第21話

 契約。

 口約束も契約。

 契約は守るもの。

 それが、約束されたものなら。


「しかし、大丈夫なのかい?」

 ユキオはやけに重々しく言った。

 それは、キラに向けられた言葉だった。

 キラはごくりと生唾を飲んだ。

「どういうことですか?」

「いや、君は見た目からして、きっと悪魔に近い種族だと思うんだ。ということはだ。契約、この場合、名前についてだけど、多分、もう変えられないと思うのだが」

「え」

 キラはぽかんと口を開けた。

「知らなかったみたいだね」

 キラはすかさず、ラキに視線を向けた。

 その目は、視線だけで人を殺すほどの鋭さを帯びていた。

「いや、私だって言いましたよ? 一生ついて回るって」

「言ってたみたいだよ?」

 ユキオの仲立ち。

 しかし、キラの気は収まらなかった。

「それって、事後だよな」

「……」

 ラキは視線を泳がせると、徐々に出入り口の扉へと近づいていた。

 明らかに挙動不審で、扉に触れたら今にも逃げ出しそうだ。

 キラは一度視線を外すと一瞬逡巡した。

「ま、いいよ」

「ほんとに? いやー信じてたんよ? 怒ってないって、まあ、でも? 私も説明不足だったし? なんていうか? ごめん」

 目を逸らしたまま、ラキは口だけで謝った。

「ああ。でも、これからは気をつけてくれ」

「でも、今回も、なんとなくそうかなーって思ってただけでー」

「じゃあ、思っただけでも言ってくれ」

「はい」

 ラキはそこで観念したように目を瞑ると、初めてキラに頭を下げた。

「すみませんでした」

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とある男の日記 川野マグロ(マグローK) @magurok

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