残念な未来

夏伐

残念な未来


俺は放課後、毎日図書室へ通っている。


それは下心があっての事だった。


高校デビューに失敗し、友達と呼べるほど仲の良い人間はいなかった。

二人組を作って、と言われればハブられることはないが、休み時間に話す人間はない。


虚無の高校生活。


そんなんだから休み時間はラノベに費やしているし、何もしないでもクラスで真ん中くらいの成績。国語だけやたら成績が良い。


女子にキモがられないだけマシである。



そんな俺の高校生活の唯一の花。



俺は本棚の影から気づかれないように窓際の席に座る少女に目を向けた。




長い髪、つり目気味の美人だ。なんていうか猫っぽい。




美人なだけなら彼女にこんなに心惹かれなかっただろう。


暇つぶしと割り切って読んでいるラノベでも面白いものはあるし、好きな作者がいる。


ある日、彼女が読んでいた本の表紙がチラリと見え、それに見覚えがあった。


俺が丁度読んでいたシリーズの最新作。

別の日にも彼女は同じ作家の別シリーズを読んでいた。


そのまた別の日には俺も好きな別の作家の本。


趣味が合うな、と思って見たらめちゃくちゃ綺麗な女の子だった。


基本的に人と目が合わないように斜め下を見ているし、俺みたいな友達がいない奴ってのは楽しそうにしていると『何故楽しそうなのか』とうざ絡みされるのがオチだからな。持っている小物とか服装しか見てなかった。



以来、放課後は彼女を見ることが日課である。




そうして友達がいないまま、遠くから美人を眺める毎日を続け、そのまま卒業してしまった。

結局、俺は物語の主人公にはなれない小心者だったという証明だった。



卒業後、就職も不安だし大学に行く金も学もやる気もない。



そうしてマイナスな前向き思考の末辿り着いた地方都市のアニメ系専門学校で、彼女と再会した。

向こうは俺のことなど眼中になかったようで気づいたのは俺だけだった。


再度訪れた機会、モブから友達にクラスチェンジすることはできるだろうか。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

残念な未来 夏伐 @brs83875an

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ