第48話【時雨と五月雨】
ーーーーーーーーーその日の夜遅くーーーーー
【
「・・・
屋根の上を見ると、瓦に腰をかけた
【
「こんな時間に、子供一人で出歩くのは危ない・・・。」
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「・・・にぃちゃん。・・・俺はもう抜け忍だ。
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「・・・そうだな。お前も、この里に残るっていうなら、お前の頼み、聞いてやるぞ。」
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「・・・でも、それじゃあ・・・」
すると時雨は里を見渡すように遠くを見る。
【
「・・・ワタシは、この東の里を護る者。・・・この命尽きるまで、この里を護り続ける。」
【
「えっ!?」
何を言っているのだろうと、思った。しかし時雨は優しい口調で続ける。
【
「この里の人々は、全員、ワタシにとって
【
「にぃちゃ・・・。ありがとう・・・。うぅ・・・。うう・・・。」
【
「もう、夜も遅い。
【
「うん・・・。」
いつかの正月の時に
・・・。巻物を開けば、あの時と同じように
読み書きに数の数え方、そして、東の里にある寺子屋では教えてくれないような、今の日の本でのまつりごとや、各地の方言など、忍びとした生きていくのに十分な教養を教えてくれた。
そんな知識が豊富な師匠が、今は使われていない昔の文字で書かれているからって、巻物の内容が分からないはずがなかった・・・。
そして、その師から教えを受けた今、その弟子もまた、巻物の内容か分からないはずがなかった・・・。
・・・・・・・・・・・・・・・。
後ろに誰かいる気配がする・・・。そして、その人は低くそして揺るぎない真のある声で問いかけてきた。
【
「・・・あいつに・・・聞いたのか?」
紛れもない父親の声だった。
【
「・・・いいえ。師匠は、ワタシに何も言っていない・・・。ワタシが自分で気づいたんだよ・・・。父上・・・。」
【
「そうか・・・。」
長い沈黙がその場に落ちる・・・。今日の風は、いつもよりも冷たく感じた・・・。あぁ・・・。そろそろ梅雨がやってくるな・・・と
【
「俺を、恨むか?・・・
低くいて、そして芯に響くような声で問いかけるその声は、威厳に溢れた力強い声だった・・・。
家族でいる時も、里の者と話す時も、誰と話す時も、この人は、威厳と自信にあふれた声で人々を励まし、導きこの里を導いてきた。
【
「父上・・・。兄上は、兄上ですよ・・・。体の弱い弟をよく看病してくれる、頼りになる優しい・・・ワタシのたった一人の兄上だ・・・。それに、先に生まれた方が、兄となるのは、普通でしょう?」
深刻な顔をしているだろうか?それとも、いつものように厳しい表情をしているのだろうか・・・?
しかし、振り向いた時に目に飛びこんで来たのは、父親の顔では無かった・・・。
飛びこんできたのは、大きな、大きな、一国の長の背中だった・・・。
そう・・・。この人はそういう人だった・・・。振り向かない・・・この人は、自分がした選択に対して、決して後悔などしない人だった。
苦しみも悲しみ、たった一人でその背中に背負い、たった一人で
きっとこの人は、今までもそして、これからも、この一切の迷いのない眼で真っ直ぐに里の未来を見ていくのだろう。
そうだ・・・。
自分はこの背中を見て、育った。
そして、思ったのだ。いつかは・・・。
自分も父のような・・・
【
「兄上は、きっと・・・
そう言うと、
竜の力を封印して、
だから、もう・・・。
朝日が登って行くのを見ながら、
時雨の里 有馬波瑠海《ありまはるか》 @ArimaHaruka
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