第14話 サムライは土地政策によって登場した!?

墾田永年私財法こんでんえいねんしざいほうからサムライが生まれた!?】


 以前にもお話したように、平安時代は国風文化こくふうぶんか(日本っぽい文化)が進み、『竹取物語』などの文学作品が生まれした。

 

 もう少し時代が進むと清少納言せいしょうなごんが『枕草子まくらのそうし』、紫式部むらさきしぶが『源氏物語げんじものがたり』を執筆し、小野小町おののこまちという平安時代を代表する女性歌人も現れます。


 このように有名な女性の作家が活躍した時代ですね。


 平安貴族によって日本のカルチャーが育ち始めるている一方で、雄々しいサムライも産声をあげていました。


 きっかけは墾田永年私財法です。


「あれれー? 墾田永年私財法って土地に関する法律だよね。サムライって関係あるの?」と思いそうですが、これが関係あるんですよ。


 まずは、土地に関する法律をおさらいしましょう。


 大化の改新の後、中大兄皇子によって『公地公民こうちこうみん』と『班田収授法はんでんしゅうじゅのほう』が制定されました。


『公地公民』=「土地は国のものだよ」

『班田収授法』=「土地を貸すから税金払ってね」というものでした。


 しかし、土地を手放して逃げ出す人が続出したので、上手くいきませんでした。


 そして長屋王が『三世一身さんぜいっしんの法』を出します。

 これは「孫の代までなら、税金はタダですよ」という“土地の無料キャンペーン”でした。


 これも無料期間が終わると逃げ出す孫が続出して、結局失敗しました。そして……


「税金徴収すると皆逃げて、土地が荒れてしまう! もう私有地にしていいよ!」

 という事で土地の私有地化を認める、墾田永年私財法が奈良時代に制定されます。


 ちなみに、この法律を作ったのは、あの仏教大好き聖武天皇です。


つまり墾田永年私財法は公地公民の失敗であり、朝廷による土地管理の挫折だったのです。


 土地の私有地化が国によって認められた事によって、お金を持ってる貴族や、社寺が土地の買い占め始めます。


 現代の転ヤーの買い占めに通じるところがありますねぇw


 転ヤーは冗談ですが、貴族や社寺が持っている私有地の事を荘園しょうえんと言います。この自分の荘園を守るために、お坊さんや貴族は武装するようになります。


 体が大きなお坊さんが白い布を顔に巻いて、薙刀なぎなたや槍を持っている絵を見た事がある人もいるのではないのでしょうか。

 

 これはサムライではありませんが、僧兵と言って墾田永年私財法によって登場した、武装集団の一つです。


 貴族も自分の荘園を守るために武器を持ち、やがて武装グループを作るようになりました。

 そして武装グループは皇族の血を引く人物をリーダーにして結束力を高めいきます。


 そしてこの、“皇族の血を引くリーダー”というのが、有名な『平家へいけ』、『源家みなもとけ』だったのです。

 武家政権である鎌倉時代が、少しだけ見えてきましたね。


 荘園を守るガードマンとして登場した武士達ですが、次第に朝廷貴族の身辺警護に使われるようになります。


 そして武士は『さぶらう者』と呼ばれるようになります。


『さぶらう』というのは『身分の高い人にお仕えする』という意味があります。つまりサラリーマンみたいなものですねw

 

 この『さぶらう者』が変化して『さむらい』という言葉が生まれるのです。

 


【平将門の乱】


 平安貴族のガードマンとして登場したサムライですが、最初は身分が低く、番犬程度にしか思われていませんでした。

 平安貴族達はサムライを舐めていたんですね。

 しかし、朝廷を激しく動揺させる大きな事件が、サムライによって発生します。


 発端は京都から遠く離れた関東です。下総国しもふさこく(千葉県)に、平将門という男がいました。

 

 将門のお父さんは、国司(現代の県知事みたいなものですね)をしていたので、家柄のいい人物だったのです。

 

 そんな将門は京都に出て、仕事をしている最中にお父さんが亡くなりました。なので、故郷に戻る事になりました。

 

 将門が千葉に戻ると、大変な事になっていました。


 なんと!  おじさんには国を奪われ、おじさんの息子には恋人をとられていたのです。


将門「てめーら! よくも国と女を奪ったな! 許さん!」


 まさかのNTR展開にぶちギレた将門は、おじさん一家と戦います。


 一方、おじさん一家は手を組んで将門を迎え撃とうとしますが……


おじさん「や、やべー! 将門強ぇぇぇぇぇぇ ((( ;゚Д゚))) 」


 おじさん一家は将門の猛攻に劣勢となりました。そして……


将門「これは、国を奪われた親父の分だ! これも親父の分! これも親父の分! これも、これも、これも、親父の分だぁぁぁぁぁ!」


おじさん「ほぎゃああああああ!」


 おじさんは将門にやられてしまいます。


 将門の強さを目の当たりにした、息子は……


息子「朝廷、大変です。将門が暴れてます! 捕まえてください」 


 こうして、朝廷に捕らえられた将門ですが、すぐに出て千葉に戻ります。


将門「アイルビーバック」


息子「あいつ、もう戻ってきたのか……くっそー、やっつけてやる!」


 そして将門と息子による、第2ラウンド開始のゴングがなるのですが……


将門「くらえ、俺の奥義! 将門怒りの鉄拳パンチ!」


息子「うわあああああ! やられたー!」

 

 将門が大勝利をおさめます。


 そんな連戦連勝っぷりの将門を見た、関東の武士達は……


武士A「将門は強くてカッコいいよね!」


武士B「俺ファンになっちゃった」


武士C「将門さんのTwitter、フォローしよ」


 こんな風に関東で将門人気が高まっていきます。



【関東に独立国家を造ろうとした】


 関東でローカル人気を集めていた将門。そんなある日、藤原玄明ふじわらのはるあきという男が、将門のところに逃げ込んできました。


玄明「将門さん、助けてー! 税金を払わない代わりに、貧しい人にお米を分けていたら捕まりそうになっちゃった!」


将門「なに!? それなら、俺がかくまってやろう!」


 実はこの時、地方の政治は荒れていました。

 朝廷が派遣してくる国司(県知事みたいな人)は、横暴な人ばかりで、重税や厳しい労働を民衆に負わせていて、ブラック企業もびっくりするくらい酷い状況でした。


 その為、多くの人が苦しみ、朝廷に不満を抱いていたのです。


 玄明を助けた将門のところに、常陸国ひたちこく(茨城県)の国司がやってきます。


国司「ここに玄明って男が来ただろ! 差し出せ!」


将門「だが断るッ!」


国司「私たちに歯向かうと言うのか!」


将門「黙れ! 重税で多くの人を苦しめているお前達が気にくわないんだ! 将門パンチ!」


国司「ぎゃあああああああ! やられたー」


 こうして国司を倒した将門は、常陸国を奪います。

 一人の男が茨城県を奪うなんて、現代からすればとんでもない事件ですね。


 常陸国との戦いにかった将門は更に勢いをつけました。


武士A「将門さん! 俺も加勢するっす!」


武士B「いやあ、将門さん。スカッとしましたよ!」


武士C「これからは、将門さんの時代ですよ。俺もついていきます!」


 こんな感じで、朝廷に不満を抱いていた武士がどんどん加勢していき……


将門「よっしゃ! お前ら、俺についてこい! 行くぞおおおお! おりゃああああああ!」


 勢いをつけた将門はどんどん攻めていき、朝廷から領土を奪っていきます。

 旧国名だとピンとこないので、現代の県名で言うと、千葉、東京、神奈川など関東の主要な地区を、将門は武力で手に入れたのです。


 そして将門は……


将門「朝廷には、もう従わない! 俺がこの関東に独立国家をつくって、新たな天皇になる!」


 こう宣言したのです。


民衆A「将門様ー! いや、これからは新天皇の時代です!」


民衆B「私たちで大和朝廷に負けない、立派な国を造りましょう!」


 このように関東では大きな将門ブームが、到来していたのです。




 一方朝廷では……


天皇「なに!? 将門が関東に独立国家を造ろうとしてるだって! そんな事は許さん!」

 

 天皇は大激怒。


天皇「あのやろう、呪い殺してやる!」


 天皇は呪術○戦でも読んでいたのか、まず呪いました。やっぱり昔の人はスピリチュアル大好きなんですね。


 勿論、効果はイマイチで将門の勢いを止める事は出来ませんでした。


天皇「将門を倒した者は、無条件で貴族にする!」


 この通達に便乗した者が将門討伐に乗り出しました。

 

 そして将門ですが、戦っているの最中、流れ矢が額に当たって、あっさり死んでしまいました。


 こうして将門が起こしたクーデター『平将門の乱』は終わります。


 たまたま亡くなってしまいましたが、将門はメチャクチャ強く、多くの人を引っ張っていく統率力と、カリスマ性を持つ人物でした。

 もし、勢いが止まらず将門軍が都に攻め混んでいたら、神武天皇から続いていた天皇家の家系は途絶え、日本史はもっと違うものになっていたのかもしれません。


 しかし、『天皇、貴族、仏教』の勢力争いの図は、『天皇、貴族、武士』に変わっていました。

 平将門の乱はこの変化を露にした争いでもあります。


 さて、将門と言えば『怨霊伝説』も有名ですね。これに関しては、日本史から外れるので割愛させていただきますが、面白いエピソードでもあります。

 

 怨霊伝説はこちらに書いているのでよかったら読んでみてください。見識がもっと広がります!

https://kakuyomu.jp/works/1177354054922097870/episodes/16816452219319684661

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