最終話 楽しく生きていく

「なんでついてきてくれないの!?」

「だって、そういうのって私が沢山働かなくちゃいけないんでしょ?危ない目にあったりするかもだし」


 ユイの返事に不満そうに問い詰めるイナホ。


 確かにこういう契約の流れで言えば、契約したら厄介ごとに巻き込まれるのがテンプレだ。リリカルな魔法少女しかり、どこかのバーサーカーを従えてそうな魔法少女しかり、地球外生物と契約した魔法少女しかり。


 ユイが同じようなことを疑ってしまうのも無理はない。


「ぎくっ!?……そ、そんなことないよぉ~」

「バレバレすぎないか?」


 イナホは図星を突かれて都合が悪くなったらしく、そっぽを向いて力なく言い訳した。あまりにも分かりやすかった。


 しかし、ユイが命を救われたのもまた事実。その答えは少々かわいそうな気もする。


「はぁ……しょうがない。私が救われたのは本当のことだし、感謝もしてる。ついて行ってあげてもいい」

「え、いいの!?」


 そんな俺の気持ちを慮ったのか否か、それは本人しか分からないが、イナホの様子を眺めていたユイがため息を吐いてついていくことを決めた。


 一度断られたイナホは驚いて聞き返す。


「ええ」

「やったぁ!!」


 ユイが頷くと、イナホは空中を飛び回って喜びを表現する。


「ただし、条件ある」

「なになに?何でも言ってよ!!」


 続けて言うユイの前に勢いよく飛んできて返事をするイナホ。


「私以外のここにいる皆を連れていくこと」

「それは僕は構わないというか、むしろ大歓迎だけど?」


 ユイの願いを聞いたイナホは、なんだそんなことかとでも言いたげだ。


 戦力が増えるんだからイナホとしては拒む理由はないよな。魔法少女の力じゃないとダメージを与えられないとかなら分からんでもないけど。


 仮にそんなことがあったとしてもウチのメイド達がどうにかしそうだしな。


『当然です』


 俺の思考に勝手に割り込むバレッタ。


 やはりか、ということは……。あれはわざとかな。


「せっかくだから魔法少女の可愛い姿をパパに見せて夢中にさせないとね」


 俺の思考をよそにユイが魔法少女のドレス姿でチラチラとパンチラをさせてこちらの様子を窺っている。


 無視だ無視。


「ケンゴは私の夫なんだから渡さないわよ!!」

「だから、ママと私は同一人物なんだから、パパは私とも夫婦ってこと!!」

「そんなわけないでしょ!!」


 そしてまたリンネとユイの不毛な親子喧嘩が始まる。


 俺はリンネ一筋なので、血は繋がっていなくとも親子となったユイに手を出すつもりはないし、どう考えても別人なので夫婦だという事実もない。


「はぁ……二人とも喧嘩をしてる場合じゃないだろ?」

「そうだよ!!こっちに来て大分経っちゃったから急がないと!!」


 にらみ合っている二人を宥めるとイナホが同調するように言葉を重ねる。


 俺達に合って数カ月。記憶喪失になっていたことから、こっちに来たのはもっと前の可能性がある。それだけあれば、イナホの住んでいた星が変化するには十分すぎる時間だった。


 もしかしたらすでに敵に支配されていることさえ考えられる。急ぐに越したことはない。


「仕方ないわね!!今は休戦にしておいてあげる!!」

「それはこっちの台詞だよ、ママ」


 俺達の言葉が聞いたのかお互いに捨て台詞を吐いて一応矛を収めた。


「それで、俺達は何処に向かったらいいんだ、イナホ?」

「うん。マホロウリ星って星に向かいたいんだけど……」

「まさか……ここからどの方角あるのかも分からないのか?」

「えっと……その……うん」


 イナホに指示を求めるが、なんとも歯切れが悪いので、まさかと思って聞いてみたら、そのまさかであった。


「全く……それでどうやってマホロウリ星に帰るつもりだったんだ……」

「主ならどうにかしてくれるかなって」


 なんとも他力本願だが、俺も人の事は言うことが出来ない。俺の力もほとんど他人からの借りものだからな。


 しかし、俺ではそんな星を見つけることはできないので、ここは出来る人間に丸投げだ。


「俺がどうにかできるわけないだろう。どうにかするのはバレッタだ」

「お任せください」

「できるんだ!!」


 そう思ってバレッタに振ったんだが、本当に出来るらしく、イナホが大喜びで部屋の中を飛び回った。


 俺達はメサイアのブリッジに移動し、各々が席に着席する。


「マホロウリ星を検索。完了。位置の割り出しに成功しました」


 あっさりとマホロウリ星を発見したバレッタ。どうせいつでも転移で戻ってこられるんだ。それに俺達なら案外すぐに終わるかもしれない。それなら別に挨拶も必要ないだろう。


「それじゃあ、早速、イナホの故郷を救いに行きますか!!」

「ええ!!」

「うむ!!」

「うん!!」

「どんなところかな!!」

「楽しみだね!!」

「ワクワク!!」

「新しい場所の肉、楽しみだ!!」


 俺の掛け声に対して、各々が返事をする。


「出発だ!!」

『おおー!!』


 船は宇宙の彼方に向かって発進して星の海を突き進む。


 ファンタジー世界の次は魔法少女の居る世界か。

 どんな出会いやイベントが待っているんだろうか。

 これまた楽しそうだ。


 そんな期待を胸に、俺は仲間たちとこれからもこの世界で楽しく生きていく。



 完


 

 


◼️◼️◼️


いつもお読みいただきありがとうございます。

また新作投稿しました。

こちらもよろしくお願いします!!


能無し陰陽師は魔術で無双する〜霊力ゼロの落ちこぼれ、実は元異世界最強の大賢者〜

https://kakuyomu.jp/works/16817330649374806786

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【書籍化】おっさんと超古代文明〜巻き込まれて召喚され、スキルが言語理解しかなくて追放されるも、超古代遺跡の暗号を解読して力を手にいれ、楽しく生きていく〜 ミポリオン @miporion

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