第7話 秘密の特訓

「……と言われてもなぁ、超能力が使えるってのは基本先天性のものでな?後天的に誰でも練習すればできるようになるってものじゃないだ」


「超能力を使う適性みたいなのがあるってことですか?」


「あぁ、その認識で間違えはない。……あんたの場合適性がかなり低い。まぁ、大体の一般人がそうなんだがスプーン曲げがいいところかな」


テレポート使いの海斗を瞬殺した後、大橋さんとの帰り道でこう言われた。

『今日はこんな雑魚で助かってるが、私の周りにいるってことは今後も逆恨み持ったヤツがくるんだ。もちろん、私が近くにいれば助けてやれるがそうじゃない時もきっとある。だから自衛できる何かを持っておけ』


その事を話すと男は私に右手を出すように言った。

私がその指示通りに右手を出すと、手の甲に指の腹で何かを描き始めた。


「……これでいいか」


「えっ、今のなんですか!?流石に女子高生の手で遊ぶ男性はやばいと思うんですが」


「いや、違うからな!?いいか?その間違った解釈を大橋さんに絶対言うなよ?な!?」


「分かりました……でもさっきのは一体なんです?」


「これが俺の超能力だ。超能力を分け与える『シェア』。とは言っても分け与えられる強さは限定されるし、使いこなす練習もいる。大橋さんが言ってた自衛できる何かってこれかもしれないな、まだ俺は彼女に見せたことが一度もないはずなのに……どうやって知ったんだ、俺の能力。ともかく、練習はきついと思うが……やるか?」


「やります!」


迷いなくそう宣言した。

ただ今日は遅いからまた今度にしようと言われた。


中間テストの勉強会では大橋さんは必死に勉強してくれた。

必死に私についてきてくれた。だから次は私の番。そしたらもっと大橋さんと近くに居られるから。


☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆


「一体何なんだあいつは……打ち上げも急に帰っちまうし。帰りに最近駅前にできた防犯グッズ専門店に一緒に寄って、この前言ってた自衛できるものを選ぼうと思ってたんだけどな……まあ、いっか。また今度こっちから誘ってみるかな」


夕焼け空に浮かぶ一番星を眺めながら、後ろ手でバッグをもって、彼女は久しぶりの静かな一人の帰路に着いた。今までに感じたことのない、胸にぽっかりと穴が開いてしまったかのような喪失感を抱きながら。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

大橋さんはいつも怒ってる 赤たこ @akatako

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ