後日談
「青葉? 」
「楓」
六限目が終わり、帰り支度をしていると、楓がひょっこり顔を出し、私を呼びに来た。あの後、一緒に帰らないか、と誘われたのだ。
そんな様子を見てか、クラスの女子たちは、「ほんとに付き合ってるの……? 」「でも、青葉さん美人だから叶わないよ……」などと、どんより嘆いていた。なんだか、勝ち誇ったような気分になる。足取り軽く、楓の元に駆け寄った。
「お待たせ」
駅へ向かって歩いている時、楓がこんなことが言った。
「ほんとに怪我、大丈夫か? 当たったの顔だったし……」
そっと私の顔に触れる。傷物を触るように、優しく。
「大丈夫だよ。まぁ、痛くはあったけどね」
安心させるように、にこりとした。
「良かった。でも、青葉に当たったボール蹴ったの広田なんだよな。あいつ、どうしてくれようか……」
なんだか背中に炎が見えるような……。
「まぁまぁ、元気だし、大丈夫だって。楓」
「……ん、なら、いいか」
うん。やっぱり楓の隣は落ち着くな。自然と私は微笑んだ。暫し無言で歩き、私は口を開いた。
「楓ってさ、あれだけで私を好きになったの?」
「あれだけってなんだよ! まぁそうでは無いけど」
「そうなの? 教えて欲しい」
少し照れた楓は口をとがらせながらも教えてくれた。
「青葉はいつも誰かを気にして、いつもと違う様子だとその子の元へ駆け寄ったりしてる優しい女の子だったんだよ。そんときの俺は体が弱くて、いつもそんな様子の青葉を眺めてたんだ」
そんなことしてたのか、私。
「外で遊ぶ時間、たまたま俺は外に出て少し遊んだんだけど、直ぐに体調を崩した。多分、今思えば熱中症だったと思う。先生も俺の様子に気づいてくれなくて、喉が渇いて、苦しかっ時に来たのが青葉だったんだよ。大丈夫? って優しく声かけてくれた青葉は、それはもう、天使のように見えて……、……これも話さなきゃダメ? 」
「聞きたいじゃん? 」
照れてる楓可愛いぃ。こんな顔されたら余計に聞きたくなるよね。
「それで、その、可愛いなって思って、好きになった」
「ふふぅん、なるほど。私は高校生になって、変わってなかった? 」
「うん。全然変わってなかった。寧ろもっと可愛くなってたし、やっぱり好きだなぁって惚れ直したよね」
ふにゃりと、蕩けるような楓の笑顔は、私の心さえ溶かしそうだった。
「手を繋ごうよ、青葉」
「ふふ、いいよ、楓」
その日の帰り道は、とっても幸せだった。これから、ずっとよろしくね、楓。
好きになったのは幼なじみ。 野坏三夜 @NoneOfMyLife007878
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