第6話
あきらかにいつもと違う力が宿っている。
「…優希」
「圭、僕はどんな手を使ってもみんなで帰りたいんだ。…いくよ」
呼吸を整えて、目をあける。
困惑した顔の圭
「えっ」
圭の動きが止まった瞬間。
僕は強く拳を握り圭を殴った。
圭の体が後ろにとんでいった。
圭は気を失ったのかもしれない。
横になって動かなくなった。
「ごめん、圭」
さっきの力はなくなっていた。
圭も、僕も。
『力をぶつけあって術をすべて解除するようにした。さぁ、はやく避難せよ』
土神の声が脳に響いた。
「ありがとうございます、土神様」
「なぁ、優希。圭は大丈夫なんだよな?」
彰良と澪が心配して近づいた。
「大丈夫だよ、ちょっと気絶してるだけ。急いでここから出よう」
大鷹の背中に乗りこむと大鷹は一鳴きして飛び出した。
「あとは穴から抜け出せれば…ってうわ!」
穴から大量の烏が襲ってきた。
「これが書物に書いてあったこと!?それにしても多すぎじゃない!?」
『安心せよ、その大鷹には加護を与えておるため無傷である。さぁ、急げ!』
土神の声が響き、大鷹は一鳴きして烏の群れへ突き進んでいった。
「…だいぶ力を失っているね」
『それはお互い様、であろう?』
「…それはそうだね、お互い力尽きるまで戦うつもりかい?」
『最初からそのつもりだ』
「まぁ、姉さんとは決着をつけたかったし。…準備はいい?」
『もちろん、ではいくぞ』
二人は一気に近づいて剣をぶつけ合った。
二人とも少し笑っていたように見えた。
「すげぇ!烏の攻撃が全然効いてねぇ!」
大鷹の勢いは止まらない。
「あ、見て!明かりが見えてきた!」
澪がそう言うと大鷹はさらに加速した。
しかし
急に大鷹の勢いが落ちた。
「えっ…」
振り向くと圭が目を覚ましていた。
「お前たちを殺す。絶対に許さない」
明らかに目の色が変わっている。
かなり殺気立っている。
まだ洗脳が解けきれてなかったのか!?
「この大鷹を落としてお前たちを烏の餌にしてやる」
そう言ってさらに大鷹に攻撃しようとする。
「やめろ!!!」
僕が持ってる最大限の力。
さっきと比較にならないほど弱い。
けど。
彼と落ちるのには十分だった。
「優希!!」
二人の叫び声が遠ざかっていく。
目を覚ますとさっきの白い空間だった。
隣には圭もいる。まだ眠っているままだ。
「少し別の呪いを混ぜといてよかったよ」
そう言ってボロボロの風神がやってきた。
「!?土神は…」
「倒したよ」
さらっとそういった。
「なぜ大鷹に攻撃するようにできたか。それは土神を殺したから。全部つながるだろう?」
そう言うと少しにやっと笑った。
「それじゃあ、そろそろその体いただこうか…」
『そんなことさせるわけないだろう』
ザクっと音がした。
風神の後ろに血まみれの土神がいた。
「な…ぜ…」
『こうでもしないと油断しないからな。すまない、最後の力をすべて譲る。これで脱出してくれ』
そう言うとガクっと崩れ落ちた。
「本当に相打ちじゃないか、くそ」
風神もその場で崩れ落ちた。
二人とも倒れたとき体がふわっと浮き出して壁が崩れだした。
一気に上へ加速する。
二人の体は壁に飲み込まれてしまった。
「あ、二人いた!」
ふわっと外に出て洞窟を抜け出し、二人と合流することができた。
「優希、お前大丈夫かよ!」
「うん、圭も一緒だよ」
「ほんと?よかった~」
彰良はほっと息をついた。
「いや、まじでびっくりした。落ちた時ほんとに死んだかと思ったし澪は泣いてた…いって!!!」
「バカ!!!」
思い切り後頭部を叩かれていた。
「う、うん?ここは…?」
「お、圭!大丈夫か?」
「うん、なんか…懐かしい夢見てた気がする…。あれ?」
ポロポロと涙がこぼれだした。
「なんでだろ、全然思い出せないのに涙が止まらないや…」
「キャン!キャン!」
遠くから犬の鳴き声がした。
「チョコ!?どこにいるの!?チョコー!!」
茂みから少し痩せ細ったチョコが出てきた。
「チョコ!よかった〜無事で。一緒に帰ろうね」
汚れをはらっている澪の目にまた涙が溜まっていた。
「ねぇ、じいさん」
縁側でくつろいでいた彰良のおじいさんは振り返った。そこにはすごく古びた小学校のアルバムを持っていた彰良のおばあさんがいた。
「どうした、ばあさん」
「いやねぇ、急にふと思い出した子がいてね。ほら、水木くん。覚えてる?急に引っ越したあの子、じいさんと仲良かったじゃない。アルバム出てきたから懐かしくなって…ってじいさん?どうしたんだい?」
彰良のおじいさんは少し涙を流していた。
「いや…懐かしくってなぁ。いろいろ思い出してきたらちょっとな…」
そう言ってまた空を眺め始めた。
蝉の声が響く。
日が暮れ、烏も鳴きだした。
あの時、僕たちは3日いなかったらしい。
そんなに時間が経った気はしなかったが外とあの空間で時間の流れを変えてたのだろう。
そして変わったことが一つ。
この町の名前が藤咲町に変わっていた。
**************************************
これがこの話の結末。
なんで詳しいのって?
ほら、土神にも子孫がいるなら風神にも子孫がいてもおかしくないでしょ。
そういうことだよ。
風神町 石村 遥 @Daccho0822
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