第4話

「行きましょうとは、死後の世界へ、ですか?」


「そうです。長引かせて、家族に迷惑をかけてもね。病気なんでしょ?」


「はい。人間の世界では、ガンというそうですね」


「では、どうせ無理です。僕は、助かりません。家族の負担が、少ないほうが、ありがたいです」


「あなたは、良い人ですね。あちらの世界も良いところだと聞いています。もっとも実は私行った事ありません。案内するだけです」


「いつでも、お花見を出来る暖かいところならよいのですが」


「さあ、そうかもしれません」


 こたえた、死神のスマホが、鳴った。


 誰かと受け答えをしていた死神が、僕の方を向いた。


「残念ながら、いや、おめでとうございますかな。永遠のお花見は、今回は、見送りになりました。あなたは、末期ガンから、奇跡の生還者にります。あなたは、とても運が良い」


「そうですか。もう一度妻に会えますか。子供たちの顔も見れますか。うれしいですね」


「将来あなたをもう一度迎えに来るときまで、知り合いに頼んで、桜の咲きみだれる場所を調べておきます。あなたを是非その場所にお送りしますよ」


「それは、ありがたい。楽しみだな」


「では、その時まで、さようなら」


 僕は、病院のベッドで、目が覚めた。窓の外には、桜が咲いていた。


 奇跡的にガンが、消えていっているという医者の話しに、妻と子供たちは、たいへん喜んでいた。


 僕も嬉しかったが、何か、大切な事を

忘れている感覚が、しばらく続いた。


 ガンが、完全になくなり、退院する頃には、そんな感覚も忘れてしまった。


 あれから一年が経ち、再び桜が咲く頃。通勤途中に、品の良さそうな紳士に、話しかけられた。


「喜んでください。あちらの世界の桜の園の場所を仲間に教えてもらいました」


 振り返ると、紳士の姿は、ゆっくりと消えていった。





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通勤電車で、死神と仲良くなった。 @ramia294

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