第3話 終わりの始まり(1)

─何だよ....これは....─

 自分の心の声が聞こえた気がしたんだ。



 燃える街の景色から.....四角い部屋の景色に変わった。

 部屋はペンキをぶちまけたような赤色が一面を覆っていた。

 俺は白い体をした男に担がれてエレベーターを降りていた。

 扉が開いたと同時に電機音が響き渡って思わず耳を防ぎたくなる。

 次の瞬間、俺は地面に落とされた。担いでいた腕を降ろされ、全身が地面に激突する。

「ッッ!?」

 痛みが全身を駆け巡ると同時に身体の自由を俺は手にいれた。といっても全身がケガをしているのか元から節々が痛い。思いどおりに動くことは難しい。

 

 扉の先では甲高い声が聞こえている。あの白い男から発せられる声。人間の声には到底聞こえない。別の生き物のような声。


 俺は身体を起こし先の光景に目を移す。

 


 初めて見た白い男の顔。その奥に立っている少女。少女の手に持つチェーンソー。そして、部屋一面の光景に言葉を失った。


 俺の目に写った光景は異質だった。

 白い男の腕が切れており、白い男の足元には腕から流れ落ちた血が小さな水溜まりを形成している。さらに、奥の少女は血を浴びて笑みを浮かべている。

 この光景を見るだけでも気が狂いそうだが極めつけは白い男の姿、形、顔、全てが俺の脳では処理出来ず、唖然とした。

 

 白い男は身長約2メートル前後、体は全身が白く覆われている。後ろ姿は人間と遜色がない。違う点は顔だけだった。

 白い男 男と呼べるかも分からないソイツの顔は─

   ─口しかそんざいしていなかった。


 首からそのまま口が開いたような縦長の形状で、目も鼻も見た感じ存在していない。人の顔など一口で食べてしまいそうな大きな口、口そのものが顔になっている。


 あれは、人と呼べるのか。見たこともない生き物と少女が戦っている姿は、俺には理解が全く追い付かなかった。

 

 動くことも出来ず....ただ目の前の光景が映画のフィルムのように流れていく....

 止まることも戻ることもない。時間が ただ....ただ....俺の目に焼き付いてくる。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

異形のモノたち やおき @Nao2

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ