。
どんな嘘を吐いても許される魔法の日だ。
「いやぁ、その、やられたわ……」
はははっと朗らかに笑って恥ずかしそうに頭を掻く彼を見て、思う。
――そういうトコがやっぱり、好き。
なんでも真に受けちゃって、可愛い反応をしてくれるキミが好きなんだ。
でも、キミにとっての私は、きっと私があなたを想うほどに特別ではないんだよね……?
だからこの日を選んだ。
告白をして、もしそれが失敗しても、それがウソだと流せるこの日を。
「じゃあ、そろそろ行こうぜ?」
「そうだね」
そうじゃなかったら、きっとこれまでのようにはもう戻れない。込み上げてくる想いに苦しめられながらも、穏やかな幸せが続くこの関係には、決して。
「おっ、あいつらもまだ校門前で待ってるみたいだ。コンビニ寄ってアイス買うって言ってたな。お前も来るだろ?」
「うん、行くよ」
ホラ、もう元通りだ。
こうやって今まで通りの日々を、これから先も過ごしていける。
校門前でたむろして待っていた同じ部活の友人たちに迎え入れられて、並んで近くのコンビニへと歩く。
「なあ、何買うの?」
さきほどまでの照れ具合が嘘のように、いつも通りの笑顔で彼が訊く。
私もいつも通りに答える。
「ボクは、レモンバーが食べたいな。売ってるかな……」
甘酸っぱいレモンの味が、無性に恋しく感じる。
並木道では、春風に吹かれて多くの桜の花が舞い散っていた。
4月1日の告白~私は何も壊したくなくて~ 浅見朝志 @super-yasai-jin
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