第5話

着物を着た女性は優希に近づき、目をじっと見た。

『其方がわが一族の末裔か、なるほどなるほど』

何を言われてるのか分からず、ただただ困惑していた。


『その赤い目、我と同じだ。』

彰良と澪が二人の目を覗き込んだ。

たしかに二人とも赤く目に光がない。

「あなたが…僕の先祖?」

『そう、我が一族の末裔だ』

全然ピンと来てない。僕が?

『まぁ、困惑する気持ちはわからんでもない。しかし、実際にその眼。それは間違いなくわが子孫である証なのだ。そして実際に強引ではあったが封印を解放させてもらった。それができたのも我の血が流れている証拠でもある』


『それより、其方たちが来たのは風神を倒すためだろう?あまり悠長に話している時間はないぞ』

「そ、そうだけど…」

彰良がまだ困惑している。

「一度、この村を壊そうとしたんだろ?またそんなことするんじゃないのか…?」

『我がこの村を破壊しようとしただと…?あやつめ、偽りの歴史を作りおったな』

偽りの歴史?それって…

『そうだ、名乗ってなかったな。我は土神。風神の姉にあたる』

開いた口がふさがらなかった。姉弟だったのか

『もともとこの地域は二人で納めていた。しかし…奴が力を追い求め我と意見が対立し戦争になってしまった…その結果我は破れてしまった。それにしても歴史を勝手に作り我を邪神扱いするとは許さぬぞ、風神』

「そうだったんだ…」

『まぁ、そうなるのも無理はない。歴史とは勝者が語り継ぐため負けた者は悪になる運命だ。しかしいともたやすく封印が解けたということは奴の力もだいぶ失っているな…。遊び惚けておった報いだ』


『さて、だいたいわかったところで向かうとするか』

「向かうって風神様のとこに!?」

『そうだ、やるなら今しかない。多分奴は鳥羽穴の中に結界を作っている。そのためにも…』

そう言って3人の方を向いた。

『一旦、死んでもらう必要がある』

その言葉とともに3人は意識を失った。


『…い、おい…っかり、おいしっかりしろ』

土神の声で意識を取り戻した。

目の前に広がっているのは真っ白い空間。

どこまでも無の世界だった。


「…まさか三人で来ると思ってたのにな。懐かしい人まで現れたもんだ」

振り向くとそこには一人の男が立っていた。

「初めまして、選ばれた3人。そして…久しぶりだね。姉さん」

『奇妙な出で立ちをしておると思ったがやはり変わらないな、我が弟よ』

この二人が姉弟?あまりに見た目が違う…

『おおよそ、力が弱まってきたからこんなことをしているのだろう?相変わらずだな』

「はぁ…そうだね。今衰えてるから封印が簡単にはがれたのか…めんどくさいな…」

『そうか?その割には少しうれしそうだが』

「そりゃそうだよ、だって今度こそ…」


そう言って一気に近づく。


ガチン

二人の手にはいつの間にか刀が握られており、正面からぶつかり合った。

「…まぁ、簡単にはいかないよね」

『それはそうだ、そしてなぜすぐに封印をはがすようにしなかったか。それは…』

そう言って間合いを取り、気を集中した。


ボコッ


どこかに穴が開いた音がした。

「!?まさか…!」

『ここを作ったのは誰だと思っておる?さぁ、子供たちよ。友を救いそこから逃げよ、そして…』


『大鷹!聞こえるか!彼らを救い、光へ導け!』

その声とともに遠くから鳴き声が響き、巨大な鷹が現れた

『ふ、久しいな。しかし懐かしんでる暇はない。彼らを頼んだぞ』

そういうとまた一鳴きして僕たちを背中に乗せた。

『それから、優希』

出る直前、土神から声をかけられた。

『封印を解いたこと改めて感謝する。我が力の一部を与えたため、それを用いて道を切り開いてくれ』

僕は頷くと一気に大鷹は飛び出した。


「ちっ、烏ども!絶対逃がすな!…さてと」

『実に千年ぶりか?今度こそ決着つけようではないか』

「…別にいいけど。姉さんを今度こそ消す」

『ほぉ、ならば…』

そういって刀を構え直す。

『やってみせろ、バカ弟』

ピクッと反応し少しニヤッとした。

「…いいね、そうこなくっちゃあ!!!」

2人は激しく刀をぶつけあった。


「圭は…どこだ?」

「ねぇ、あれ!」

澪が指さした先には一人の少年が立ち尽くしていた。

「あれは…圭!!圭聞こえるか!!」

大鷹から降りて圭のもとへ向かった。


「圭、よかった。ここにいたんだね」

「優希…?彰良も澪も…。ここに来てくれたんだね」

「あぁ!助けに来たんだぞ!」

「うん!圭、帰ろう!」

しかし、圭はキョトンとしていた。

「え…帰るってどこへ?みんなここで過ごすために来たんだよね?」

「圭…?違うよ、俺たちは圭を助けに来たんだよ!」

話が噛み合わない。

もしかして…

「なんでみんなおかしいよ、ここに一緒に過ごそうよ」

「圭…?しっかり…!」

「澪!下がって!」

バチッ

今目の前で電流が流れた。

「圭…!」

「僕はここでみんなと過ごすんだ。邪魔しないでよ!!」


僕たちの声が届かない

それなら


「彰良、澪。僕が圭を救う」


目を瞑ると体に力が湧いてくる


これが、土神の力


「必ず、助けるよ」

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