元の世界へ戻らせて!
どこなんだここは。
見たことのあるようなないような商業ビルの中。
自宅にしてくれたらすごくありがたかったが。
そんなことを言っても始まらないので、ひとまずビルの外にでる。
昼間なのか夕方なのか、雲に覆われた空はいつもより暗く、時間がわかりにくい。
すると、駅が近くにあるようなので、向かってみる。
自分のおおよその場所がわかると踏んだからだ。
駅で自分の居場所を確認した僕は、自宅を目指す。
あまり来ることのない駅で驚きはしたが、一時間くらい電車に乗っていればつくだろうと思われる。
時計を確認すると、午後の1時を少し過ぎたころ。
高田さんと天使の国へ行った時間帯とほぼほぼ同じだ。
電車に乗り、座る。
温泉から出てホカホカだった体も、元の体温に戻りつつある。
にもかかわらず、眠くなって意識を手放してしまった。
ハッとして目を覚ます。
電車で寝てしまっていた。
今どこにいるんだろう。
駅を出たところのようで、次の駅までもう少しありそうだ。
寝過ごしてませんように。
祈ることしかできない。
そうしているうちに、電車でアナウンスが流れる。
どうやら、自宅の最寄り駅は通り過ぎたみたいだ。
終点付近まで行ってなくてよかったと胸をなでおろす。
とはいえ、10分程度戻らなければならないため、寝ないようにしないとなと思う。
無事に最寄り駅に着き、自宅に戻る。
どうやら、今は誰もいないようだ。
疲れも多少あったので、自室で休むことにする。
母親がご飯ができたと呼ぶ声で目が覚める。
リビングへ行くと、何か違和感がある。
そんなところに突っ立ってないで、早く座りなさいと母親に促された。
テレビでニュース番組を見ながら、母親は顔をしかめる。
「今年ももう花粉の季節ね。いやだわぁ~」
洗濯物も外に干せないし、鼻もずるずるだしとしゃべり続ける母親。
あれ、確か今は高校3年の夏のはずだが。
しかし、テレビも花粉情報をお知らせしている。
「今は夏も花粉量が多いんだね。」
そういいながら、母親は花粉症だったっけと思い返す。
「何言ってんの、あんた。今は3月、花粉が多い時期じゃない」
怪訝な顔をして母親は言った。
え?
まあ待て、数か月前に戻っただけじゃないか。
いや、今は何年だ?
部屋の中を見まわし、情報を得られそうなものを探す。
「どうしたの?なんか変よ、今日」
そういわれてしまっては、今が何年かも聞くことは憚られる。
ご飯を食べたらコンビニでも行こう。
そう決めるや否や、ご飯をかきこむ。
母親に、ちょっとコンビニ行ってくると声をかけ、出かける。
外に出るとやや肌寒かった。
夏の格好で、春の夜に出歩いているのだ。
当たり前だ。
やってしまったと思いながら、コンビニに急ぐ。
記憶の選択 なまけ猫 @ASUKA-MOFU2
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