第47話【・・・髪・・・】
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「忍術にもそう、沢山種類がある・・・。
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「
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「任務ですか、、。」
時雨が聞くと泡沫は頷く。どうやらついさっき、
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「任務日は、明後日。今日明日でしっかり、支度しておけ。悪いが、俺は少し用事がある。そして、ネネ、ホタルには違う任務が入っていて、同行は出来ないが・・・大丈夫だな?」
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「どんな任務なんだ?」
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「ある城に、毎夜毎夜、何者かが忍びこんでいるから、捕まえて欲しいと、その城の城主からの依頼だ。」
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「忍びこんでる?」
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「あぁ。毎晩一つずつ部屋が荒らされているそうだ。しかし、荒らされているのにも関わらず、何もとられていない。それに、物音がしてすぐにその部屋に行っても誰もいないんだそうだ。」
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「・・・状況からして、忍。人が来て即座に雲隠れ出来るんだから、よほどの腕を持っているように思えるけど・・・。」
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「本当に凄腕だったら、部屋を荒らした形跡や、ましてや音を立てて侵入したことを悟られるようなヘマはしないだろう?」
時雨は静かに頷いた。
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「そいつの目的は、なんなんだろうな?」
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「さぁな。まぁーとりあえず、明後日の任務が終わり次第、お前達は、また、山に戻って修行の続きだ。話はこれで終わりだ。」
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「
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「にぃちゃん、オレ・・・。」
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「カァー!!!カァー!!!」
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「ダメだ。
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「にぃちゃん?
すると、時雨は頭をかく。
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「・・・あぁ。実は、生まれつき動物の言葉が分かるんだよ。今は、
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「カァー!!!!」
小波は激しく鳴いた。
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「いやいや、最近は、お前にはの
そう言って、時雨は
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「カァー。」
小波は、ふてくされたように鳴いた。すると・・・
【ホタル】
「ふふ、
【
「ん?うーん・・・。しぶしぶかな・・・。」
時雨は苦笑いをする。
【ホタル】
「そっかぁ。・・・ふふ。あぁ・・・。
ホタルがそう言うと、
【
「あ、う、うん。分かった・・・。」
ホタルは、
【ホタル】
「・・・もう、熱もすっかり下がったし、片付けちゃうね。」
ホタルは、桶の中にある自分の顔を見た。そこには、まだまだあどけなさが残るオカッパの娘がいた。
ある時、村の女の子達が
いつか、自分はこの人の双子の兄である
いつか、消えると思っていたこの気持ちは、あの日・・・
あの日からいくつもの季節をまたいで、何度も蛍を見て気づけばもう13才・・・。
もう、この思いをそろそろ断ち切らなければと思う・・・。でも、何故だろう・・・。こんなにも、こんなにも、この人への気持ちを殺すことが辛いなんて・・・。
そんなことを考えていると不意に
【
「・・・ホタル。」
【ホタル】
「は、はい。」
【
「ホタル、ちょっと頭こっちに向けて。」
【ホタル】
「えっ!?」
ホタルは、驚いて
恐る恐る桶を覗きこむと、水面に写る自分の左前髪の上辺りに美しい桜の髪飾りがついていた。驚いて、
【
「・・・すまない。ホタル・・・。ワタシが不甲斐ないばかりに、ホタルが姫の影武者をしたと聞いた。本当にすまない。危ない目に合わせてしまった。ホタルに似合うように作ったつもりだったんだせど、どうだろうか・・・。」
こういう時、一体なんて言ったら良いんだっけ・・・?頭が回らない・・・。恥ずかしくてうつむいてしまう。
【ホタル】
「・・・い、良いの。良いの。あれは、皆で相談してそれが一番良い方法だと思ったし、困った時はお互い様でしょう・・・?そ、それに、
ホタルは、心のざわめきを押さえきれず、顔を上げることができない。
【ホタル】
「あ、えっと、私、桶、片付けて来ちゃうね。」
ホタルは、慌てたように、
【
「・・・・・・。
まぁ・・・ホタルのご飯が美味しいのはいつものことで、誰に対して作っても、暖かくて優しい味がする。あれは
【
「カァー!!!!」
【
「・・・・・・。」
【
「カァー!!!!」
【
「・・・な、そんなわけないだろう?・・・・。」
時雨は、
夜遅く・・・。私は、目が覚め、
そして、桶の中に張った水を覗きこんでいる・・・。何をしているのだろう?と、思った時。その桶を頭の上まで持ち上げて、中に入った液体を頭にかけた・・・。突然のことに私は、驚いた。でも、その液体を被った
と、思ったのもつかの間、我に返って思う。
見てはいけないものを見てしまったと・・・。こんな夜中に誰にも気づかれないように墨の入った水を頭からかぶっていた・・・。
昔から、時雨様は人とは違う自分の髪の色で悩んでいた。そして、今回の件で
ある時、山賊の一人が時雨様の容姿を見て、化け物だと言ったことがあった。あの時、その場にいた私も氷雨様もそんなことはないと、山賊の言ったことを否定した。けれど、あの出来事以降、こうして時々夜中に桶に張った水に映る自分の姿を見て、悲しそうにしている時雨様を何度か見てきた・・・。しかし、今回は見ているだけではなかった・・・。
気づかれないうち、引き返そうとした思った。しかし、引き返えそうと足を後ろに出した時、小枝を踏んで、音が鳴ってしまった。
【
「ホタル・・・?」
月の光が二人を照らす・・・。
ホタルは、手拭いを持ってきて時雨に渡す。
【ホタル】
「・・・こんな夜遅くに、水浴びなんてしたら、また風邪引いちゃうわよ・・・。」
私がそう言うと、時雨様は申しわけなさそうに言う。
【
「いつも、すまないね。ホタル・・・。」
時雨は、その手拭いで髪についた墨を拭いていく・・・。
【
「心配ないよ・・・。ホタル・・・。ちょっと、黒髪になった自分を見てみたかっただけなんだ・・・。」
【ホタル】
「黒髪にしちゃうなんて、もったいないわ・・・。だって、こんなに綺麗な髪してるのに・・・。」
ハハハッと笑う時雨は、いつものように優しく笑っている。でも・・・。きっと、時雨様は不安なのだろう・・・。自分は普通の人間ではなく、竜に選ばれ、力を与えられている存在だと言うこと。そしてその力は自分でも制御できない程に大きなモノになっているということが・・・。
誰よりも優しく、里の人思いの時雨浜は、いつか、自分が誰かを傷つけてしまうのではないのかと、きっと不安でいるのだろう・・・。
【ホタル】
「大丈夫よ・・・。大丈夫。」
【ホタル】
「あなたに何かあったら、私が・・・。ううん。私達が、必ずあなたを止めるから・・・。」
私は、笑った。時雨様の不安が少しでも取り除かれますようにと、祈りながら・・・。すると、時雨様は言った。
【
「・・・うん。ありがとう。」
時雨は、笑顔でそう言った。
あれ?と思った・・・。今、一瞬・・・
驚く私に、
でも、いつもあの人の笑顔を見てきた私には、分かる・・・。
「ありがとう」・・・そう呟くように発せられた、
心から安心したような、そんな笑顔だった・・・。
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