劉裕94 洛陽奪還詔勅1 

416 年、劉裕りゅうゆう洛陽らくようを陥落。

しん代々の皇帝の陵墓を修復しました。

これは東晋史上でも桓温かんおんしか

成し遂げられなかった快挙。

そこで安帝あんてい、劉裕に詔勅を下します。


参考

https://kakuyomu.jp/works/1177354054888050025/episodes/1177354054888912063



夫嵩岱配極 則乾道增輝

藩嶽作屏 則帝王成務

 この晋に天命が下って後、

 諸侯が各地を守ることで、

 初めて王は務めを成し遂げた。


是以

夏殷資昆彭之伯

有周倚齊晉之輔

 の時代には昆吾こんごが、

 いんの時代には彭祖ほうそ

 地方を守っていたし、

 東周とうしゅう王朝が

 斉桓公せいかんこう晋文公しんぶんこうに守られていたのも、

 これらのことを裏付けている。


鑒諸前典 儀刑萬代

翼治扶危 靡不由此

 これら前例を踏まえ、

 また長く後世を導くためにも、

 治世を助け、危地を助けてくれる者は

 欠くべからざる存在である、と言えよう。


太尉公

命世天縱 齊聖廣淵

明燭四方 道光宇宙

 太尉、劉裕殿。

 そなたは天意に導かれ、

 その類い希なる指導力で、

 天下に聖なる光をもたらし、

 よく照らし出して下さった。


爰自

□□初迪 則投懃王國

妖蝥孔熾 則功存社稷

 微細なる立場より立ち上がられ、

 この国に身を投じ、

 邪悪なる妖賊を焼き払い、

 国家の命運を保たれた。


固以四維是荷 萬邦攸賴者矣

 これによりお国を守る任が

 そなたの肩に掛かり、

 国内の誰もが

 そなたを頼るようになった。


暨桓玄僭逆 傾蕩四海

公深秉大節 靈武霆震

弘濟朕躬 再造王室

 桓玄かんげんが簒奪の逆をなし、

 天下を乱したときも、

 公は大義を掲げ、その霊武にて

 稲妻のごとく馳せ来たられ、

 朕の身を救い出し、

 晋室を再興してくれた。


每惟勳德 銘于厥心

北清海岱 南夷百越

荊雍稽服 庸岷順軌

剋黜方難 式遏寇虐

 公の功績、威徳を思う度、

 我が心は感動に満たされる。

 北には斉の地に至る海岸線、

 併せて泰山たいざんを奪還され、

 南には蛮族を平定、

 西のかた荊州けいしゅう雍州ようしゅうの民も

 また公に敬服の心を抱き、

 漢中かんちゅう庸山ようざん周囲の民、

 益州えきしゅう岷江みんこう周辺の民もまた、

 公に従った。

 地方に起こる困難も平らげられ、

 押し寄せる外敵をも退けられた。


及阿衡王猷 班序內外

仰興絕風 傍嗣逸業

 この晋という国の戦略をサポートし、

 また国内の秩序を正したること、

 まさに仰ぎ見るべき、

 空前絶後の功と言えよう。


秉禮以整俗 遵王以垂訓

聲教遠被 無思不洽

 そして礼節でもって世俗をも正し、

 王の心の元、世に良き教訓をもたらした。

 そなたの指導は国内隅々に行き渡ろう。

 浸透せぬことなどあり得まい。




十月,眾軍至洛陽,圍金墉。泓弟偽平南將軍洸請降,送于京師。修復晉五陵,置守衞天子詔曰:


夫嵩、岱配極,則乾道增輝,藩嶽作屏,則帝王成務。是以夏、殷資昆、彭之伯,有周倚齊、晉之輔。鑒諸前典,儀刑萬代,翼治扶危,靡不由此。太尉公命世天縱,齊聖廣淵,明燭四方,道光宇宙。爰自□□初迪,則投懃王國,妖蝥孔熾,則功存社稷。固以四維是荷,萬邦攸賴者矣。暨桓玄僭逆,傾蕩四海,公深秉大節,靈武霆震,弘濟朕躬,再造王室。每惟勳德,銘于厥心,遂北清海、岱,南夷百越,荊、雍稽服,庸、岷順軌,剋黜方難,式遏寇虐。及阿衡王猷,班序內外,仰興絕風,傍嗣逸業。秉禮以整俗,遵王以垂訓,聲教遠被,無思不洽。


(宋書2-27_賞誉)




大雑把に言えば「昔から良き王には良き臣下がいたものだ、そう公のような!」的なお話という感じですね。なお夏と殷で挙げている人物は、それぞれの時代に領土を下賜された人物でその文字が含まれてる人、で探し出してきました。合ってるかどうかは知らん。言うて三代のことなんてそれこそもう今の我々と大して史料環境変わんなかったんでしょうけどね。下手すりゃ春秋の段階でもう似たようなもんだったりすんじゃない? 残ってるだけ御の字、って言うべきなんでしょうけど。


「□□初迪」部分に入れた言葉はてきとうです。まーこんな辺りでしょという山勘。さほど激しくは間違ってないとは思いますが、あえて言えば「お国からはやや距離が離れている立場の者でありながら」的なニュアンスの入る言葉なんでしょう。

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