独英戦の最前線という極限状況下で、主人公の心情が、距離を以って表現されている点が興味深い。主人公は、故郷からも、友軍からも、さらには敵軍からも“離れた”存在として描かれている。が、ある日、地獄のような総攻撃の中で――酸鼻を極める前線の残酷さの中で、一遍の人間性が垣間見えた瞬間、カタルシスが開花する。本物の感動を望む方にお勧めしたい一作。