インタビュー

月夜桜

インタビュー

「ツキヨミ先生入ります!」


 スタッフに案内されて、僕はスタジオ内の椅子へと座る。

 机を挟んだ僕の前には、インタビュアの女性が椅子に座っている。


「それでは、ツキヨミ先生、初めてもよろしいでしょうか?」

「ええ、どうぞ」

「では、自己紹介から。私は、KF文庫、月刊サイツー、編集部の吉川と申します。本日はお忙しい中、ありがとうございます。そして、よろしくお願いいたします」

「いえいえ、こちらこそ、よろしくお願いします」


 こうして、僕のインタビューが始まった。

 月刊サイツーは、僕が現在出版契約を交わしているKF文庫が手掛けているインタビュー雑誌だ。その主な内容は、ラノベ作家やイラストレーターへのインタビュー記事。

 つまり、今月は僕の番というわけだ。


「ツキヨミ先生、アニメ化おめでとうございます。今のお気持ちをどうぞ」

「うーん。そうですねぇ。取り敢えず、僕にとって、アニメ化はゴールじゃないんです。いえ、見方を変えればある意味のゴールではあるんですけど」

「それは、どういう意味でしょうか?」

「んー、と言うのも、僕はWeb小説時代からファンの皆さんに助けられてきました。今、イラストを描いてくださっているハルミヤ先生も元々は僕のファンだったんです。初めてファンアートをくれたのもあの人でしたね。なので──いや、何が〝なので〟なのかはよく分かりませんが、僕の目標は、ファンの皆さんに楽しんで貰うことです。そこを考えれば、アニメ化はある意味でのゴールなのではと思っています」

「では、そんなアニメで気を付けたいこと、また拘りたいことはありますか?」


 ある程度の情報公開はされてるから……。


「そうですね。もう既に、声優さんの名前は公開されていると思うのですが、実は主人公以外、全てオーディションを行っています。それこそ、村人Aを含めて全てです。なるべく、僕のイメージする──そして、ファンの皆さんがイメージする声に近いと思う声優さんを選ばせてもらいました。って、ここまで言ってしまったんですけど、長谷川さん、公開して大丈夫な情報ですか?」


 担当さんが頷く。


「大丈夫だそうです」

「担当編集さんも大変そうですね。次は──先程お話に出てきたイラストレーターのハルミヤ先生との出会いはどんな感じでしたか?」

「そうですね──」


 こうして、次々される質問に答えていく。


「では、最後の質問です。先程、ファンの方に楽しんでもらうことが目標というお話でしたが、次に目指すゴールはありますか?」

「そうですね。やはり、完結させることでしょうか? 完結させないとどんなに面白くても意味がありませんからね。その上でまた新しい作品を出して行きたいです」

「ありがとうございます」

「ありがとうございます」

「それでは最後に、写真をお願いします」


 照明器具が設置されていき、あっという間に撮影の準備が終わる。

 大概のラノベ作家は、基本的に顔出しをしないけど、僕はあまりそういうことを気にしないからこの取材を受けることにした。

 というのも、何度も取材とか別のメディアミックス企画で顔出しをしてるからね。


「はい、ツキヨミさん、話しているような仕草をお願いできますか?」

「わかりました。こうでいいですか?」

「はいはい! そうです! そのまま少し止まっていてくださいね」


 そう言いながらカメラマンさんがカシャカシャと連射する。

 ああ、そうだ。まだ、一つ、言っていなかったゴールがあったね。

 それは──




 ──僕のゴールは、皆さんの笑顔を見ることですよ♪

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インタビュー 月夜桜 @sakura_tuskiyo

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