第4話
風神様の”遊び”に巻き込まれた3人
彼らは風神様に会いに行こうと思ったけど…
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「ここに土蜘蛛がいるの…?」
澪が少し震えながらそう言った。
場所としては風神様がいるとされる烏羽穴の反対側。
藤咲山の京色神社の裏に3人は集まっていた。
さかのぼること二日前。
「なぁ、あの洞窟いつ行く?」
彰良はアイスをほおばりながらそう聞いた。
彰良のおじいちゃんから話を聞いてから次の日。
僕たちは彰良の家で作戦会議をしていた。
「早く行きたいけど…まだいろいろわからないよね。正直自分たちでどうしたらいいかわからないし…」
「そうだよね…」
なかなか作戦がまとまらない中、部屋をノックされた。
「はいっていいよ~…ってじいちゃん!?」
両腕いっぱいに資料を持った彰良のおじいちゃんがやってきた。
「すまんの…いろいろ持ち出せるものを持ってきたから参考になればいいが…」
「ありがとうございます!!」
そこにはこの町の歴史と書いてあるパンフレットから年代物の巻物のレプリカ、山道まで細かく書かれた地図など様々な書類が束になっていた。
「じいちゃん、これどうやって集めたの?」
「いや~、公民館の館長さんやらいろいろお願いしてな。孫たちの自由研究のために少し貸し出してくれんかって言ったら快く渡してくれたよ」
そうフフっと笑って言った。
それにしてもこの量はすごい。
「それからの…」
そう言っておじいちゃんはボロボロの書物を取り出した。
「これはみんなには絶対見てほしい」
書物の最初には風神伝説と書かれていた。
中は…年季が入りすぎてボロボロで筆で書かれているのか読めない…。
「難しかったね。重要なところを読んであげよう」
主に重要なことはこれらのことであった。
・攫われた人は催眠をかけられている
・烏が襲い掛かってくるときがある
・風神様には土蜘蛛の話題を出したらいらだちを見せる
この他にもいろいろ書いてあった。
「催眠?じゃあ圭は催眠をかけられてる可能性があんのか?」
「多分そうじゃない?二つ目の烏が襲ってくるのも怖いね…」
「うん、けど土蜘蛛の話が弱点みたいだね。土蜘蛛か…」
「そういえば土蜘蛛って倒されたあとってどこに封印されたんだろう?」
彰良のその一言で優希はズキッと頭痛がした。
なに、急に…?
「たしか…ああこれだ。この…神社の裏に御神木があるだろう?この奥に祠があってそこに封印されているらしい」
この奥…?
ここに行かないと…いけない?
「じいちゃん、ありがと~」
「あぁ、無理はするなよ」
そう言って下へ行ったのを見計らって僕は言った。
「ねえ、土蜘蛛の封印を解いてみない?」
彰良と澪は僕の顔を見て止まった。
「え?優希今なんて言った?」
彰良がキョトンとしたまま聞いてきた。
澪は…まだ止まったままだ。
僕も少しおかしい?
いやけど…
「相当無茶なことだけど…僕たちの力じゃ無理だ。だから…」
「ちょ、ちょっと待てよ!それで封印解いたら暴れてこの町がなくなるかもしれないんだぞ!」
「そうだよ、他にも方法が…」
「僕を信じて」
僕は絶対意見を曲げなかった。
「けど…」
「これしか方法がないんだよ!!」
澪に叫んでしまった。
あの時の僕を二人は口をそろえてこう言った。
僕の目は赤く光っていて明らかに何かが宿っていた。
人じゃない。
怪物のような…
それこそ、巻物のレプリカに書かれていた蜘蛛のように。
そんなわけでちゃんとした理由がないままここに来てしまった。
あれから彰良と澪は僕のことを少し敬遠しているように感じた。
「ごめん、彰良、澪。けど大丈夫だと思う。行こう」
「あ、あぁ…」
ぎこちない空気の中、僕たちは奥へ向かった。
御神木の奥。
コケまみれの道を進んでいく。
蜘蛛の巣に絡まりながらも奥へ向かうと一つの洞窟を見つけた。
「ここ…かもね」
「なぁ、優希。ほんとに行くんだよな…?」
彰良の声は少し震えていた。
「うん、ここまで来たんだ。行こう」
そういって奥へすすむ。
彰良と澪は少し顔を見合わせて優希について行った。
洞窟の奥、懐中電灯を持って真っ暗な空間を進んでいると祠が一つぽつんと建っていた。
「これか…?」
「こんなとこに祠なんてないんね…って優希?」
この扉を開いて…
この紙を引き裂いて…
「優希、聞いてる?ねぇ優希?」
祠の中に蜘蛛を入れて…
この器に血を流して…
「おい、優希?優希!聞こえてるか?」
それから…
それから…
「ダメだ!澪、優希が止まらねぇ」
「なんで…!こんなに力が…強いの?」
止めないで
僕は…僕は…
その時。
ガタガタっと祠が揺れ、洞窟の中が揺れだした。
「まずいまずいまずい!!優希、しっかりしろ!!」
「…あれ、彰良…?」
「もう!早くここから出るよ!」
そういって駆け出して外に出ようとしたとき
『感謝する』
その響いた声で振り返ると蓮の花柄の和服の女性が立っていた。
あまりの驚きに3人は立ち尽くして立ち止まってしまった。
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