私のゴール設定法

 子どもの頃から、計画を立てるのは大好きだった。

 夏休み初日に、夏休み中の1日の予定を立てて(それも、勉強時間が1日10時間あるような、無茶苦茶なやつ)、しばらくはそれに沿おうと頑張るんだけど、勿論そんな"理想の計画"なんて達成されるはずもなく。

 結果、三日坊主、いや、初日で飽きるのです。

 夏休みの宿題? もちろん最後の3日で慌ててやっていましたよ。


 毎年そんな感じだっただから、割と早い内から、自分は無茶過ぎる計画を立ててしまう性分、と自覚することができた。夏休みって、そういう自分の特性に気づいて向き合うためにあるんですかね?


 けれど、如何せん見た目が真面目ちゃんだったし(なんたって、5才の頃から大きな眼鏡をかけている。勿論、その時代に眼鏡をかけている人なんて、とても少なかった)、悪いことはしない、先生のいうことは守る人間だったので、周りからは第一印象で、有言実行な優等生タイプだろうと、思われていた。


 そうして勝手に期待されて、私の本性が現れて、テスト開始3分前になっても慌てている姿を見られて、勝手にビックリされたり、なんてことを、中学生になっても繰り返していた。


 その後は、"有言不実行なタイプです"とか、"ダメなタイプの完璧主義者です"と、予め名乗って、予防線を何重にも張ることを覚えた。まあ、初対面でそう言っても、すぐには信じてもらえないことの方が、殆どだったけど。


 大学生になる頃には、大分自分の特性をつかんでいた。

 計画を立てる際には、まずはいつものように、無茶な"理想的計画"を立て、それから自分に合わせて、計画の予定期間を2倍にして、1日の目標を半分にする。そうしてやっと、本当の"私専用の計画"が完成する。


 そんな"私専用の計画"ですら、守れない時がある。

 そういう時は、途中で軌道修正が出来れば良いのだが、ここで私の"ダメなタイプの完璧主義者"が発現する。軌道修正せずに、1日にやる量を増やして、元の計画に追い付けたら最高、と考えて、そのまま突っ走ってしまう。

 勿論、追い付けたら良いんだろうけど、打ち立てた"私専用の計画"すら守れていないのに、何を仰っているのか、という話である。冷静に自己分析が出来る時には、そう思えるけれど、計画達成を目指している最中には、冷静な自己分析が出来なくなって、最終目標しか見えなくなって、猪突猛進、そのままゲームオーバー、が、一連のお約束の流れである。


 大学卒業の頃には、もうこの自分の特性は治せません……と観念して、就職活動の面接で短所を聞かれた際には、上記の"ダメなタイプの完璧主義者"を白状していた。子どもの頃から強く実感してきた部分だから、他の質問への答えよりも随分具体的にありありと説明出来たのではないかと思う。


 そうしてなんとか社会人になってから、私はもう1つ、計画達成のための良い方法を取得した。

 "〆切"である。

 勿論、自分の計画で自分が設定した"〆切"ではない。他者が絡む、〆切である。

 元々、"悪いことはしない"、"先生のいうことは守る"、そういう良い子ちゃんなので、他者に迷惑をかけること、言われたことを守らないこと、は好まない。

 提出が〆切の1分前になることもざらにあるし、完成品がボロボロすぎて完成してるのかどうか疑問になることもあるけれど、とにかく〆切は破りたくない一心で、ヘッドスライディング気味に提出をする。

 それが今の私だ。



 カクヨムを始めてから、仕事以外で初めて"〆切"という言葉を使うようになった。なんとなく、"〆切"って世間一般的にはネガティブなイメージがあるけれど、私は度々この"〆切"という言葉に背中を押されているので、そんなに悪い言葉でもないんじゃないかとも、時々思う。

 勿論、〆切直前に泣きながら作業をしている時には、そんな余裕は出てこないけれど。


 ということで、今回も"〆切"のおかげで、なんとか、KAC2021皆勤することが出来ました。

 なんて、やっぱりギリギリになってしまって、これを書いているのが通勤電車の中なんですが。ああ、もう到着してしまう……。

 最後の仕上げは、会社のトイレの中で、ささっとやることにします。




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KAC2021参加短編集 後半戦 小木 一了 @kazuaki_o-o

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