アンドロイドとする行為は・・・・自慰だよね
睡蓮
ベッドの上でどれほど完璧でも・・・・
俺の家にとても大きな荷物が届いた。
送り主は俺の父親。今はアメリカでロボットの研究をしている。ちなみに母親は一緒に親父に着いていって、俺は実家で大学生として一人暮らしをしている。
どれどれ、と箱を開けるとそこには服を着たラブドール!──ではなく、アンドロイドが入っていた。
伸長160センチくらい、完璧な顔立ち、完璧なボディ、出るところはしっかり出ているし、くびれもさすがに人間離れしていて凄い。
人間ではあり得ないほどの大きな胸の上に手紙が付いていた。
『最新型のアンドロイドだ。お前好みにチューニングしてある。好きに使ってくれ。父より』
取扱説明書も何もない。
首の下に小さな蓋らしきものがあり、そこを開けるとスイッチがあった。
スイッチ、オンっと──
パッと目が開き、周囲を見渡す。
空間の認識が終了したのか、とてもしなやかな動きで彼女は起き上がる。
「こんにちは、
音声合成もここまで来たかという澄んだ声で俺に話しかけてくる。
「私はジュンと申します。アナタの暮らしをサポートするためにまいりました」
暮らしをサポートって、いったい・・・・
「ご命令を」
命令って、何を──とりあえず身の回りのことをしてもらうか。
両親が異国へ渡ってから、食堂と自分の部屋以外は掃除もしていないし、洗濯物も溜まっている。
「それじゃ、とりあえず家事をぜんぶやってくれ」
「承知しました」
凄い!何が凄いってお袋の数十倍は家事ができる。
2時間もしたら、家はピカピカでホコリ一つないし、風呂の水垢から窓枠まで綺麗になっている。
洗濯物だって、きちんと形を整えて干しているし、ついでに俺のマッサージをしてくれるところまである。
もちろん一つも愚痴を言わない。
「ありがとう」
「どういたしまして、次は何を」
もの凄く所作が綺麗だ。
普通の人間ではこうはできない。
「夕飯が食べたい」
「かしこまりました」
冷蔵庫を開けて、材料を確認してから
「これでは美味しいものが作れないので買い物に行ってよろしいでしょうか」
そう問うてくる。
もちろん異論はないけど、そこまで凄いのかと思う。
決済のためのクレジットカードを渡して(本当はダメです)、待つこと一時間、両手にエコバッグを抱えて帰ってきた。
一つは俺が持ってあげようと思ったらズシリと重たい。
さすがはアンドロイド、力も半端ではない。
作ってくれた料理はそれはそれは美味しいヒラメのグリルだった。
他にマカロニサラダとほうれんそうのスープ、デザートにリンゴまで剥いてくれた。
「君は食べないの?」
「私はアンドロイドですから」
目の前に彼女が座っていても、食べるのはソロ飯。悪く言えばボッチ飯。
まあ、仕方ないか。
風呂に入ってテレビのスイッチを入れる。
彼女はと言えば、一緒にテレビを見ている。
「見てて面白い?」
「いえ、データとして映像を取り込んでいるのです」
聞けば、俺の好みを把握するためのデータベースを作っているのだそうだ。
お勧めの番組を紹介したりするのも彼女の機能の一つだとか。
彼女が来て一週間が過ぎた。
その服はここに来た時のままだ。少し汚れが目に付いてきた。
とは言え、こんな凄いカラダをした女性の服なんてそうそうないだろう。
仕方が無い、全部脱いでもらって洗濯するしかない。
今度親父に頼んで替えの服を送ってもらおう。
「これでよろしいですか」
全裸になった彼女はそれはそれは凄かった。
細部に至るまで人を再現しただけのことはある。ハイジニーナじゃなかったのか、そこまで・・・・
情けないことに、その姿を見て俺は欲情してしまった。
アンドロイドに、だ。
「よろしければ、こちらのお世話もいたしますが」
「あ、はあ、はい」
彼女の作りは完璧だった。
ベッドで俺を待つ眼だって、それはそれは色っぽかった。
カラダだけじゃない。反応の仕方もあえぎ声も、手や舌の使い方、腰の振り方、どれも童貞の自分には勿体ないほどだ。
だいしゅきホールドまでやってくれるとは!誰だ、こんなことプログラムした奴は!
俺が何度も果てても、彼女は疲れを知らなかった。
あっけらかんとして、笑顔のまま、まだ受け入れようとしてくれる。
その時に知った、これはソロ行為だと。
彼女が吐く愛の言葉だって所詮プログラムされたものだ。これは超高級ラブドールじゃないか。
「終わったのですか」
彼女がそう問うた。
「うん」
そう言って、俺は彼女のスイッチを切った。
あらためて後から見つけた一枚紙の取扱説明書を見た。
『電源を切ると、全てのメモリーがリセットされます』
彼女の口の周りにべったり着いた俺の分身を拭いて、箱に詰め、親父に送り返した。
『彼女くらい作ってやる』とメッセージを添えて。
アンドロイドとする行為は・・・・自慰だよね 睡蓮 @Grapes
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